第15話 王都での日常 ②
食事を終えてお姉ちゃんと別れると、クエストをする。
食事前にお姉ちゃんが用意してくれていて、それに取り掛かるのだ。
いわゆる美味しい依頼というやつだ。
何だか悪いことをしている気になってくるが、お姉ちゃん曰く、依頼は早い者勝ち。
そして、私はそれを勝ち取っているから問題ないという。
それってインサイダーじゃないのとか思うのだけど……。
確かに早い者勝ちの観点から見れば、問題ないのかもしれない。
ギルドマスターも黙認してるから大丈夫だよとも言ってた。
黙認かよっ!
お姉ちゃんのおかげもあって、今までは1日収支はほぼ0となっている。
29500マルク前後の所持金を維持できている状態だ。
クエストが完了するのが夕方の5時くらい。
そこから図書館に行って、この世界の一般常識を学習する。
図書館の場所は冒険者ギルドの向かい、そして王城の南西になる。
ここ1週間で俺が覚えた事はーー
職業は17才の成人時に顕現する。
生まれてから成人までにしてきたことが職業に深く関わる。
例えば剣を使っていたなら、騎士や戦士。
魔法を勉強していたなら魔術士。
寺院で治療関係に従事していたなら治癒士という具合。
稀に性格や偶然で剣を使っていたら勇者になった。
魔法を使っていたら賢者になったとかも有り得るらしい。
その法則性は未だ解明されていないようだ。
そして職業に対してスキルというのがある。
職業は言わばその人の天職の位置付けなので、その職業をまっとうするための技能のようなものだ。
騎士の片手剣、魔術士の火魔法、治癒士の回復魔法などがそれにあたる。
スキルを持つことで、何も無い人よりも上達も早く、扱いも上手く、使用した時に効果が高い。
また特殊な効果を持つ技を覚えたりと、得意分野ならではのメリット多い。
スキルも職業と同じで、成人するまでにしてきたことに依存するらしい。
場合によっては魔術師の勉強をしてきたのに、治癒ばかりしていると職業が魔術師でスキルに回復魔法が発現するという具合だ。
理系の大学を目指していたのに、なぜか文系の勉強していたら、理系の大学に入ったのに六法全書を覚えてしまい、うーんどうしようみたいな感じだろうか。
実際、スキルだけしか物事を覚えられないかというと、そういうわけでもないらしい。
騎士であっても魔法は覚えられるし、魔術師であっても剣は使える。
訓練に時間もかかるし、冒険者は役割が分担されるので、器用貧乏は逆に仕事がなくなる傾向が強い。
またスキルは習熟度によって効果が上がる。
段階はI~Vまでの5段階。Vに近いほど良いとされる。
習熟度は使用しないと上がらないため、反復練習をどれだけ出来るかにかかっている。
普通はIIIで頭打ちになり、上がらなくなるらしい。
冒険者についてはランクがあると前に知ったのだが、クエストをこなすため、パーティーという団体で行うことがある。
1人では達成が難しいクエストなどを行うとき、別の冒険者とチームを組んで目的を達成しましょうというものだ。
人数は8人くらいが理想とされ、職業によって役割を決める。
敵の攻撃を受ける止めるタンク、敵にダメージを与えるディーラー、傷を受けた仲間を癒すヒーラー、チームの底上げ、敵の戦力ダウンを図るバッファーやデバッファーだ。
役割を明確化することで、専門的な動きが出来て、危険度が下がるということ。
しかし、そのロールが倒されたりすることでいなくなると色々な弊害が起こる訳だが、それは1人がオールマイティの事をできる8人パーティーよりもリスクは少なくなるはずである。
パーティーの規模を大きくして戦争や大型の魔物に対応させる、師団、軍団、アライアンスというものもあるらしい。
魔法は、体内に持つマナという魔法の素を媒体として奇跡を起こす。
術者が行使する魔法を口頭で詠唱することで、マナが反応を起こし、奇跡が発動する。
効果は剣などと同じで、持っている武器によるマナの変換率、スキル、使用者の制御能力により変化する。
同じ魔法でも使う人が違うと、小さな火の玉の魔法が、太陽のフレアを閉じ込めたような灼熱の火球になることもあるようだ。
何それコワイ。
制御能力は効果範囲にも影響を及ぼす。
同じ魔法でも制御の仕方によっては範囲魔法にも成りうるのだ。
元々、魔法には広範囲殲滅型というのもあり、それは単体効果にすることは出来ないらしい。
例えば隕石を降らす、メテオという魔法は広範囲殲滅型というものになる。
魔法は詠唱するのに時間がかかるため、通常魔術士は後方でポジションを取り、前衛は後衛に攻撃が届かないように立ち回る。
即効性がないかわりに威力があるのが魔法でもある。
あと、途中まで練り上げた魔法が邪魔され発動しなかった場合、マナの変換が暴発して魔術士は自爆してしまう。
それによりパーティーが全滅することも有り得るので、メンバー全員が一蓮托生であるといえる。
それを考えると、目が紅い種族の人はクレイジーだと言えるだろう。
ーー誰もが知っているため、誰も教えてくれない基礎の基礎は以上になる。




