第14話 王都での日常 ①
初日こそは、色々とトラブルなど発生したりしたが、以降はほぼ計画通りに1日1日が過ぎた。
そしてシュタットの街に住み始めて1週間が経過した。
1週間、短いようで長い期間である。
人が新しい生活サイクルに、順応できるようになるのには充分な期間だと言える。
まず研修において、俺は基礎部分をようやく完遂できるようになった。
まだまだ余裕がある訳ではない。
完了時には息が上がってしばらくは起き上がれない。
しかし当初に比べれば進歩しているはずだ。
他の研修生は、元々出来ていたことなので、さらに余裕になっていた。
基礎トレーニングを完了した人から実践の稽古に入っていく。
俺は1人で木製のナイフを素振りしていた。
筋力が無いので、木製のナイフを振り回すだけでも結構なトレーニングになるのだ。
初期研修メンバーは30人いたのだが、3人ほど初日に大怪我をして今は入院中ということらしい。
あれだけスプラッターしていたら、簡単に復帰もできないだろう。
そして27人になって、俺だけ1人余るというわけだ。
お姉ちゃんに、あの時何をしたのか聞いたのだが、頬を赤くして拒否られてしまった。
本人の中ではヤンチャをしてしまった認識みたいなので、それ以上は聞けなかった。
研修生のコミュニティーというのも出来上がっていた。
まず1番大きなグループは勇者ルシフェルを中心としたグループだ。
しかも実力がある人達が集まっているので地力が高い。
俺を2回目に治癒してくれた女性もこのグループだ。
16人という過半数以上のメンバーが集まっている。
次が友達同士で冒険者になったグループだ。
友達同士なので息がピッタリとあっていて、連携が得意そうなグループでもある。
メンバー数は8人。
よく言われる1パーティーぴったりの人数だ。
そして最後が、俺のいるグループ。
要は落ちこぼれだ。
3人のメンバーで構成されている。
それぞれ売れ残っているには理由があるのだろう。
メンバーは騎士のジュリアスさんと治癒士のリアナさんだ
今日の研修の終わりに、パーティーでの行動を明日から実施するという教官からの通達があった。
1つのクエストをパーティーで時間内に完了させるというものだ。
個人のスキルも大切だが、今後のパーティーでの立ち回りに慣れさせるというのが目的なのだろう。
8人で行動するので、クエストのランクは1つ上であるシルバーのものが選ばれるようだ。
俺達は3人しかいないので、明日までにどうするのかをギルドが決めておくということだった。
午前の研修を終えると、お姉ちゃんがお弁当を用意してくれていて一緒に食べる。
立って食べるわけにはいかないので、公園などで座って食べることができるところを選ぶ。
いつも、この時間になると城の兵士達が走りながら何かを探している。
「今日は南門らしい」
「どこに隠れていやがる」
兵士達はそんな事を言っている。
一体、何が起きているのだろうか? お姉ちゃんは、いつもこの時だけ厳しい顔をしている。
兵士が走り去ると、何事もなかったかの様にお弁当を頂く。
食べたあと、俺は疲れてウトウトとしてしまうのに、お姉ちゃんは何故かにこにこしている。
以前、弟が……と言っていたのが関係あるのかもしれない。
お姉ちゃんはすごく忙しい人でもある。
いつも俺に付き合ってくれているのが不思議でならなかった。




