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非日常遊戯  作者: こくまろ
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第一章 一話

前書き書くの忘れてました。どうもこくまろです。

初心者でこれが初作品です。稚拙で見るに堪えない部分もあると思いますがコメントなどでアドバイスしていただけると嬉しいです。


では、どうぞ↓

夢を見た。それはいつどこで見たかもわからない光景。でもどこか懐かしく、心地のいい場所。

周りは大きな木から小さな草花まで多種多様に緑の生い茂る森に囲まれており、中は光源もなくその先は見えない。

上を見上げれば幾千もの輝きで飾り付けられた星空が、眼前には円の形に盛り上がった丘がある。

その真ん中に星の光を全身に浴びながら佇む一人の少女。

どこか不思議な、でも自分と似た雰囲気を放つ女の子だと感じた。

少女に声をかける。

「君はどこから来たんだ?」

少女は答える。

「貴方は知ってる筈よ」

そんな掴み所のない会話を一言交わし、この夢は唐突なまばゆい光を最後に幕を閉じる。


=======================================


夜が明け、カーテンの隙間から太陽の目を焼く様な光が差し込んでくる。

その光を鬱陶しいと思いながら2,3度寝返りを打ち、薄く目を開け時計に目をやる。

時刻は丁度7時を回った所で正に何時もの起床時間ドンピシャであった。


「・・・起きるか」


ベッドで寝ている彼、神崎陽斗は今にも固く閉ざされそうな瞼を無理やりこじ開け、地面に足をつけた。


朝食や歯磨き・洗顔を済ませ、登校の準備を終え、着替えを始める。

他の様々な学校に指定の制服がある様に、陽人の通っている学校もそれは例外ではなく指定の制服がある。

上半身はYシャツに赤茶色のネクタイを締め、紺のブレザーを羽織る。下半身は灰色の下地に少し広めの等間隔で黒の線が縦横に入っている。

少し、いやかなりダサい。靴下には特に指定はなく、派手なもので無ければ良いらしい。

タンスに手を入れ一番最初に触れた黒の靴下を履き、姿鏡の前に立ち自分の姿を確かめる。


「相変わらずだせぇ制服だな。このズボンがなぁ…。」


つい出てしまった心からの言葉だった。ひとしきり自分の姿を見回し、一度頷くと時計に目をやる。

時計の針は8時を回っていた。


「やっべ、遅刻だ!」


一階へと続く階段を駆け下り、カバンを持って玄関の扉を開けた。

陽人の自宅から学校までの距離は時間で言うとおよそ15分程で、そこまで遠くはない。

玄関を勢い良く出るとすぐ横に置いてある自転車に跨り力一杯漕ぎ出した。

そのままの勢いで左に曲がり更に速度を上げる。

季節は4月。出会いと別れの多い春だ。学校へと続く直線の道の両横には歩行者を歓迎するかの様に桜の木が綺麗に整備され植えられており、風に吹かれて花弁を空にまき散らせていた。


「よう、相変わらず暗い雰囲気醸し出してんなお前。ちゃんと寝たか?」


空に舞う桜に目を奪われ、綺麗だななんて事を考えていると、後方から声を掛けられた。


「生まれつきだ。お前こそ相変わらずの犯罪者面だな」


そんなまるで小学生の様な言葉を彼に返す。彼は小沢幸太郎。幼稚園の頃からの幼馴染であり、今は陽人の悪友の範囲に入る人間だ。


「うるせっての、それにしてもあれだな、この季節のこの通りはマジで桜綺麗だよなぁ」


ひとつ前の会話はともかくとして、その意見には同意だ。

一言そうだな、と返すと二人は自転車の速度を少し落として呑気に桜を眺めながら登校した。勿論遅刻した。


=======================================


「お前のせいだからな。なんで登校2日目から遅刻なんかしなきゃならんのか」


そう幸太郎が文句を付けていた。今は4限目の授業が終わって教室で昼食をとっている最中だ。幸太郎が言っているのは朝の一件の事だろう。桜に目を奪われ完全に時間の事を忘れていた二人が学校の校門を潜ったのは8時40分。陽人の通っている高校の登校時間は8時25分までなので、約15分の遅刻であった。


「昨日の始業式でも居眠り怒られたんだぜ、勘弁してくれよなぁ」

「いや、それはお前が悪いだろ。俺関係なくね?」


理不尽な言いがかりに反論すると、幸太郎は何言ってんだ?この能無し根暗野郎は。という目で見てきたので取り合えず何も言わず殴った。グーでだ。


「アンタら、本当にいっつも下らないことで喧嘩してるわね。アホなんじゃない?」


幸太郎と取っ組み合いになる一歩手前というところで、また新しい喧嘩の種が口を挟んできた。

彼女は呆れたようにこちらと幸太郎を交互に見てため息をわざとらしく大きく吐いた。


「お前に関係ないだろ。お前はその自慢のまな板で野菜でもきっt」

「は?」


今、鮮やかに幸太郎の肘関節を決めて様々な方向に曲げている彼女は同じクラスメイトの立花凛。顔こそ良いが性格は傍若無人、暴虐非道とそのまま暴力を体現したかのような女の子だ。いつも俺と幸太郎が喧嘩を始めると委員長でもないのに割り込んで暴力で止めてくる鬼のような存在だ。なのに他の周りの人間、特に女子からの人気は絶大なのが不思議でならない。もし自分たちだけそんな扱いをされているなら早急にやめてもらいたい。あとこの情報は不要かもしれないが、胸が恐ろしい程にない。


「なんか言った?」

「いえ、何も」


この学校で平和に暮らす為にもこいつに逆らっちゃいけない。本能がそう叫んでいた。


========================================


昼食を終え昼休みも幸太郎も(腕の関節の寿命が)終わり、そのまま何事もなく帰りのHRの時間になった。担任の先生、花沢水子。通称みーちゃんが教室に入ってきて、連絡事項を次々と話していく。


「明日は~、体育あるからねぇ~。みんなジャージ忘れないでねぇ~」


彼女の話し方は非情に癖が強く、いつも鼻にかかる気の抜けた話し方をする。

明日の持ち物や委員会の事など一通り話し終えたかと思うと、最後に、と珍しく少し顔を強張り眉間に皺を作りながら話した。


「昨日の夜11時頃、うちの学校の生徒がこの近くで不審者に襲われたらしいのぉ。不審者の特徴は30代前半から40代前半でぇ、頭から角みたいな何か生えていたらしいわぁ。後ね…影がなかったとかなんとか。」


教室を喧噪が包んだ。それもその筈だ。今花沢先生が口にした不審者の特徴は現実に存在してるとは思えない容姿の説明であった。


「は?なんだそれ。角がなんだって?」

「見間違いかなんかじゃない?それか仮装していたとか」

「ばっかじゃねぇの。いるわけねぇじゃんそんな奴」


クラスメイトが口々に呟く。どうやらこの話を聞いて真面目に恐怖感や嫌悪感を抱いている者はいなさそうだ。勿論俺も信じていない。


「静かにしてぇ。先生はふざけている訳じゃありませんよぉ」


ざわめく教室を花沢先生が宥める。


「私たちもこの情報を鵜呑みにしているわけじゃありません。襲われた恐怖で気が動転しているのかもしれないしねぇ。でもとりあえずこんな不審者が出たって事だけは覚えておいて、夜遊びは控えて下さいねぇ。」


この話を締めくくりとしHRは終わり告げ、生徒たちは帰宅するもの、部活動に向かうもの、クラスにとどまり友達と集団で話しているものと各個人自由に行動を始めた。


=======================================


「なぁ、あの話どう思う?」


HRが終わり学校を後にし、下校している途中に唐突に横にいた幸太郎が訪ねてきた


「あのって、さっきの不審者の話か?」

「それ以外何があるんだよ。俺はあの話をちょっと信じてる」


幸太郎が目を輝かせながらそう言う。


「角が生えてるってのはなぁ…。誰かも言ってたけど仮装かなんかじゃないのか?」


現実的に考えて角がある人間などいる筈もないし、聞いたこともない。

それに先生が角以外に言ってたもう一つの特徴である影がないというのも現実性を帯びない。

仮に本当に影が見えなかったのだとしても被害者が襲われたのは11時頃、暗い夜道だ。

街灯の光が多少あるとはいえ暗いことに変わりはない。

この条件ならば影が見えなくてもおかしな話ではないと説明が出来てしまう。


「夢がねぇな。本当に人間じゃない何かだったらどうすんだよ」

「もしそうなら俺達じゃどうしようもないだろ。どっちみちやれることはねぇよ」


そう告げると、幸太郎はうねりながら下を向き何か考えこみ始めた。

まだ何か納得していないらしい。

とにかくこういう時の幸太郎の考えは碌な方向に進まないのは昔からの付き合いである故にわかってしまう。

何か変なことを言い出すなよと願いながら歩いてるうちに家の玄関の前まで着いた。


「とにかく俺は帰るからな。」


そう口早に告げ、俺は逃げるように玄関に自転車を止め玄関の戸を開ける。

後ろで幸太郎が何か言っていた気もするが気にしたら負けだ。

こういう訳のわからない事には首を突っ込んだ時点で面倒なことになるのが定石だ。

自室に入るとブレザーを脱ぎベットに倒れこんだ。


「夢、か…。」


幸太郎と交わした会話の一部分に引っ掛かりを感じた。


「そういや朝見た夢は不思議な夢だったな…。なんかはっきり覚えてるし」


誰に語り掛けるでもなくそう呟くと、陽人は自分の脳が発する眠気信号に従い、目を閉じた。


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