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一人くんは一人遊びがお好き  作者: ユメオニ
2/6

ウィンドウショッピング編 その2

あまりにもびっくりしたので、一人くんは女の店員をまじまじと見てしまった。普段の一人くんなら絶対にそんなことをしない。人の顔を見るのは恐ろしいことだと思っている。特に目。目には人が何を考えているか表れてしまう。

でも、この時はそんなことを考えている余裕はなかった。だから、女店員の顔を真正面から見てしまった。

その瞬間、身動きがとれなくなった。

かわいい。

一人くんの脳裏に真っ先に浮かんだのはその四文字だった。

一人くんは一人遊びが好きなのでテレビドラマや映画を観る時間も普通の人より遥かに長い。だから、一般的にかわいいとされる女性もたくさん見ていて、そしてその誰のこともそこまでかわいいとは思っていなかった。

でも、今目の前にいる人はかわいい。

一人くんは一瞬で恋に落ちたが、一人遊びばかりしているのでそれが恋だとは気づきさえしない。

ただ全身が熱に包まれ、頭がぼうっとし、何も考えることができないでいる。

「あの、お客様……」

声をかけた途端に時間が止まったように動かなくなった一人くんに、女店員は戸惑いを隠せない。

女店員は、名前を相田紗智と言う。今年入社したばかりで、他の先輩社員と比べると販売数も遥かに低い。声かけの回数をもっと増やすように。今朝の朝礼で店長から指導を受けたばかりだった。

だからショーウィンドウのマネキンをもう五分以上も熱心に見つめている一人くんに声をかけたのだが、一人くんの反応を見て後悔した。

声をかける相手を間違えた!

でも、もう声をかけてしまったのだ。後には引けない。

「お客様、何かお探しですか? よろしければお手伝いしますが……」

一人くんは、適当な断りの言葉を述べてその場を立ち去るべきだと思ったが、足が固まって動けなかった。否、動きたくなかった。

もっとそのかわいい顔を見ていたかった。

「お、お願いします」

気がつくとそう答えていた。

相田紗智はにっこりと笑ったが、内心断ってくれればよかったのに、と思っていた。目の前にいる一人は見るからに店で扱っている服を買ってくれそうな客層ではない。きっとただの冷やかしに違いない。

でも、だとしてもセールストークの勉強にはなる。相田紗智は気持ちを切り替えることにした。

「それでは、こちらにどうぞ。今日はどなた様の服をお探しですか?」

店内に誘導されながら、一人くんの頭の中には疑問符が浮かんでいた。

どなた様の? 自分に決まっているではないか。

と、そこではっと気づく。店の中にある服は、見渡す限り全て女物であることに。

そういえばウィンドウに飾られていたマネキンも女のマネキンだけで、男のマネキンはいなかった。

一人くんの背中を冷たい汗が伝った。

そう、ここは女性専用のアパレルショップだったのだ。

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