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 出校日の帰り、私は友達と話をしていてAINABIの話題が出たときにこないだの緊急アップデートの内容を聞いてみた。

 なんかねー、システムのなんとかの更新と改善、ってあったけどよくわかんない。そんな感じで返されて、私はそりゃーわかんないよねーあはは、と変な笑いをこぼすしかなかった。ちなみに、弟に聞くと専門用語とか並べてくるから無理。


 家族がいない時をねらってしーくんに尋ねようとしたが、それもダメだった。

 パパの会社から戻ってきたかと思うと弟の部屋で二台揃って家庭教師だし、弟か休憩でゲームやってるときは相手になってるし、おやつ食べてるときは弟のそばで様子を見ていて、私が口を開くと弟が先に何か言う。それからお母さんについていってお買い物。戻ってきたらまた弟の家庭教師。

 弟といないときはパパと会社に行ってるかお母さんの家事を手伝ってるかで、なかなか私としーくんだけという状況にならない。


 かといって、あまり構ってなかったのに突然ずっと後をつけているっていうのは、まずい。怪しまれるだけ。見ていられないときはダイフクを行動させたりしたけど、特に何もわからなかった。


 お盆におばあちゃんの家に遊びに行った時も、お母さんやおばあちゃんにくっついてお手伝いをしていて、隙は無かった。おばさまやおじさまが機会を作れるようにフォローしてくれたけど、上手くいかなかった。




 八月一六日。おばあちゃん家からの帰りに、途中にあるテーマパークへ行った。やっぱり、なび持ちとそうでない人に分かれている、と思った。AINABIがないから何とかいう言い合いも見た。パパもお母さんも弟も何とも思ってないみたい。どうせ、どう思う? とか聞いたりするのは無理だけど。気づいた時よりひどくなってると感じる。


 宿泊先のホテルで、いよいよ私も巻き込まれた。いつもこのメンバーの時は家族単位とか男女で部屋を分けてるのに、カウンターで申し出るときに突然お母さんは変な割りかたをした。


「きこは、まつりと仲がいいし、せっかく勉強道具も持ってきてるから、そっちでいいわね」


 家族単位から私だけハブった。えっ? と私は思わず変な声で聞き返した。お母さんも、パパも弟も、返事も感想も何もない。無言でお母さんについていく。私は別にそれは構わないけど、なぜ急に変えたのか不思議で、理由だけはすごく気になる。


 娘が男性と同室でお風呂に入ったり寝るのは普通は親としてはよく思わないだろうし、お互い恥ずかしいだろうから、とおじさまがやんわり言い訳した途端、パパは声を荒げた。


「あなたは黙って聞いてくださればいいでしょう! 基子もそれでいいね?」


 おじさまも私も黙り込んだ。パパは私や弟が悪いことをしたときとか、お母さんがごはんを変な風に作ったときにしか大声を出さなかったのに。おじさまが悪いことしたわけでもないし、私が反抗して絶対いやとかわがまま言ったわけでもないのに。


 パパが叫んだ瞬間にしーくんがこちらを見ていたような、そんな気がした。

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