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私のほかにも捕まった人がこういう狭い部屋にいるみたいで、時々声が聞こえくる。見張りの人が歩き回って、周りに話しかけた人に何かしてしゃべらないようにしてるみたいだ。ほかに、退屈だからと歌いだした人がいて、見張りが愚痴ったのはちょっと面白かった。
窓とか部屋の外が見えるのは、出入り口の扉のところに手のひらより小さいくらいのガラスがはまってるところだけ。とても、何か道具を使ったりして外に出るのは無理そう。外がどうなっているのかわからないし、大きな部屋に合ったみたいな狂った時計すらないから時間の感覚が分からない。眠くなってきてようやく夜だなという気がしてきたけど実際はわからない。
一度眠ったみたいで、私ははっとして飛び起きた。部屋の明かりも消えていて、部屋の外に弱い光があるのかな。それが漏れてきてる。じっと壁を見ていると、ぼんやりと形や色の違いが少しずつ見えてきた。眠くなるまで、食べたいものとか遊びたい場所とか、あえて関係ない考え事をしていた。そのとき、外から何人か声がした。
次に見かけたら壊してやるというおじさんぽい声。女の人の泣いている声。出るために話し合おうと呼びかける男の人の声。眠れないのか、おじさんの声は、最初は結構大きな声だった。周りの人の反応のせいか少しずつ小さくなって、最後は本当にぼそぼそとした独り言になった。場所が近いのか、その状態でも、多少内容が分かってしまって、私は悲しかった。
壊せとか、壊してやるというのは、AINABIをはじめとした、この会社の製品全部のことだった。最低でも、AINABIは壊しつくしてやるべきだ、とそのおじさんはブツブツつぶやき続けて、私が寝る少し前まで続いていた。
そんなのおかしいよ。AINABIたちに何かあると言っても、それをなくせばいいんじゃないの? 何もしないで壊そうとしたら、私たちがされていることを、AINABIの持ち主に対してしているだけだよ。ここしばらく、確かに居心地最悪で、気味が悪くて、嫌だけど、しーくんたちを壊しちゃえなんて思わないよ。
眠ったり起きたり食べたりを繰り返しても、時間がよくわからない。あの狂った時計でも、あれば秒針見ながら五分くらいなら測れるし、見張りがいない間に聞いた声の中に間名倉くんがいて、話しかけてみたら一時間くらい測れるって言ってた。三人くらいで交互にやって三時間か四時間くらい測れば、大雑把な時間はわかるとか言ってて、彼はそんなすごいことができるんだーと感心してしまった。
何度目かの食事は、食べたことがあるような感じがした。市販のお弁当から、ラベルを丁寧にはがしたものだった。食べ終わって回収の時に、急に腕を引っ張られ、手錠をはめられて狭い部屋から出された。
廊下は弱い足元照明しかついていなくて、足元以外は見えにくいようになっていた。私と合わせて六人を、作業着を着た十人くらいで囲んでいて、ちょっと横を向いたりするだけで注意されたり軽く蹴られたりした。私も足がもつれて転びそうになって、作業着に列を乱すなと怒られた。ところどころに扉があって、そのうちの一つから明かりが漏れていた。そこで立ち止まって、私たちはひとりずつ入るように背中を押された。
事務机と椅子と棚しかないみたいな感じの部屋だった。寝て起きた後はずっとうす暗かったから、明かりがまぶしく感じる。人が立っているのはわかった、作業着じゃなくて普通の背広だった。初めは後ろを向いていて、作業着の人たちが挨拶するのを聞いて初めて、立っている人が社長さんだということを知った。
社長さんが何か指示をしたとたん、作業着の人達は人が変わったみたいに明るい顔になって、私たちに謝ってきた。謝るくらいなら早く解放しろ、と怒る人もいたけど、とりあえず話は聞こうと隣の人が言うと怒った人も抵抗をやめた。
「やっと、世間に広まったところだからね、君たちにも、ちゃんとお話ししないといけない。」




