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満員電車

初めて書いたものになりますので、恥ずかしい限りです。

 若者は全財産を財布に突っ込み駅に向かった。彼の目的は全財産を使って終点まで行くことだ。彼はこれまで電車というものに乗ったことがない。彼の聞いた話によれば、電車には満員電車以外のものは存在しない。満員電車とは、もはや他人が入る隙がないように思われるほど、人で敷き詰められている電車のことだ。そこでは人々はお互いに非常に近い距離で顔を突き合わせているが、なぜか少し顔をうつむかせ、相手の顔をまじまじと眺めるようなことはしない。彼はそれに乗り、終点まで旅をすることに決めた。

 若者は運よく電車の順番待ちの最前列に立つことが出来た。そこに満員電車が来た。いかに満員状態といえども、駅ごとに扉が開くのだ。タイミングを見計らって、彼は急ぎ足で乗り込んだ。彼が一人入ると扉はすぐさま閉ざされた。あまりに人が詰め込まれているため、一度に一人しか乗り込むことが出来ないのだ。後に続く人々は次の電車が来るまで順番待ちということになる。

 若者は満員電車に乗り込んだとき、すぐさま異様な空気を感じる。息苦しさを感じるのだ。車内では走行中に窓を開けることは禁じられているため、ここでは常に空気がよどんでいる。若者は外の景色を見ながら何とか我慢し、電車は次の駅に停車した。ここでも何とか一人の新たな乗客が乗り込むことができた。新たな乗客が入ってきたおかげで、若者は少しだけだが車内に押し込まれた。といっても人一人分くらいである。ここでまた若者はさらなる息苦しさを感じた。さっきはすぐ前に扉があり、外の景色も見ることができたというのに、今は頭一つ隔てなければ外を眺めることができないのだ。さ

 さて、しばらく乗っていると、若者はどんどん車内に引き込まれていった。停車する駅ごとに人が乗り込んでくるからだ。気がつけばもっとも両扉から離れた場所、つまりもっとも中央に立っていた。ここは車内を一望することができるが、もっとも狭苦しく、もっとも外の景色を見るのに苦労するポイントだ。彼には自分でここまで進んだという意識はない。彼はこの電車を出ようと考えた。あまりに狭く、気分が悪くなったからだ。彼は扉に向かうため、足を上げずに靴を床にこすらせながら徐々に動かしていった。あまりに人でひしめき合っているため、大股では進めない。ここでまた別の駅に到着した。人が乗り込み、その分内に押し戻された。彼は少し疲れたため、身動きせず機会を伺うことにした。

 若者は終点までの気長な旅をしており、どこで降りるかなど決めてはいなかった。いやになればすぐに降りればいいと考えていた。結局彼は終点までに降りることができなかった。扉に向かうまでの人間の数があまりにも多すぎた。

 若者は全財産を使っての旅をしていたのだ。終点までいけば持ち金は空だ。彼はこの旅を振り返る。身動きできず、外の景色も見ることが出来ず、淀んだ空気を吸い続けた長い時間だけが思い出される。彼は空の財布を呆けた顔でしばらく見つめてから、降りた駅のあたりを見渡した。見ればたくさんの人がいるではないか。彼らもみな呆けた顔をしながら自身の空の財布を眺めている。彼は自分が乗ってきた線路の方を眺めやった。その後彼はじっとそうしていた。

初めて書いたものになりますので、改めて恥ずかしい限りです。

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