身内
北斗がベッドを整える。
「なぁ、北斗」
秋が神経質になっている北斗を見る。
「ひいおじいって、名前ないのなんでかわかる?じいちゃんは知らないって」
『うーん』
北斗が水晶玉をコートのポケットから取り出す。
『視る?天照ほど鮮明でないけど過去は見せれるよ』
「いや、知らないならいい!」
『俺が天照から聞いたのはそういう風習なんだって』
「そういう風習?」
月見が背後から乗り掛かる。
『月見重い』
「いや。その風習が知らないから教えてくれ」
『昔の風習なんだってさ。王になると名前を奪われるの。その代わり妖魔とは違う存在、妖魔王という至高の名前を与えられる。まぁ、妖魔王が世襲制の名前みたいな物なんだよ。もうずいぶん前であの妖魔も結構長生きだからあの妖魔以外は知らないと思うって天照言っていた。だからもしかすると名前を奪われることはないのかもしれないけどね。王も二人いるし』
「そういうものなのか」
秋が納得すると空が聞く。
「お前がなんで知っているんだ?天照ってのが知っていたとしても」
『今ならわかる、血筋だからだと思うよ。天照は天涯孤独、トーゼア家の血が産まれた切っ掛けを作ったらしい。だからトーゼア家に関わることには手を出すんだって』
「へぇ。って、え?」
『あの女ほんと、一体なんなんだろ。まじで思う』
北斗が呻きながら首を捻る。
「しかし、北斗って魔術師としてすごいんだな」
『俺はそんなすごくねぇよ?』
「その基準は?」
『天照に一度も勝てない。あの女ぁ。ちょこまかと逃げた上に隙あらば攻撃しやがって。授業中ぐらい静かに受けさせろ!』
「天照って人には結構感情的だな」
『身内だから。妖魔の王に聞いたんだけどトーゼア家って身内に厳しいんだって。俺、天照に会うまでは一人だったから天照を身内判定しているの』
「あぁ、だからイクアにも手厳しいのか」
イクアは現在北斗の枕を押し退けて寝そべっている。
「基本的に北斗は甘えるの下手だしな」
イクアの言葉に北斗は頭を殴る。
『一言多いわ!』
ドアが叩かれアトロールが入ってくる。
「やっぱここか。ちょっと当山顔貸せ」
『何?』
アトロールが月見たちを見てから告げる。
「部屋にお菓子があるんだがどうだ?」
『いく!』
北斗が満面の笑顔で付いていく。
「ちょっと借ります」
「おーう」
『先に寝ておいていいから』
嬉しそうな北斗の声が響く。




