運動
北斗が占いを行う。
「恋愛運は結構いいね」
「本当ですか!」
「うん。いい人と巡り会えるよ。努力さえ惜しまなければ、未来も明るい。ちゃんと自分の意見を言えれば結果すごいことになる」
ホワイトボードを示しながら北斗はタロットカードをめくる。
「しかし面白いな。そういうのは当たるものなのか」
四男に説教を終えた妖魔の王がしみじみと眺める。
『天照ほど先を見通す魔力や才能はないけどね。魔力と道具さえあれば一人だけなら見通すことはちょろい。たくさんの人が見る新聞は星座なんかで決められた運命の中から当たりそうなことを書いておけばいいんだよ。そうすれば十中八九当たるから』
「なるほど」
『魔力を使うから連続して使ってもうだめだな。っていうところでやめておけばいいわけだし。そういう点では稼ぎは楽』
「ふぅん」
『魔力っていうのは生命力みたいなものでね。直結したものじゃない人も多いから、あ、姫さん。まじでいい強運だ。来年辺り宝くじでも買えばいいところまで行くよ』
「ほんと。試しに買ってみようかな」
『姫さんはファンだっていうから今回は特別だけど、次からはお金もらうね』
「いくら?」
『一回千円』
「それならおこずかいで」
「ん」
『さて、運動するかな』
「運動?なんだ。それなら付き合うぞ」
「え!」
落ち着いて本を読んでいた月見が反応を示して、慌てて北斗を抱き寄せる。
「北斗に怪我をさせる気か」
「安心しろ。俺はトーゼア家には鬼畜じゃない」
「し、信用ならない」
「あー。それは大丈夫だと思いますよ」
王女が苦笑いを浮かべて口を挟む。
「父とたまに組手してましてよく転ばせてますよ」
「なら大丈夫か」
「お前は」
『動けないなら散歩する!』
北斗が月見の腕から逃れる。
「いや。庭で暴れていい!もうそれの方が大歓迎だ」
『じゃあそうする』
月見の必死に北斗が頷く。
「なんで必死なんだ」
「親父は北斗の厄介ごとを招く体質をなんだと思っているんだ」
「ミナールの息子であるということで物凄く納得しよう」
北斗は不服そうな表情を浮かべる。
「しかしじいちゃんとひいじちゃんってなんか逆って感じがする」
「年が二百を越えたら若返ったからな。しょうがない」
北斗はつまらなさそうにアトロールを見る。
「俺は動かねぇぞ」
「ぶー」
不満そうな北斗にアトロールは立ち上がって北斗の頭を撫でる。
「そういえば、戦闘の」
「なんすか?」
「お前はミナールに顔がそっくりだな」
「あぁ。それで会ったとき驚かれてたんですね。天照にも似ているといわれました」
北斗がびくりと体を震わせる。
「特にホートと向き合っているとそう感じてしまう。まぁ。生きていたらお前より年は上だが」
「そうですか。えーっと似てない方がよかったですか?」
北斗のイライラが最高潮に来る前に外を示しながら聞く。
「そ、そうだな。似ている方がいい。懐かしいからな。ミナールは弟によく似ていたし、お前も似ている。性格は違ったが」
妖魔の王が嬉しそうに笑うと北斗の頭を撫でて窓を開ける。
「これるか?魔術師」
『行く!』
飛び降りた妖魔の王の後を北斗は追い掛け、怪我もなく着地する。
「月見さん」
「あ。大丈夫。北斗は屋根から落ちても大丈夫だったから。お前らは真似するな」
降りようか挑戦しようとする孫二人の首根っこを掴む。
そして肩に担いだまま下へと降りる。
「わー!って置いてきぼり!」
「危なさそうだから女は降りない方が良さそう」
アトロールはエンリィに苦笑いを浮かべる。
「あなたはいかないの?」
王女が不思議そうに聞いてくるためアトロールは寂しげに笑う。
「あんま体動かすの好きじゃないんでね」
そして戦闘の妖魔の証のアザに触れながらも呟く。




