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人魔城

妖魔の王と人の王が住まう場所は隣同士である。

人魔城と呼ばれた二つのお城。

隣接したお城同士で、唯一繋がっているのは大広間という食事場のみ。

此処で妖魔の王と人間の王は会食をすることもある。

アトロールが欠伸をする。

「人間に輸血なんて聞いたことねぇぞ」

今は上から下まで真っ白い青年を見る。

「しょうがないだろう。北斗の血液は特殊だ。そんな特殊な血液は妖魔でもいない。先祖が妖魔と人の間にできたハーフだったからな。それも仕方がないことなんだろうが、まぁ、半分は妖魔だ。気にするな」

北斗の主治医に血を盗られながらも溜め息。

「いいけどよ」

北斗は現在、血が足りなくて意識がない。

「人間って、人間ってひ弱だよな」

「今回はその前に大量に血を失っているからな。吐血した量は少ないとは言えど、輸血しないといけない状況だしな」

医者はようやく口を開く。

「あんたさ。なんで当山助けるの?あんたが持ってくるものって全部魔術師にしか使えない物だし、普通王族につき出すんじゃないのか?」

「俺は大戦で妻を失った。その後、死んだように生きていたんだがあれが突然来てな。前みたいに髪の毛切ってくれと」

「医者だよな。あんた」

「まぁな。で、切ったらまた来るねーって。それからよく来るようになって、あいつの魔力の気配を調べていたらよく怪我をすると乱れるんで心配で行くようになった」

「あんたがタイミングよく誰も連絡していないのに来る理由がものすごくわかった」

「天照にも世話になったしな。治療費はもらっているが」

「守銭奴かよ」

「これくらいで足りるな」

輸血を打ちきり、隣で寝る北斗に点滴を開始する。

「しかし珍しいんだぞ?こいつの血液は、人と妖魔の子だからかな」

医者の言葉にアトロールは無言。

「お前も死にかけたらこれに輸血してもらうといい。親族は居ないんだろう?」

アトロールが北斗を見ながら言う。

「いるよ。たった一人、顔を見たことがないハトコの子が。探しているんだ。これでも」

「会って引き取るのか?」

「さぁね。考えてない。見てから考える。もしかしたら死んでいるかもしれないしな。ただ見たいんだよ。ハトコが会わせてくれる。って約束を果たす前に死んじまったから」

「まぁ、どっちにしろ血液型が一緒で俺は助かったけどな」

医者はアトロールの頭を撫でる。

「俺、四十代」

「俺は五十だ」

「はぁあああ!」

どう見ても見た目は三十代ぐらい。

「不老の妖魔が父親でな。だから俺の魔力は不老に使われているせいで少ないんだ」

「へ、へぇ」

アトロールの中で魔術師は化け物であると言う認識へと変わった。

「さ、さて、飯でも食いにいくかな。腹へった」

「イクアは、いるのか?」

月見が見回しながら言う。

「俺だ俺」

白く長い髪と白い服装の男。月見は真顔で見つめてから聞く。

「親父が呼んでいるそうだ」

「なんか、ろくでもなさそう」

そう言いながら外に出た瞬間獣へと姿を変えて歩いていく。

「なんで人に」

「治療室で毛なんて撒き散らされてみろ。不衛生だ」

月見の疑問に医者は道具を片付けながら言う。

「飯食いにいこう」

アトロールもすかさず歩いて行く。

「二、三日は絶対に安静にしといてください。多分目が覚めるのは明日か明後日だと思うんで大丈夫とは思いますけど」

「ありがとうございます」

「あ、これ。起きたら大量に物を食うと思うんでそこは忠告しときます」

「それは親父に言えばいいと思うので大丈夫です。トーゼアの情報源は生かすべきだってうるさいんで」

「トーゼアの情報について教えろ!」

「北斗に許可を出すから北斗に聞け!」

「お前に聞けって言われたんだ!」

廊下にまで響く喧嘩の音。

「賑やかですね」

「まぁ、そういうものなんで」

「じゃあ、俺はこれで」

道具をきれいに片付けて部屋を出ていく。月見はそれを見送ると北斗の側に座って見つめる。

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