異世界
一時の休憩。
北斗はスナック菓子を食べながらうたた寝をしてアトロールに持たれている。
「そういえば戦闘の。群れは残っているのか?」
「いえ?俺は魔術師に誘拐された一人なんで、群れには。天照。って知ってますよね」
「あぁ。魔術師学校の創立者だな」
「に、助けられて、貴方は戦争に参加しない方がいいと言われたので指示に従ってます」
「血の気が多いのが戦闘の特徴だが」
「天照の指示に従わないと恐ろしいですから」
「まぁ、確かに」
「俺、血は妖魔ですけど雑種なんで。じいちゃん。俺をさらった魔術師はハーフ系の妖魔を拐ってどの程度の魔力を有するのか、使えるのか、等の研究者でした」
「あぁ。そうか、親はどうした?」
「殺されているんでなんとも」
「そうか。聞いて悪かったな」
「いや。あーはい」
北斗の口元を拭ってから、さりげなくお菓子を摘まむ。そして北斗の口に入れれば眠りまがらも食べている。
「で?その人間大丈夫か?」
「北斗は昼夜逆転の生活しているし、この間ちょっと大怪我負ったから。血が足りてないんだ」
月見が説明すれば妖魔の王は納得の表情を浮かべる。
「どおりで」
「なんだ?」
「なんとなく血の臭いと、ずっと食べ物を食べている」
月見が北斗へと視線を反らして見つめる。
「親父はトーゼアのやつが可愛いって言ったよな」
「あぁ」
「俺は北斗という存在に恩がある。俺は好きになった女に恩がある。俺は人に恩を返すために人の世界にいる。人の世界で人として生きていく」
「だろうな。好きにしろ。とりあえず一度ここから出るか。これでは撮影もできない。討伐隊を組んで」
北斗は勢いよく飛び起きてお菓子を散らかす。
「どうした?北斗」
「う。うー」
気持ち悪そうに額を押さえながら北斗はホワイトボードを取って見せる。
「なんか。いる」
「化け物か?」
妖魔王の問いに北斗は左右に首を振る。
「人と妖魔両方の気配が下からする。気持ち 悪」
「水はあるか?」
「はい」
妖魔王の声に月見の兄は水を取り出して北斗に飲ませる。
「大丈夫?」
エンリィが頬に触れれば北斗は目を閉じて、再び眠りに落ちる。
「気配は感じないが用心しておこう」
しかし妖魔王の言葉に北斗が無理矢理まぶたをこじ開けてホワイトボードに字を書く。
「異世界の扉がこの家のどこかにあって、そことこちらの境界が曖昧。だから気配薄い。あいつら。ここにいてここにいない」
「異世界の扉か」
「とりあえず北斗寝てなさい」
月見の言葉に北斗は頷いて目を閉じる。
「とにかく外に向かうか」
「ははは!妖魔を異空間、「魔術学校」にご招待だ」
壁からの声にその場に残された北斗。それでも北斗は眠り続ける。




