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追憶

それは不思議なやつだった。

「おじさん。ちょっと良いもの持ってきたんですけど」

自分に楯突いた人間がどうなったか知っているのに幼い頃から悪戯を行い、悪戯を目論んで来たと思えばちゃんとしたものを持ってくるから。

「今日はチョコレート!美味しいですよ」

「ちょこ?」

「はい。口開けて」

大人しく従えば口に入れてくるのは甘く苦い塊。

「今度はなんだ?」

「やだな。バレンタインですって。恋人にねチョコをあげるんですけど最近はお世話になっている人にもあげるそうです。あ、ホワイトデーのお返しは三倍でお願いします」

「やっぱりそう来るのか」

「ん」

嬉しそうに微笑んでから側に座る。

「お前、俺に逆らったりしたら殺されるとか」

「え?おじさん。僕のようないたいけな若者をなぶり殺す趣味があったんですが?」

とりあえず拳骨は入れておいた。

「っうう!冗談なのに」

「で?質問の答えは?」

「おじさんは僕らの血筋を殺しませんから」

満面の笑みを浮かべてポケットから大量のチョコを取り出すと仕事机の上にばら蒔く。

「たまには休んで僕のお返し選びにいきませんか?あ、ついでに恋人も紹介したいので」

「もてるな」

「おじさんほどじゃないですよ、あ、今度、息子さんにも会わせてください。それからもう一人の親戚にも会いました。名前は阿東。妖魔なんですけどね。天照が保護したらしいんで、何時かあってやってください。今は戦争のことがあるので会わせれないと天照が」

「魔術師に誘拐されたトーゼアの妖魔か」

「そうですね。あぁ。そうだ。それでですね。子供ができたときの名前なんですが」

「?」

「一緒に考えてほしいので遊びにいきましょうよ。こいつ使えばすぐなんですから」

いつのまにか隣にいた巨大な黒い獣を見る。

「ね?」

「たまにはミナールに飯でもおごってやるか」

「やったー!おじさん大好き。肉が良いです。質より量で」

「現金だぞ」

あきれながらも確かに殺せないなと頭を撫でる。

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