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北斗は夢を見ていた。

「ほら」

父親に連れられて訪れた場所で出会った男の人。

「挨拶しなさい」

父親の手を握り、自分と似たような臭いがする男に恐怖さえ感じる。眉をぴくりとも動かさない冷たい瞳。

だが無情にも父親は突き放す。

「っ!」

「彼はお前のおじいちゃんだからね。優しい良い人だよ」

それでも怖いが、父親に迷惑はかけれないと大人しく手を離す。そして好きにしろと言い放った男の後を追いかけて、男の部屋の隅で踞る。途中でふかふかの椅子を持ってきてくれるためそこに座る。

時々転た寝をして時間を潰していれば、お腹が鳴る。しまったと男を見れば男はこちらを見ている。

「う、うぐ」

怖いと思いながら目に涙を浮かべれば、男が近づく。謝らなければと口を開く。

「ほら」

静かに差し出された手に、小さな包み紙。

「?」

見つめていれば包みを投げてくるため掴む。

「良い反射だ。飴だ。昼飯まで十分ぐらいだからそれ食って我慢しろ」

言われて中を見れば透明な飴玉。男を見れば再び机に向かっている。頭を下げてから口へと放り込む。

とても美味しくて、それから幾度となくねだった。

それから暫くして両親を殺して、保護者も殺してしまった。

「ほら。これをやるし、ここに来ればやる。二度と人のものとるなよ」

一人になったときに月見がお菓子をくれたとき、その姿とだぶって受け取った。記憶も浅はかな記憶の片隅で素直にお菓子を受け取ったのはそのせい。

今は父親もお爺様も思い出せないけれど、時々アトロールと父親が重なってしまうのがどうしても不思議で仕方がない。

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