拉致
月見が家に帰れば玄関先が血の臭いで充満している。
「北斗?」
その臭いに思い当たり家へと飛び込む。
「北斗!」
「寝ているんで静かに」
手術着のようなものを来た男が現れ、北斗の血が付いているのに気付く。
「北斗は!」
「部屋。傷を直して麻酔で寝かせてます。お孫さんですか?が見てますけど」
「そ、そうか」
溜め息を吐いて北斗の部屋に入れば本を読む青年と、布団の中で眠る北斗。
「アキ」
「ただいま」
「お帰り。アトロールとエンリィは見てないか?」
「妖魔はいなかった。帰ってきたら北斗が体を丸めて倒れてた。ちなみに血塗れで、空が今お風呂」
「そうか」
青ざめた顔色をしている北斗に触れる。
「北斗」
「ところでこれ、何?」
北斗愛用のホワイトボードを向けられて月見は受けとる。
「文字?」
北斗の血で書かれた文字に首を捻る。見知らぬ文字に、医者が服を脱ぎながら来る。
「この家の妖魔は預かった。返してほしくば妖魔王を殺してその首をさらせ。って書いてあるぞ」
服を脱ぎ終えてから丸める。
「読めるの?」
「一滴でも魔力があるとわかる文字なんだ。あ。ごくわずかしかないから魔術は使えないぞ」
即座に否定したことに苦労してきたのだろうと月見は判断する。
「アキ。北斗を頼む。ちょっと俺出掛けてくるから」
「えー?」
「あーき?」
「暇だからいいけどさ」
月見の笑顔に青年が諦めモード。
「じゃ?俺はこれで。午後の診察放って来たし」
言うが早いか、鞄を持って縁側から外へと消える。
月見もまた外へと出掛ける。
北斗がゆっくり体を起こす。




