始まり
私が『箱庭』、に来たのは3歳か、4歳の時だったらしい。
普通7歳くらいで、もう大抵のことが自分で出来る年齢の子供が箱庭に来る。
そして箱庭では子供が生まれない。
正確に言うと生き物が産まれるという概念自体なかった。
だから、『線』に立っていた時、誰もが驚いたという。
こんな小さい生き物がいるのかって。
私自身はちゃんとは覚えていないので、全部エリから聞いた話だ。
私を最初に見つけたのはエリだそうだ。
幼い私はエリを見るなり、とことこ歩いていって、服の端を掴みこう呼びかけたらしい。
「エリ!」
その名前が今のエリの名前になっている。
それまでにエリには別の呼び名があったそうだし、私がなんで『エリ』と呼びかけたかなどわからない。
とにかく、そのときからエリは『エリ』という名前になった。
そしてエリはその時こういってくれたのだ。
「エリ?俺が?・・・へぇ、いい名前だね。うん、そうだね。
それを俺の最後の名前にするよ」
おぼろげながらも、これが私の最初の記憶、一番最初の言葉。
その日から、私はエリと一緒に暮らすことになった。
3歳の子供などエリはもちろん、箱庭の住人は誰も育てたことなどなく、よく死ななかったなぁと思う。
けれど、エリは一生懸命私を育ててくれた。