現実世界でハーレム作りたければ、それなりの努力や根回しはしろよ
「木更津!こんなところにいたのかよ!探したんだぞ!」
秋晴れの放課後、校舎裏のベンチに座って読書を楽しんでいたが、辺りに響き渡るほどの大声に邪魔された。
小さく溜息を吐きつつ顔を上げると、男子生徒がこちらに勢いよく走ってくるのが見えた。
滅多に人が来ないお気に入りの場所だったんだが、とうとうここもこいつに見つかってしまったか。
「…何の用?」
「聞いてくれよ!ゆずと沙苗とチカちゃんに彼氏ができたんだよ!あいつらマジで信じらんねえ!お前もそう思うよな!?」
必死の形相で同意を求められたが、俺は思わず放心状態になった。
こいつは本気でそう思っているのだろうか。だとしたら本物の馬鹿…いや、サイコパスなんじゃないのか、と。
ひとまず、こいつと今挙げられた三人について説明しよう。
慌ただしく現れたこの男は『我妻勇斗』。
中等部三年A組で、俺とは三年間同じクラスの間柄でもある。
走ってきたせいか今は息も荒く髪も乱れているが、普段は爽やか系のイケメンで明るい性格の、一見すると典型的な陽キャだ。
俺は日頃、こいつからとある三人の女子生徒とのノロケ話をしょっちゅう聞かされてきた。
まず始めに名前が出たゆずこと『緒川ゆずな』。
俺達と同じ三年生で、クラスは隣である。
我が強く、誰が相手でも物怖じしない強気な性格の美少女で、我妻とは幼稚園の頃からの幼馴染だという。
一年時、ほぼ毎日登下校が一緒で、お互いに下の名前で呼び合う我妻とゆずなは一時期学年の話題になっていた。
しかし、友人達から「二人は付き合っているのか?」と聞かれていた際に我妻はいつも「やたら絡んでくるだけの幼馴染」と否定していた。
最初の席替えで我妻の後ろの席になった俺は「中学生になっても頼んでもないのに毎朝迎えに来られる」といった、愚痴という体のノロケをたまに聞かされてきた。
二番目に挙げられたのは『志月沙苗』。
一つ下の二年生であり、活発でサバサバとした印象の子だ。
一見美少年にも見えるボーイッシュ系美少女で、女子達に囲まれているのをよく見かける。
彼女とは一年前、廊下の曲がり角でぶつかるという、少女マンガのような出会いをしたそうだ。
それ以来、昼休みになると我妻に会いに教室まで遊びに来るようになった。そして同じく我妻に会いに来たゆずなと少々険悪なムードになるのがお約束になっていた。
ノロケ話にも沙苗の話題が混ざるようになり「ゆずなと二人でいるとどこからともなく現れて、やたらゆずなに突っかかってくる」と、どこか嬉しそうに話していた。
そしてチカちゃんこと『本居チカ』は半年前に入学してきた一年生だ。
小柄で人形のように可愛らしい少女で、所属する料理部の間ではマスコットのように扱われているらしい。
入学したての頃に校舎内で迷っていたところを我妻に助けられて以来、慕ってくるようになったそうだ。
チカは時折、我妻に手作りのお菓子を差し入れに来ていたが、その際にゆずな&沙苗の恋敵先輩コンビと鉢合わせになることもあった。
「ゆずなと沙苗に睨まれて震えるチカは小動物みたいに可愛い」とニヤニヤしながら語る我妻には内心引いた。
以上、タイプの異なる女子三人から明確な好意を向けられていた我妻。
我妻の右隣にはゆずな、左隣に沙苗が陣取ってお互いに睨み合い、その後ろから小さな歩幅のチカが三人の後を置いていかれないように必死で追っている。
校内で度々この図を見かけたことがあるが、いつも我妻は得意気な顔をしていた。
だが、この度ゆずな達に彼氏ができたという。
目の前の我妻は嘆いているが、俺は『当然の結末』だと思っている。
そして、冒頭の問いに対して何も返してこない俺にしびれを切らしたのか、我妻は独り言のように言葉を続けた。
「皆あんなにオレのこと好きアピールしてきたくせに、どうして急に他の男と付き合うなんてできるんだよ!こんなの裏切りじゃんか!」
「いや、裏切りじゃなくて見限りじゃね?全員、いい加減あんたに愛想が尽きたんだろ」
「…は?」
心底意味がわからないといった表情だった。
いや、どうしてあんたがそんな顔できるんだよ。
「あんた、この間のこともう忘れたわけ?」
俺が言ったのは、半月前に起きたある事件のことだ。
中等部の昇降口前で、ゆずなと沙苗による取っ組み合いの大喧嘩が勃発したのだ。
下校時刻をだいぶ過ぎた時間帯で人影はまばらだったとは言え、その現場は何人かの生徒に目撃された。自習室での勉強を終えて帰ろうとしていた俺もその内の一人だ。
ゆずなと沙苗は互いの髪を引っ張り、爪で顔面を引っかき、殴る蹴るの大乱闘状態だった。
その場にはチカもいた。二人の争いを止めようと間に入ろうとするが突き飛ばされ、それでもめげずに止めようとして突き飛ばされるのを何度も繰り返していた。
どうしたものかとうろたえていると、廊下の向こうから我妻がやって来たのが見えた。
俺が「一緒に止めるか先生を呼んでこい」と話しかけようとしたその時。
「ちょっと三人とも、こんなとこで何やってんだよ〜。まったく、子供じゃないんだからさ」
やれやれといった感じで腕を組み、うっすらと笑みを浮かべて喧嘩を傍観し始めた我妻。俺は思わず唖然としてしまった。
興奮状態のゆずなと沙苗は我妻には気づいていなかったようだが、地面にへたり込んで我妻を見上げていたチカの顔は今でも忘れられない。
驚愕と絶望が混ざった、一言では言い表せない表情だった。
結局、他の生徒が呼んできた先生が三人を連れて行くまで、我妻は最後まで喧嘩を止めようとはしなかった。
その後、ゆずなと沙苗は一週間の出席停止となり、喧嘩を止めようとしたチカには特にお咎めは無かったらしい。
その後、おそらくチカが二人に教えたのだろう。我妻はあの場にいたのに、喧嘩をただ見守っていたことを。
そしてようやく目が覚めた三人は我妻と決別することを決めた、といった感じか。
しかし、目の前の男は本気で理解していないようだ。
「あんたさ、どうしてあの時に緒川さんと志月さんを止めなかったわけ?喧嘩の原因は明らかに自分だってわかってたんだろ?」
「そんなのオレが原因なんてわかんないだろ?二人の問題なのに、部外者が首突っ込むなんて野暮じゃんか!」
「仲のいい女子が目の前で派手に喧嘩してたら、野暮とか考える前にまず止めに入るだろ。じゃあ質問を変えるけど、あの時あんたはなんで笑ってたんだ?自分のことで争う二人を見て、優越感に浸ってたんじゃないの?」
「そっ…そんな性格悪いこと、思うわけないだろ!?木更津と一緒にするなよ!」
口ではそういう我妻だが、明らかに挙動不審になっている。
「ていうか!あの場に木更津もいたならお前が止めればよかったじゃないか!」
「たしかに止められなかった俺も大概チキンだけど、自分ですらやらなかったことを俺に押し付けるなよ…」
俺の溜息混じりの発言に、我妻は罰が悪そうに顔をそらす。
「あとさ、さっき自分は喧嘩の原因じゃないみたいに言ってたけど、本気でそう思ってるわけじゃないよな?どうしてあんな大喧嘩になる前に、あの三人の中からさっさと彼女一人を決めなかったわけ?」
「そんなことしたら他の二人を傷付けることになるだろ!俺は、いつまでも四人で仲良くいたかっただけなんだよ!」
「仲良くって…一人の男巡って三人の女子が火花バチバチ鳴らし合ってることのどこが仲良しなんだよ」
我妻も度々「あの三人は顔を合わせるとすぐに喧嘩腰になるから、もう少し仲良くしてほしい」とか言ってたくせに、こいつ、自分に都合の悪いことは忘れるタイプだよな。
「皆で仲良くいたかったならそれこそ『全員同じくらい好きだから一番なんて決められない』ぐらい言えなかったのか?」
「はぁ!?そんなのオレが不誠実な男だと思われるだろ!」
「三人全員に思わせぶりな態度取るだけ取って、一向に一人をはっきり決めない奴のどこが誠実なんだ?フフッ…あんたの思考、マジでヤバいぞ?」
我妻のぶっ飛んだ持論に耐えきれず、途中思わず鼻で笑ってしまった。
「木更津…友達になんでそこまで言えるんだよ!そんな性格だから俺以外に友達いないんだろ!?」
「そもそもそこだよ」
「へっ?」
「あんた、俺のこと『木更津』って呼んでるけど、俺の名前は『如月』なんだよ」
我妻は呆気に取られた顔をしている。
こんな指摘、三年近く一緒に過ごしてきたクラスメイトにすることじゃないんだけどな。
「だったら教えてくれればよかったじゃないか!何を今更…」
「最初から教えてたけど。でもあんたは『そうだったっけ?それよりさ〜』ってさっさと自分語り始めて取り合ってもくれないから、もう四回目ぐらいから諦めてたんだよ。あと、あんたが俺の唯一の友達とかふざけたこと言ってたけど、俺は普通に友達いるから」
俺には人数こそ少ないが、ほとんどが別のクラスにバラけているだけで友達はちゃんといる。
今のクラスにも同じ科学部の友人である後藤君がいるが、我妻にはできるだけ近寄りたくないそうで、彼と会話を交わすのはもっぱら部室か休日に遊ぶ時だ。
「そもそも、ろくに友達いないのはあんたの方だろ?あんたは顔がいいし人当たりもいいから、最初の頃は人が寄ってくるけど、あんたの人間性のヤバさに段々と離れていって…最終的に俺しか話に付き合ってくれる相手がいなくなった。違うか?」
思い返してみると、さっきだって俺を探して学校中を駆け回ってたから、息もあんなに乱れてたんだろうな。
なんて考えてると、我妻はわなわなと震えた後に俺を睨みつけた。
「うるせぇな!この陰キャ!」
図星をつかれ続けてとうとうお怒りになったようだ。
「普段話しかけてやってたからって調子乗ってんじゃねえよ!お前みたいな根暗野郎、友達でもなんでもねえから!大体さっきから偉そうに上から目線で語ってるけど、お前みたいな彼女もいない奴に言われたくな」
「夕日くーん!」
我妻の言葉を遮った、女子特有の高く愛らしい声に下の名前を呼ばれた。
会いたかったけど、この場にはできれば来てほしくなかった人。
「乙葉さん…委員会はもう少しかかるはずじゃなかったの?」
「思ったよりも早く終わってね。だから探しに来ちゃった!びっくりした?」
たしかにびっくりしたが、それよりも驚いているのは我妻だった。
「は?めっちゃ美人…てかその制服、高等部の…?」
いきなり現れた美人すぎる先輩に混乱する我妻。
まあ無理もないよな。こんな清楚系美人、中々お目にかかれないし。
「あら、夕日くんのお友達?はじめまして、天澤乙葉です」
「木更津の親友の我妻快斗です!」
掌返しで親友を名乗ることも厚かましいし、また名前間違えてる。
こいつ、本気で記憶障害か何かなんじゃないか?
「あー…あなたがあの我妻くん…ね」
「俺のこと知ってたんですか?天澤先輩みたいな綺麗な先輩に知ってもらえてたなんて光栄です!」
「うん。我妻くんのことは、彼氏の夕日くんから色々と聞いてたからね」
「へぇー、彼氏ですか………って、はああぁぁ!?」
そんなに俺に彼女がいるのが信じられないのか。本当に失礼な奴だな。
俺としても恋人の前では愚痴なんて言いたくなかったんだが、我妻に長ったらしいノロケを聞かされた日、疲れを隠しきれなかったのが乙葉さんに見透かされてしまい「何があったか喋ってくれるまで離しません!」なんて腕にしがみつかれてしまった。
いい匂いと柔らかい胸の感触に耐えきれるはずもなく、観念して我妻と三人について詳しく話すことになってしまった。
この日以降、我妻にノロケられて鬱憤が溜まった日は乙葉さんに愚痴るという約束になった。ちなみに乙葉さんは昇降口キャットファイトの件も把握済みである。
「そうだ。我妻くんって、三人の女の子達とは今どうなってるの?最近夕日くんから聞かないから、少し気になっちゃって」
絶叫した後に固まってしまった我妻に、乙葉さんが問いかける。
「はっ…き、聞いてくれますか!?あいつらこの間まで俺にベッタリだったくせに、さっき三人そろって急に呼び出してきたと思ったら、彼氏ができたからもう今までのようには関わらないとか言ってきたんですよ!」
「そうだったんだ…それは辛かったね」
「そうなんですよ!天澤先輩はわかってくれて嬉しいです!木更津は薄情だからちっとも共感してくれなくて…」
「ん?ああ、違うわよ?私が辛かったって同情してるのは我妻くんじゃなくて、三人の女の子…特に、緒川ゆずなさんのこと」
「…は?」
呆気に取られた顔をする我妻。だから、なんでお前がそんな顔できるんだよ。
「だって考えてみて?昔からずっと好きだった人…それこそ恋のライバルと殴り合いの喧嘩をするぐらい、好きな相手から恋人に選んでもらえないどころか、傷付けあってるのをただ見られていただなんて本当にショックだったと思うの」
乙葉さんの言葉にうんうんと頷く俺と、ほうけた顔をして聞いてるんだか聞いてないんだかわからない我妻。
「多分だけど三人にできた彼氏さんって、日頃から我妻くんのことについて相談に乗ってあげてた人だったんじゃないかしら?ほら、よくドラマや漫画でもあるじゃない。男友達に彼氏に関する悩み打ち明けて『そんな最低な奴やめて俺にしとけよ』って展開」
弱ってる時に優しくされてキュンとなるやつか。
あれって創作物の中ではよく見るベタなパターンだけど、リアルでも起こるものなんだなと今回の件で実感した。
「たしかに三人は我妻くんのことは本気で好きだったかもしれないけど、いくら追っても応えてくれない人よりも、寄り添って支えてくれる人に惹かれるのは当たり前だよ。でも、ゆずなさんは苦渋の決断だったと思うな。小さい頃から好きだった男の子への想いを断ち切るということは、今までの自分が抱いていた長年の恋心も無かったことにするのも同然だもの。本当に辛かったと思う…」
悲しそうな表情で話す乙葉先輩。どんな表情でも俺の彼女は世界一可愛い。
しかし、我妻は一拍置いた後に手をブンブンと横に振った。
「いっ…いやいやいや!先輩に何がわかるんですか!?それってただの先輩の妄想ですよね?か、勝手にゆず達の気持ちを代弁しないでくれますかね〜!」
口ではそう言ってるが挙動不審で声も上ずってるし、明らかに虚勢を張ってやがる。
「いや〜、初対面で説教かましてくるとか、さすが木更津と付き合うだけあるなぁ!ちょっと胸がでかいだけで、あんまり調子に乗らないでもらいた」
「おい今なんつった?」
俺は迷いなく我妻の胸ぐらを掴んだ。
予期していなかったであろう俺の行動に我妻は目を白黒させる。
「俺の悪口はいくらでも言っていいよお前が俺を見下してるのは普段の言動から察せたしでも乙葉さんを悪く言うのは違うだろ乙葉さんは保育園の頃からぼっち気味だった俺を気にかけてくれたりいじめっ子から庇ってくれてた女神みたいに優しい人なんだよそんな優しい人だからお前みたいな三股狙いの節操なしクソサイコパス野郎にもわかりやすく女心の解説してくださってたんだろむしろ感謝しろよ低脳がてかお前乙葉さんのどこ見てんだよいやらしい目で人の彼女見やがってふざけんな変態野郎が殺すぞ殺すわ殺してやる」
「夕日くん!もういいって!」
言いたいことはまだ山程あったが、乙葉さんに止めに入られた。
「こんな時期にトラブルなんて起こしたら駄目よ!下手したら高等部に進学できなくなって、一緒の学校に通えなくなっちゃうわ!」
「それはやだ」
手をパッと離すと、我妻はへなへなとへたり込んだ。
それから数秒ほど放心状態だったが、意識が戻ってきたらしくいきなり勢いよく立ち上がった。
「…ふ、ふざけんなよ暴力陰キャ!お前なんかもう絶交だ!明日から二度と話しかけてやらねえからな!」
「それは願ったり叶ったりだ。今の発言絶対に忘れるなよ」
「うるせーよ!バーカ!!」
そう言い捨てて走り去っていった我妻。
あいつの発言通りなら、明日からは教室でも後藤君と会話ができそうで普通に嬉しい。
我妻の姿が完全に見えなくなったのを確認して、乙葉さんが俺に向き直る。
「なんだか小学生みたいな捨て台詞だったね」
「全国の小学生に失礼だよ」
「ふふ、たしかに。さっきは私のために怒ってくれてありがとう。嬉しかったわ」
「そりゃ大好きな彼女が侮辱されたらキレるのは当然だよ。本音を言えば最低でも十発くらい殴りたかったけど、乙葉さんの言う通りこの時期に内申点が減らされるのはキツいからさ。こちらこそ止めてくれてありがと」
「…夕日くんの、私のことを大切に思ってくれているところ、本当に大好き」
乙葉さんの直球な愛の言葉に、自分でもわかるくらい顔が真っ赤になるのを感じた。
「でも、クラスがずっと一緒だからってよく我妻くんの話に付き合ってあげてたね。私だったら少しずつ距離を置いちゃうけど、夕日くんって優しいね」
「いや…優しいとかじゃなくて、明らかに両思いの子がいるのに告白しないどころか、他の女子も侍らせるようになったヤバい奴が、どんな最後を迎えるか知りたかっただけだよ」
一夫多妻制を設けてる国の大金持ちとかならまだしも、現代日本にすむ一般の学生がハーレムを作ろうだなんて普通に考えれば不可能だとわかる。
それなのに、我妻はたしかにハーレムを目指そうとしていた。
そんなあいつのことを馬鹿とか浅はかとかではなく、一周回って面白そうだと思った。
それが、俺が今まで我妻から逃げずに話を聞いてやっていたシンプルな理由だ。
「俺は我妻の友達とかじゃなくて、たまに近況を聞くクラスメイトとしての立ち位置のつもりだったんだけど、我妻と仲良くしてた友人達が予想以上の速さであいつから離れてったのは計算外だったな…」
「三年生になってから休み時間や移動教室の時も我妻くんに付きまとわれてるって言ってたものね。たしかここ最近はお弁当も無理矢理に一緒だったんでしょ?お疲れ様」
乙葉さんが手を伸ばして俺の頭をよしよしと撫でてきた。照れ臭いけどそれよりも嬉しさの方が遥かに勝つ。
「そろそろ帰ろっか。あ、途中で本屋に寄ってもいいかな?」
「いいよ。俺も新しい問題集が欲しかったから」
中高一貫校とは言え、恋人と同じ高等部に通うためには気を抜いてはいけないからな。目指せ、乙葉さんとの幸せなハイスクールライフ。
俺はどこぞの誰かさんのように、複数の女子に目移りするなんて愚かな真似はしない。
たった一人の恋人を一生一途に愛する。
…そう思うと、反面教師的な意味では我妻との関わりは全く無駄ではなかったのかもしれない。
なんてことを考えながら、俺と乙葉さんは並んで帰路についた。
閲覧ありがとうございました。
このお話の三日後辺り、ぼっち状態に耐えきれなくなった我妻は普通に主人公に話しかけてきますが、彼は完全無視を決め込むと思います。絶交だと言われたので。




