最低の趣味
私には最低の趣味がある。
それは才能の欠片もない人間を見つけてこう言ってやることだ。
今回見つけた男の子もまた私の言葉を真に受けた。
「すごい! 本当にすごい! あなたみたいに努力が続く人は見たことがない!」
男の子は嬉々として努力をするようになる。
才能の欠片もないくせに。
「馬鹿丸出し」
冷ややかに陰で呟きながら、私は褒め続けてやる。
「やっぱり才能あるよ! あなたみたいな人は初めて見た! 勇気をもって! 必ずあなたなら成し遂げられるよ!」
どんな場所でも。
どんな時でも。
どんな状況だって。
「本当に馬鹿丸出し。この状況で努力するなんて」
この趣味。
本当に最低。
だからさ。
ろくな死に方しないだろうなって確信はしていた。
「さっさと逃げて。未来の勇者様」
泣き続ける男の子に私は言ってやる。
「はぁ? 馬鹿言ってんじゃないよ。確かにあなたは才能があるけれど、この苦境を乗り越えるには弱すぎるの」
突き飛ばす。
それなのに立ち上がって言う。
一緒に戦うんだって。
「あなたはこんなところで死んでいい人間じゃないの」
あぁ、私。
死ぬ間際でも趣味を楽しんでる。
本当に私は救えない人間だったなぁ。
何の才能もない男の子を強い意志で追い返し。
私は呼吸を一つして死に向かう。
「クズにはお似合いの末路ね」
そう呟きながら。
*
後年。
魔王退治を成し遂げた勇者は事あるごとに語っていた。
「勇気をもらった。とても偉大な人に」
それが誰を差すのかは誰も知らない。




