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田中ゆり子14歳(18禁)の創作活動  作者: 蒼碧


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21/25

完成

原案:蒼風雨静  作;碧銀魚

 更に5日後。

 ゆり子はこの間で、ペン入れ、ベタ・ホワイト入れ、トーン貼りを一気に終わらせた。

 心得があるとはいえ、一人で全ての工程をやったのは、生まれて初めてだったので、想像以上に消耗した。

 そんな時に限って、“仕事”がくるので、本当に辟易としたが、そちらも疎かにすることはできない。

 いつか、この“仕事”を辞める為、今歯を食い縛ってがんばるしかない……その一心で、原稿を仕上げた。

「……できた……」

 ゆり子がタブレットを前に、つぶやいたのは、5日目の夜だった。

 すぐさま、パソコンの電源を入れ、クリオリを立ち上げる。

『こんにちは、田中ゆり子さん。』

 今回の5日間は、時折クリオリを起動させて、線やトーンなどをチェックしてもらっていたので、久しぶりというわけではなかった。

 それでも、クリオリの機械的な挨拶が、いつもと違って聞こえた。

「こんにちは。ようやく、原稿が出来上がったんだけど、チェックしてもらっていい?」

『はい、お任せ下さい。』

 ゆり子はクリオリのアプリに、出来上がった原稿データを纏めて放り込んだ。

 待つこと、3秒。

『問題はありません。』

 クリオリの機械音声が、心なしかいつもより暖かく聞こえた。

「本当!?これで、世に出せる!?」

 ゆり子は前のめりになって言った。

『はい。内容は規制に引っかかるところはありませんし、いくつかあった線入れや、ベタ、トーン等のミスも全て完璧に修正されています。注意書きの誤字脱字も全て修正されています。』

「やったー!」

 未だかつてない達成感が、ゆり子を包み込んだ。

 これが、創作をやり遂げた者にしか味わえない、達成感。

 ここまで、途轍もなく苦しかったが、確かにこの達成感には代えられないものがある。

「じゃあ、これを漫画・イラストの投稿サイトに投稿してみる。どこがいいと思う?」

『推奨される投稿サイトを検索します。』

 クリオリはそう言うと、ローディング中になった。

 待つこと、3秒。

『これが、推奨されるサイトです。』

 20個ほどのサイトの名前が載った一覧が出てきた。

『その内、上位3つは、ユーザー数、収益化、治安面などから、特にお勧めです。』

「へぇ~、どれも覗いたことはあるなぁ。どれにしよう?」

 ゆり子はウキウキで、そのサイトを開いて見てみた。

 そこには、他の漫画家やイラストレーターが描いたものが、たくさん載っている。

 規制の関係で、テーマは似通ってしまっているが、それでも個々人の個性がよく出ている。

「やっぱり、あたしなんかより、上手い絵とか、面白い漫画は沢山あるなぁ。」

 ここ半月ほどは、ひたすら自分の漫画の制作に没頭し続けていたが、こうして外を見てみると、やはり感銘を受ける。

 だが、自分もそれを与える側に、これで立てるのだ。

 今回はたった10ページなので、本当に最初の1歩だが。

「どれくらいの人が見てくれるかな。」

『このような投稿サイトの場合、新人が最初から多数の閲覧を受けることはありません。ですが、地道に続きを投稿していき、また、同じ投稿作家や、ファンと交流を続けていけば、いつかは閲覧が増えていくと考えられます。』

 クリオリにしては珍しく、暖かい言葉をかけ続けてくれている。

「そうだよね。じゃあ、このサイトにしようかな。」

 ゆり子は、一覧のトップにあった、“素人漫画工房”というサイトをチョイスした。

『はい。素人漫画工房は、田中ゆり子さんと非常に相性がいいと推察されます。』

 クリオリには、そういった情報もインプットされているらしい。

「そうなの?どういうところが、あたしに合ってるの?」

 ゆり子が目をキラキラさせて尋ねる。

『はい。掲載されている作品に、田中ゆり子さんの作品と、シンクロ率90パーセント超えの作品が、512作品確認出来ます。このデータ一つをとっても、この作品を好むユーザーが多いと推定されます。』

「うんうん……ん?」

 ゆり子はちょっと引っかかった。

 “シンクロ率”。

「クリオリ、シンクロ率って、何?」

『創作物におけるシンクロ率とは、2つ、もしくは複数の作品における、諸要素の類似性、同性の比率を指します。』

「諸要素の類似性と同性……?」

『はい。創作物はストーリー、展開、絵柄、セリフなど、多くの要素で成り立っています。それらの要素の内、何パーセントが同じ、もしくは類似しているかを示しているのが、シンクロ率です。クリエイティブ・オリジナリティには、膨大な量の作品データと周辺データが蓄積されており、田中ゆり子さんの作品が、それらとどのくらいのシンクロ率があるか、即座に叩き出すことが出来ます。』

「ちょっと待って。」

 ゆり子の声質が、急激に冷たくなった。

『はい。』

「ということは、素人漫画工房には、これと9割以上内容や絵が同じ漫画が512作品も載ってるってこと?」

『はい。しかも、その内16作品は、シンクロ率が98パーセントを超えており、いずれも多くの閲覧数を誇っています。田中ゆり子さんの作品が、閲覧を集める可能性は高いと推察されます。』

「そんなに、似通った作品が多いの……?」

『はい。現在、漫画には多くの規制があり、それらを全て回避すると、どれも内容が似寄ります。これは、2060年現在の漫画作品、全てに共通して言えることです。』

「じゃあ、あたしが描いたものと、ほぼ同じものが、世の中にはいっぱいあるんだ。」

 一瞬、クリオリが黙った。

『……この規制が多い中で、シンクロ率上で2パーセントものオリジナリティが出せたのは、驚異と言えます。特に、このような漫画投稿サイトに掲載されている作品では、シンクロ率100パーセントも珍しくありません。』

「へぇ~……」

 ゆり子は静かにタブレットの電源を落とした。

「クリオリ。」

『はい。』

「あたし、漫画描くのやめるわ。」

 ゆり子はパソコンの電源を落とした。

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