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再び交わる僕らの思い  作者: ほっとけぇき
一章:途切れ行く流れ
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追憶に浸る 後 ≪せせらぎ視点≫

≪せせらぎ視点≫

 私は今、非常にいら立っている。原因は目の前の少年たちだ。光希君よりも一回りか二回り大きく、中には恰幅のいい子もいた。光希君が崖から落ちたのも、時々する怪我の原因はきっと彼らなのだろう。


 村に戻り、光希君の叔父を訪ねようと思い、村中を彷徨っていた。すると、いきなり石を投げられた。狙いは光希君だったみたいで、光希君をかばった。いったい誰が投げたのかを探していると、彼らが現れてこう言った。


 「やーい!!お化け野郎。外から来た女に守ってもらってよわっちーの!!あんたもこいつにかかわるのはやめたほうがいいぜ」

 「そうだそうだ!!こいつのせいでこいつの母ちゃん死んじまったんだぜ‼母ちゃんは惨めだな。お前なんて生まなければ、それなりに生きられただろうによぉ。だから、あんたも死にたくなかったらかかわるのはやめときな」


 この発言だけでも十分腹立たしいのだが、なによりも許せなかったのは彼女のことを惨めだと言ったことだ。彼女は光希君のことを心の底から愛していたように思う。短期間だけでも、それはよくわかる。


 光希君の方を見て見ると、目に涙を蓄えていた。それだけではなく、悔しさか怒りかはたまたその両方か、唇をかみしめて彼らを睨みつけていた。


 「ぼ、僕だって、か、母さんに……生きていて、欲しかった。ぼ、僕がいなけりゃ、よかった。って思ったこと……ある。けど、母さんに、生きてって、言われ、たんだ。だから、そ、そんなこと……言うな」

 「不気味なだけじゃなくて、こいつ泣き虫かよ。本当にお前、死んだほうがましじゃね。」


 生きようとして何が悪い。泣いて何が悪い。だって、この子はまだ生きていて精神的に未熟な子供だ。


 本当に彼らの神経が理解できなかった。死んだ方がまし?言っていいことと言ってはいけないことがあるだろう。これがはらわたが煮えくり返るというのだろうか、頭が怒りで支配されそうになる。


 「それは、あなたたちにも言えることではありませんか?」


 私はできるだけこの感情を表に出さないようにして言った。もっとまくし立ててもいいのかもしれない。だけど、なんとなくそれは違うと思った。


 「あなたは生まれたときから今のように喋れましたか?あなたは1度も泣いたことがなかったのですか?あなたは化け物と呼ばれたことはありますか?」

 「きっとどれもないでしょう。歩けば化け物と罵倒されたり、不吉なものだと嫌煙される。少しつたない喋り方で喋るだけで気味が悪いという。極めつけはそこにいるだけで存在を否定する。実に滑稽ですね。」


 彼らはあくまで自分たちが普通であると()()しているようだが、実際には彼らも異常なのだ。


 異常なものを徹底的に排除するというものは誰でも持っている感情だが、それを表に出す人間は一つ前提条件を忘れている。それは自分たちにも異常だったという時期、ものを持っていることだ。実に愚かしい。同時に哀れに思う。


 「な、何がだよ。」

 「自分よりも、いくつも年下の子供をよってたかっていじめて楽しいんですか?しかも、その子供は身寄りがないという。私からすればあなたたちの方が気味が悪い」

 「お、俺らは間違ってねぇもん。こいつが喋れないのが悪い。」

 「そ、そうだ。こいつがいると不幸しか呼ばないってみんな言ってたもん。だから、こいつは化け物なんだ。」


 みんなが言っていた。ある意味この言葉は非常に便利だ。自分がやったことを平気で他人に擦り付ける。これを醜いと言わなかったらなんと言う?


 「化け物を化け物って言ったら何がいけないの?そこにいるだけで害があるんだし。正直崖から落ちたときもとっとと死んじまえばよかったのに、なのになんで生きているんだよ」


 光希君を化け物と彼らは言うが、私には彼らの方が化け物のように思える。平気な顔して自分よりも弱い者を傷つけ、笑い話にする。そんなに化け物が見たいのなら見せてやろう。


 ヒュン!!


 ごく少量の水を指先に集め、針のようにして彼らに当たらないよう意識して彼らの後ろに放った。そしたら、全員座り込み、中には気絶しかけている者もいた。


 「化け物、ねぇ。化け物ってこういうことを指すんですよ」

 「ひ、ひぃ」

 「光希、行きましょう。」

 「う、うん。……ありがとう」


 指先に先ほどより多めの水を集め、今度は槍状にして彼らに向けながらそう言うと、彼らはそそくさと逃げ出した。そのすきに私は光希君の手を引いてその場を後にした。


 それからは光希君の義理の親と()()()()とお話をさせてもらって、光希君の叔父、光太郎とともに暮らすようになった。


 本当に束の間だったけどとても幸せで長く続いてほしいと思っていたそんな生活だった。でもこの残酷な世界はそれすらも許してくれない。


 「なんで、なんでなのですか。」

 「……すまんな。約束を守れなくて。頼むぜ、あいつのこと」

 「……っ!!なんで()()()もそんな風に頼むのですか!!生きようと足搔こうとも思わなかったのですか!!あの子を本当の意味でこれ以上孤独な思いをさせるつもりですか!!」

 「生きたかったよ。生きて見守りたかった。でもだめなんだ。俺みたいなやつがそばにいてもあいつは幸せになれない。」


 炎の海の中、悔し気に彼はそう語った。周りからは断末魔が聞こえる地獄絵図だった。光希君の安全を確保して、光太郎さんを探した。見つけたときにはすでに絶命の寸前だった。


 私は()()()間に合わない。どうしてなの。どうして生きることを諦めるの?私なら、あなたをまだ生きさせることができる。それなのにどうして。


 「お前に頼みたいことがある。」

 「何ですか。」

 「あいつから、俺との記憶を抹消してくれ。頼む……俺が記憶の中にいるときっとあいつ復讐のために動いちまう。でも復讐なんて何も生まないから。」


 彼は私に懇願した後、ひどく満たされたような顔をして息を引き取った。きっと、これ以上光希君の心の負担を増やしたくなかったのだろう。だから何だ、何なんだ!


 「光希君、本当に……ごめんなさい。」


 この日、私は人の記憶を隠すという咎を犯した。これは誰にも話さない、いや、気づかせてはならない。


 あれから、10年光希君も立派に成長した。時にはぶつかって、何日も口を利かなかったりして、それでも仲直りをする。そんな普通の日常を過ごしてきた。


 そんな日常が壊れるのはもう嫌だ。唐突な別れなんてもう二度と味わいたくない。


「面白い」「続きが読みたい」と思った人はブックマークを、「ここ、どうなってるの?」「こういう話書いてほしいという人」は感想を、どうぞよろしくお願いします。

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