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再び交わる僕らの思い  作者: ほっとけぇき
一章:途切れ行く流れ
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愛おしくて、生きていてほしいあなたのために《せせらぎ視点》

≪せせらぎ視点≫

 自分自身と目の前のカイエンに対する嫌悪感で頭の中がいっぱいだ。力があったくせに何も守れなかった自分自身と、黒木のように倫理観のかけらもないカイエンに対してひどく苛立ちを覚えた。


 今だって、光希君は力なく倒れている。出血多量のせいで肌は青白くなっている。でも、まだ彼の体からは温もりを感じることができる。まだ、彼は生きている。


 「なんと、その様子だと思い出されたようですね。貴女が()()な存在であることを‼ワタシの胸は歓喜でいっぱいだ‼」


 カイエンは私の様子を見て大いに歓喜しているようだ。でも、理解ができない。誰が一体、()()な存在だというのだ。


 力を持っていても、自分よりも力がない人間に守られていた存在が()()であるというのか。力を使うことができたのなら何1つ弔わずに済んだだろう。


 ざぁざぁと降り注ぐ雨は私の言葉に答えてくれない。雨たちはただ、私の心の悲しみに共鳴するばかりだ。段々と、強くなっていく。


 カイエンは強まる雨に体を震わせているようだ。それは肌寒いからではなく、歓喜しているからだろう。本当に狂ってる。こんな土砂降りの大雨の中、頬を赤らめながら悪魔のような笑い声をあげている。


 「あぁ、なんて強く美しい力なんだ。やはり、あなたの力は素晴らしい‼……さぁ、ワタシの手を取って、新世界をつくりに行きましょう‼きっと貴女とワタシが手を組めば理想の世界を創れる。その足掛かりとして手始めにあの小僧を殺しましょう。そうすれば、貴女の憂いもなくなるでしょう‼」

 

 私が何も言わないことをいいことに、この愚か者は私が考えに賛同しているのだと勘違いしている。彼は理想という名の幻想に捕らわれているのだろう。はたまた、みな自分の思い通りになるとでも思っているか。本当にばかばかしい。


 雨は、水は私の感情に共鳴する。ただでさえ、大雨だったのが今では視界も見えないくらいの豪雨である。この愚か者は私の逆鱗に触れたことという事実に気づかないまま興奮し続けている。


 「誰を、殺すと言ったの?もう1回言ってみなさい……」

 「だから、あの小僧を……ヴゥッ‼」


 雨は私の近くに集まり、私を覆うことができるほどの腕の形を成した。その腕は目の前の愚か者を締め上げた。私の彼に対する怒り、憎しみによって力は強くなっていく。


 締め上げられたカイエンは意味が分からないようだった。なぜこんなことをするのだとすがるような目をしている。

 

 やはり、こいつは異常だ。この世に存在してはならない類の者だ。自分では正常だと思っていてもどこか歪だ。そして、自分の価値観を受け入れてもらえないと暴力に訴える。それに屈するまで永遠に。


 後ろを振り返る。光希君の顔はどこか安らかで、幼さが残っている。まだ、彼は子供なんだということがよくわかる。彼の胸に手を当てると、小さいが鼓動が聞こえる。彼は生きようと抗っている。


 まだ、彼だけは生きている。私は彼に生きてほしい。生きて、生きて生き抜いてほしい。


 雨は少し弱まり、私たちに優しく触れる。雨は私の選択を歓迎しているようだった。


 「光希君、ごめんね。」


 私はそう言いながら彼をそっと抱きしめた。すると、彼の体は少しだけ温かくなった。そのあと、水で彼を守る膜を作る。これで、攻撃から彼を守れる。そのそばには水で作った動物たちをそばに置こう。彼が孤独を感じないように。


 私の最後の彼に送る祝福。


 「なぜ、その小僧に構うのです。どうせ、そのままほっといても死ぬというのに……理解できない。」


 水の腕に縛りあげられているカイエンが叫ぶ。きっと彼には永遠に理解できないだろう。だって、上部だけでしかそれを語って来なかったのだから。


 「貴方には分からないでしょうね。貴方は、ずっと……黒木だった頃から人の持つ性質しか見てこなかったのだから。」

 「な、なぜそれを……!!」

 「変わってないもの。残忍なその性質を人の良さそうな笑みで覆い隠そうとするところ……自分と自分の利となる人間以外切り捨てるところ。」


 私も人のことは言えない。あの時、自分だけが死ぬのが嫌で堪らなくて、村人全員を無差別に殺したもの。


 鏡、か。確かにい言えて妙だと思った。それでも私は彼とは大きく違う。


 「愛で、ご飯を食べれるわけでも、いい暮らしをできるわけではない。確かに、力こそがすべてというのも間違っていない。」


 力があったから私はこうやってここにいる。最初は忌々しいと思っていた水の力も、その力によって産み出された雨も私を常に守ってくれた。


 「なおのこと、なぜ……なぜ、ワタシを受け入れないのです!!愛はなんの価値もない。愛は人を弱くする。」


 確かに、愛はときどき私達に苦悩を与える。でも、それは愛の一面にしか過ぎない。


 「でも、愛は私に勇気をくれた。臆病者の私に茨の道でも歩み続ける勇気をくれた。自分の生に絶望して生きる気力をなくした私に希望をくれた。」


 私の脳裏には、叔母さんと遥の2人の姿が鮮明に写る。雨はいつの間にか止んでいた。雲の間からは光が降り注いでいる。2人のように暖かい光が私を照らす。


 「愛は私の心を満たしてくれた。愛は本当に悪いもの?そうじゃないでしょう」


 臆病で弱くて惨めな私でも、ここまで生きてくることができた。それだけでも十分証明になるだろう。


 目の前にいるカイエンは頭をかきむしりながら地団駄を踏んでいる。やはり理解できないのだろう。だからといって、憎い存在を愛するほど私は優しくない。


 光希君が眠っている方を振り返る。先ほどと比べ頬に赤みが戻っている。その姿を見るだけでまだ大丈夫だと希望が持てる。


 「あの子は、私にとって愛おしくて、生きててほしい。そんな存在なの。だから、あの子を殺そうとするのなら容赦しない。」


 カイエンは自分を拘束していた水の腕を引きちぎった。そして、ゆっくりとこちらに向かってくる。


 「そうですか、なら貴方は彼が化け物になっても愛することができるのですか?」


 カイエンは声を震わせながら言う。その声には彼の嘆きが籠ってる。彼は唾を吐き捨てるようにうわ言を喋りながらこちらに向かってくる。


 「できるわ。だって、私も化け物だもの。化け物同士お似合いじゃない?」


 でも、これ以上あの子に傷ついてほしくない。だからこそ、震える手を押さえ決心したのだ。


 「ねえ、そんなに一緒にいたいのなら一緒にいてあげるわ。」


 カイエンは自分の理念が通じたと思って、勝ち誇ったような顔をしている。でも、その顔もすぐ崩れ去る。


 「ただし、死後の世界でね」


 私の身体が水に変化し、カイエンに纏わりつく。必死に抜け出そうともがけばもがくほど絡み付いている。


 こうすれば、もう光希君がこいつに傷つけられることはない。でも、私は彼と一緒にいることはできない。

 

 それでもいい。あの子が幸せでいてくれるのなら、それでもいい。


 「あぁ、覚悟が鈍っちゃうじゃない」

 

 光希、お願いだからそんな泣きそうな顔をしないで。




 

 

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