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7、ルナントフ・ハイルトン

ルナントフのモノローグです。



 


 俺はハイルトン侯爵家次男のルナントフ。

 家は兄が継ぐため俺はまあまあ甘やかされて育ち、厳しく育てられた秀才の兄とは天と地の差がある。

 俺ははっきり言って頭がよくない・・・それは自分でもよくわかっている。

 学園の特進クラスに入れたのも、父が多額の寄付金を納め、学園長にも金を渡したからだ。



 

 そんな俺は前世の記憶がある。

 日本で生まれ育った、ごく普通の男だ。

 それなりに友人もいて、それなりに恋愛を経験し、それなりに勉強とバイトに励んだ。

 大学卒業後は製造業の会社で営業の仕事に就き、その取引先で出会った運命の女性、カナさんに一目惚れした。

 

 アイドルのような可愛い見た目も好みであったが、仕事に真摯に向き合う性格、落ち着きのある柔らかい声と話し方、一瞬で空気を浄化するような笑顔。


 この人の全てが好きだ。


 そう思った。

 それからはカナさんとの距離を縮めることに尽力した。


 仕事で何度か顔を合わせ、気さくに話せるようになって、もしかしたらいい感じになれるのでは?と思っていた矢先。


「恋人にプロポーズされたんです」

 頬をほんのり赤く染めて、照れくさそうに話す彼女。

「えっ・・・結婚するんですか?」

「はい!お互いの仕事の都合もあるので、式はまだまだ先になりそうですけど。あ、仕事は続けようと思っているので、これからもよろしくお願いします」


 結婚?

 何を言ってる?

 ふざけるな!

 あなたを一番愛しているのは俺なのに!

 俺以外の男と結婚するなんて、許さない!!


 それからの俺は、世で言うストーカーと化した。

 






 雨足が強い夜、いつものように待ち伏せをしていると、建物から出てきた彼女と目が合った。

 彼女は怯えた表情を浮かべ、走って逃げる。

 追いついたときには、地面にうつ伏せになりピクリとも動かない。


 息絶えているであろう彼女に想いをぶつけた。


「カ、カナさん、何でいつも俺から逃げるの?こんなにもあなたを愛しているのに!だから一人で逝かせないからね!俺も一緒に逝くよ!来世で結婚しよう!」


 俺はカナさんの後を追った。

 来世でカナさんに出会えることを願いながら。




 そして俺は転生した。




 前世を思い出したのは突然だった。

 学園の二年生になり、半年が過ぎた頃。

 朝、ベッドで目を覚ました瞬間、今まで経験したことのない激しい頭痛に襲われた。

 その間ずっと、一人の男の人生が頭に流れ込んでくる。

 痛みが消えとき、それは俺の前世だと理解した。


 前世の記憶を思い出したことで、もしかしてカナさんも転生しているのでは?と期待する。 

 興奮を抑えつつ、いつものように身支度を整え朝食をとり、学園に向かう。


 





 学園に着き教室に入ると、クラスメイトたちから挨拶を受けた。

「みんな、おはよう」と、笑顔を添えて返事をした。

 俺はクラスで結構人気がある。

 侯爵家の息子であり、整った顔立ち、愛想の良さ、それらは周囲には魅力的に映っているようだ。


 前世の記憶を思い出したところで、カナさんに会えないのなら、この人生はつまらないな・・・。


 そう思いながら教室を見渡すと、一人の女子生徒に目が釘付けになった。 

 クラスメイトと楽しそうに話をしており、笑った顔がカナさんを思い出させる。


 カナさん・・・?見た目は全く違えども、あれはカナさんだ!


 体の細胞全てがそう叫んでいる。


 彼女はオルドリー伯爵家のリフィア嬢だ。

 だが、カナさんで間違いない!


 前世の記憶を思い出したばかりの俺は、早速運命の人を見つけた。

 これまでそんなに話をしたことはなかったが、積極的に話しかけ交流を図る。

 リフィアは少し戸惑っているが、嫌そうではない。


 人見知りなのか?

 前世の記憶は・・・なさそうだな。


 戸惑いながらも、ちゃんと会話をしてくれるリフィアはとても愛らしく、思わず抱きしめたくなる。

 彼女の唇に視線が移る。

 その小さな唇にキスしたい。

 だがそんな欲望は抑え込み、まずは仲良くなることから始める。


 彼女は俺のものだ!

 そして彼女と結婚するんだ!

 

 


 その日のうちに、父にリフィアとの婚約を願い出た。

 幸いにも、リフィアには婚約者がいなかった。

 侯爵家からの婚約申し出を、伯爵家は断れないだろう。

 俺とリフィアの婚約は難なく決まった。


 前世での約束を、いや、正確には息絶えたカナさんに一方的に放ったセリフだが、これで結婚が実現する!

 

 その日の夜は興奮で眠れなかった。




 だが、彼女を手に入れたと浮かれていた俺の幸せは、半年ほどしか続かなかった。

 三年生になり、学園に宿敵が現れたのだ。


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