ロゼ
ずっとずっと、見えない何かに追い立てられるような獣生だった。
魔獣だから、他の獣より知性があった。なのに、闘争本能は他の獣よりすごく強くて。
いつも戦いに明け暮れる日々。そしてボクは強い個体だから、たくさんの獣を屠ってきた。そして相手の身体に残った魔力を全て吸い尽くし、大型犬の子犬並みの身体で凶悪な性能になっていった。
人里には降りなかったから、人を食べたことはなかったけれど。
そんなある日、突然魔法使いに隷属の魔法をかけられて人間に絶対服従にされた。魔法使いはボクより馬鹿みたいに強くて、為すすべもなかった。
「キュウ」
まあ、そんなわけで今のボクはご主人様の従順な可愛いペット。ロゼって名前ももらえた。ちなみに魔法使いの隠蔽魔法で、ボクは他人からはただの獣に見えるらしい。
ボクのご主人様はもちろんあの魔法使いじゃない。魔法使いがボクを与えたお姫様。ボクはご主人様を守れと命令されている。
でも、むしろ良い。すごく良い。
ご主人様は魔力の量がすごくて、なんでその幼さで魔力を制御できるのか意味わからないほどたくさん魔力を持ってる。
兄である王子様もすごい魔力量だけど、普通に超えてる。
「キュウキュウ!」
そんなだからご主人様からは魔力を食べ放題。ずっとずっと、いくら魔力を食べてもお腹いっぱいにならなかったボク。
だけどご主人様のそばにいれば、殺さなくてもお腹いっぱい。
そして、何故かご主人様の魔力を食べると闘争本能も抑えられる。それどころか、誰かに優しくしたいと思えるようになった。
今も、ご主人様とこうしてボール遊びで戯れるのがすごく楽しくて穏やかな時間が流れる。こんな気持ち、初めてだった。
そして、何故かそんなご主人様の魔力量や魔力の質は他の人に認識されていない。多分、魔法使いがなんか小細工してる。でも、その方がいいのかも?ご主人様は、目立つの好きじゃないらしいし。
「キュウ!…キュウ!」
「ふふ、ロゼ。ロゼも大好きだよ」
優しく撫でてくれるご主人様。ボクも大好きだよって、ほっぺにスリスリした。