『???』
「ねえ、なんで聖女に魔獣与えてんの」
「ん?人間には絶対服従にさせてあるから危険はないよ。そもそもあの子の魔力を食っていればやがて聖獣へと姿を変えるし」
「そうじゃねぇよ」
睨みつけられて肩をすくめる。
「だって、一人にさせるのは不安で。番犬は必要だろ」
「だとしても、王子は」
「ん?あの子の情操教育には良い相手だろ」
「バカジャネーノ」
バカにした口調ではっきりバカと言われる。お前に言われたくないんだけど。
「なんで」
「誰にも取られたくないんだろ」
「だから、ちゃんと公式に後見人になっただろ。勝手に縁談が決まることもないし、守ってあげられる。いざとなれば最悪、前と違って攫っちゃうし」
「そのまま人を近づけず共依存に持ち込めば良いだろ」
「あー、そういう」
まあ、わかる。
でも。
「人払いは必要ないかな」
「なんで」
「だって、僕はあの子を愛しているしあの子も僕を愛してる。僕があの子を一番に助けた時点で、既に共依存は成立している」
「うわ…そういう…」
「それならばむしろ、あの子の味方は作って情操教育もしておかないと。ただし濃い血縁の者か、同性か、獣だけだけど」
ものすごいジト目を向けられるが、それもこれも彼女のためだもの。今度こそ幸せにしてあげるんだ。
「もう間違えるなよ」
「うん」
「二度と奪われるなよ」
「…うん」
「もう泣かせるなよ」
「………うん」
反省してるし、後悔してる。もう、間違えない。絶対、幸せにするから。
「…じゃあ、おやすみ」
「お疲れ様」
「どっかの誰かのせいでマジ疲れたわ」
眠そうな姿を見て、さすがに労わる。
「誰かさんに染み付いた呪いの解除、少しずつ手伝ってくれてありがとう」
「俺の存在は、あの子以外にはバラすなよな」
「極力気をつけます」
「なあ、なんであんな男の呪いの解除なんてするんだ?」
「一応今回のあの子の父親だしね。早死にされると迷惑なんだよ」
そう言えば、納得したように頷かれた。
「ま、俺はあの子さえ良ければいいからお前に協力はしてやるけど。その分結果は出せよな」
「今度は幸せいっぱいに長生きさせるよ」
「そうしろ」
じゃあ今度こそおやすみー、と消えていく彼。
正直あの子への感情が僕くらい重いので、人型の存在だったら殺してたけど。
今回ばかりは、居てくれてよかった。