交流
「可愛い僕の妹さん。好きな食べ物はなんですか?」
「チョコレート」
「それはちょうど良かった。何か手土産にと思って、フォンダンショコラを用意したんです」
「あ、好きなやつ」
「ふふ、よかった」
見れば、ちょうど三個ある。
「一人一個」
「あ、僕の分は差し上げましょうか?」
「ううん、一緒」
そう言うと、魔法使いさんが魔法でお茶を用意してくれた。お皿も三つ。
「ほら、ね」
「…では、お言葉に甘えて」
みんなでお茶を飲む。
「美味しいお茶ですね」
「好きな女の子との思い出のお茶なんだ。花の香りがする芳しいお茶だよ」
「ん、これ私の好きなお茶」
「そうですか、僕も好きになりました」
「まあ、美味しいからね」
そしてフォンダンショコラを食べる。
「なかとろー」
「語彙力が溶けましたね」
「だって美味しい」
「ふふ、いいんだよお姫様。美味しいもんね」
「ね」
そんな私たちのやり取りに、お兄様はくすくす笑う。
「お二人とも、さっそく仲良しですね」
「うん?」
「ああ、うん。まあね。王子殿下だってそうでしょ」
「ええ、可愛い妹ですから大切にしないと」
「んー?」
よくわからない。けど、可愛い妹とか大切にしないととか…とても優しい人なのはわかる。
「お兄様」
「ん?」
「優しい」
「僕がですか?」
「うん」
お兄様はちょっと困った顔をする。
「そうでしょうか?」
「うん、好き」
「おや。僕も大好きですよ」
「ありがとう」
「僕の方が好きだけどね」
言い切った魔法使いさんに、お兄様はくすくす笑った。
「負けず嫌いですね」
「後見人として、負けてられない」
「おやおや。では、兄として負けていられませんね」
二人とも仲良しだなって、微笑ましかった。けど、割り込みしちゃう。
「私も魔法使いさんが好き」
「ふふ、嬉しいな」
「おやおや、大人気ない大人だ。ねえ?妹さん」
「ね?」
「おや。二人とも酷いな」
穏やかな時間が過ぎる。お兄様とは初対面だけど、お兄様も大好きになった。
魔法使いさんが、誰よりも一番好きだけどね。