お兄様
「魔法使いさん、どうして他の人に魔法使いさんが見えてるの?」
「それはね、お姫様。僕がお姫様の正式な後見人になったからだよ」
「後見人?」
「僕はそれなりにお金もあって、地位も実績もこの数日でしっかりと手に入れたからね。君のことを任せてもらえたよ」
「へー」
そんなもんか、と思う。
「魔法使いさん、そのたくさんの本は何?」
「お姫様に後見人が出来たからね。もうお姫様は放置してもらえないんだよ。だからたくさんお勉強しよう。今までしてきたことと大して変わらないけどね、覚える範囲が増えるだけで」
「ふーん」
お勉強は普通の子は嫌いらしいが、私は楽しいので好き。
「じゃあやろう、魔法使いさん」
「おや、やる気だね」
「魔法使いさんのお勉強は楽しい」
文字を書くのも言葉を話すのも、算数だってすごく楽しかった。
「ふふ、いいね。なら始めよう」
そしてお勉強が始まった。
朝からお勉強して、さっきまでたくさんのことを教えてもらった。楽しかった。今はというと、お昼ご飯の時間。
「魔法使いさん、ありがとう。楽しい」
「そう。よかった」
にっこり笑って頭を撫でてくれる魔法使いさん。
「お昼ご飯の後、お昼寝を挟んでから会わせたい人がいるんだ」
「うん、わかった」
「会ってくれるんだね」
「魔法使いさんの推薦なら大丈夫」
ということで、いつも通り二人でお昼ご飯を完食して二人でお昼寝をした。いつもと違うのは他の人に魔法使いさんが見えてることくらい。
起きたら会わせたい人とやらのためにおめかしして準備。
そして魔法使いさんから、その人が私の腹違いの兄だと教わった。
「…はじめまして」
「初めまして、僕はヴェルテュと申します。よろしくお願いしますね、妹さん」
妹さん、か。名前はやっぱり秘密みたい。
「えっと、お兄さん」
「お兄様って呼んでください」
「…お兄様?」
「うん、いい子」
お兄様はなんだか、とても穏やかな人だ。魔法使いさんの次くらい、私に優しい。