魔法使いさんの地位
「ねえ、魔法使いさん」
「なにかな」
「魔法使いさんはどのくらい偉いの?」
尋ねれば、魔法使いさんは笑った。
「すごく偉いよ。なんで?」
「だって、魔法使いさんが後見人になってからみんなすごく大人しくなったから」
「ああ、どの使用人たちも生意気だったもんね」
魔法使いさんがそう言ったら、みんなビクッとした。そんなに魔法使いさんが怖いんだ。
「でも、今はしっかり働いてるから執行猶予期間かな。このまま真面目に働けばいつかは許してあげるよ。ね?」
「ね?」
私たちの会話に、ほっとしたような複雑そうなメイドたち。
「でも、すごく偉いってどれくらい?」
「うーん。ただの雇われ魔法使いなのに、一番良い部屋を与えられたりとか」
「へえ」
「あと、大抵の使用人たちへの命令権もあるし」
「ふーん」
それってすごく偉い。
「そうそう。宮廷内もほぼ自由に行き来できて、色んなものの使用許可もあるよ」
「特別待遇」
「そうそう」
難しい言葉もちゃんと使えて偉いと頭を撫でられる。魔法使いさんに教えてもらったもん。ちゃんと覚えてるよ。
「しかし、お姫様はすごいね」
「なにが?」
「あんなに悲惨な状態だったのに、今では年相応の知識も手先の器用さもお行儀も身についてる。特に、お行儀はもう完璧だね」
「やったぁ」
「まあ、ここからはさらに年相応以上のものを身につけていかないといけないけど。スポンジみたいになんでも吸収してくれるから、教えるのは楽だな」
そう言って笑う魔法使いさん。私も、魔法使いさんに色々教えて貰うのはとても楽しいのでお勉強は苦じゃない。むしろ最高。
「でもまあ。そんなわけで僕は偉いからね。外出許可とかも平気で取れるわけ」
「うん?」
「少し、外にも一緒に遊びに行こうか」
「いいの?」
「人里離れた山でよければ。そこで、やってみたいことがあるんだ」
よくわからない。けど、魔法使いさんが言うなら良いことのはず。
「うん、じゃあやろう」
「ふふ、きっと楽しいよ」
なにをするんだろう。楽しみ。