3話 ぼやけた視線の先に
本日は2話投稿したよ
すでに太陽は沈み、入れ替わるように月が出てきた。
いつも見ている月だ。満月じゃなく中途半端なものだが。
そして夜になると同時に気温も徐々に下がっていった。
そのおかげが多少は楽になった。
体を冷やして熱を逃がす。
ただ、体中汗だらけだ。
ワイシャツなんて既に汗で濡れて汚れている。気持ち悪いなんてもんじゃない。
最悪な気分だった。
それに加え体の痛みも来るので限界だった。
特に足の痛みが酷く太ももやふくらはぎがパンパンになっていた。
だが、ここで歩みを止めてはいけない。
ほとんど暗くて何も見えない状態だが、月の光を頼りに進んでいく。
「はぁはぁはぁ………………あ〜クッソ。足が痛てぇそれに寒くなってきた。腹も減った喉も乾いた」
足の震えが止まらない。
疲れでプルプルしている。
足に力を入れようとするが力は入らずそのまま膝が砂に着く。
「あ……………ダメだ。もう力が…………」
そのまま流れるように仰向けに倒れた。
倒れたことにより自然と力が抜けていく。
「はぁ…………」
目を瞑ると眠気が襲ってくる。
このまま寝てはダメなのに。
だが、3大欲求には勝てずユウマは眠りに落ちてしまった。
…………………
………………………
…………………………………
優しく肌を撫でる風吹く。
その冷たい風がユウマを目覚めさせる。
「……………寒っ」
すぐに起き上がり周りを見渡す。
「夢とかだったらどれほど良かったか」
だが、所詮夢は夢。すぐ現実に戻る。
まだ日は出ておらず、月の光が輝いて辺りを照らす。今は午前3時、夜中だ。
体中にあった痛みは未だ残っている。
………それにしても。ユウマのワイシャツは少し凍っていた。
「うわぁ、ワイシャツが凍ってるよ。パキパキだ」
特に皺のところが固まっておりパキパキと音が鳴る。
砂漠の氷点下にいたからか初めてワイシャツが凍ったのを見た。
凄く硬いという訳では無いが熱を込めなければ凍ったワイシャツが解けない。
「寒いし、早く溶かしたいけど。それをする余裕はないんだよな」
ユウマはそう言いながら顔を上げる。
星々が夜空を彩っている。
ユウマが住んでいた街では決して見ることは出来なかったが、今こうして砂漠にいて見ることが出来る。
運が悪いのは確かだが、それでもこの夜空を見たことにより多少、気持ちに余裕が出てきた。
「…………っし!歩くか。腹や喉の乾きなんてもう今じゃほとんど意味ないしな」
ただ、腹が痛くて喉が擦れてるだけだ。
たったそれだけの事だ。
気にすることじゃない。
そしてユウマは月の沈む方向に歩き出した。
それから数時間が経過した頃ようやく月が沈み始めた。
それを見たユウマは1度は座る。
「日の出か」
太陽が出てくるのを待ちながら頭の中で整理する。
水も飲めず食べ物も食べれずそんな極限状態が数時間も続くとなれば頭も冴えてくる。
「まずはやはり、現状の位置を知る必要があるよな。現実か異世界。現実にして見てもラクダみたいな動物を1度も見ていない。かと言って化け物がいる訳でもない。………………やっぱり、街に行って人に会ってみないとわかんないな」
深く息をついてから立ち上がる。
陽の光が次第にユウマを照らす。
太陽の熱で段々と氷が溶けていく。
そしてそのまま真っ直ぐ歩き出した。
重たい足を動かし、慣れない砂漠崩れる足場に必死で食らいつく。
「はぁ………はぁはぁっ。クッソ昨日みたいな爆音がない。戦争が終わったのか?」
…………………………?
そこであることに気づくユウマ。
「あれ?………………戦争があったならなんで戦闘機を俺は1度も見なかったんだ?」
雲ひとつない空を見上げながらそんなことを呟く。
普通なら戦闘機や戦闘ヘリがあってもおかしくはない。
いや、寧ろなければいけないのだ。
だが、昨日は爆音だけしか聞こえていない。
「マジでわからん」
それからまた数時間が経過した。
歩いては休憩して歩いては休憩しての繰り返し。
すでにユウマの限界はとうに超えており、足は止まっていた。
「………………もう無理だ。…………限界」
気温は30℃を優に超え、ユウマは熱中症になっており、激しい目眩と頭痛でどうにかなりそうだった。
ドサッとその場に倒れる。
視界がぼやけていき、目を閉じそうになる。
必死に目を開けようとするが言うことを聞いてくれない。
が、微かに見えた。
何かが近づいてくる。
ただ、それが何かは全く分からずここまでかと悟ったユウマはそのまま意識を失った。
風が吹く中、動きを止める1つの影。
その先には倒れている少年がいた。
その影はじっと倒れている少年を見ていた。
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