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2.美形の海竜殿下に拾われました

 メリーウェザーはふっと目を覚ました。


 そしてハッとした。

「あれ? 目が覚めたって何? 私、海に沈められて死んだのでは?」


 慌ててメリーウェザーは周りを見回す。そこは見知らぬ部屋だった。

「部屋ってどういうこと? でも公営の病院ってわけでもなさそうだし?」

 それなりに贅沢に(しつら)えてある部屋なので、病院のような雰囲気ではなかった。


 メリーウェザーはかなり混乱した。

 そして、そういえばと気づいてパッと自分の手を確認した。

 海に落とされたとき、崖にしがみつこうとして肉がずる()けになったはず……。血まみれだったはずよ。


 指先には清潔な包帯が巻かれていた。

「あ、やっぱり。包帯が巻かれているということは怪我をしているってことよね。じゃあ、たぶん海に落とされたといういのは夢じゃないわね」

 しかし、どうも指の感覚が乏しいから、痛み止めの麻酔かなにか打ってあるのかもしれない。


 わざわざ傷の手当てをしてくれているということは、ここは天国ってわけではなさそう。


 海に落とされた。そして誰かが助けてくれた。

 いったい誰が? っていうか、あれだけ肺に水が入った状態で、よく私助かったな!?


 すると部屋を軽くノックする音が聞こえ、人が入ってきた。

「気が付いたか?」


 メリーウェザーは入ってきた人をばっと見た。そして目を見張った。


 その人はこの世のものとは思えないような美しい容姿の男性だった。すらりとした長身で髪は艶やかに肩に流れていた。着流した衣服は見かけないスタイルだったが、上等な布で作られていることは一目で分かった。きっとそれなりの身分であることが(うかが)える。

 しかし、メリーウェザーは強く違和感を感じたのだ。違和感の正体は、頭の上の二本の角。そして(ほお)(うろこ)がわずかに並んでいた。さらに背後には翼のようなものも(のぞ)いていた。


 ヒトではない。


 その男はメリーウェザーの戸惑いに気づいたようだった。

 男は戸惑いを押し流すように緩やかにほほ笑むと、

「私たちは海竜の一族だよ」

と柔らかい声で言った。


「か、海竜……」

 メリーウェザーは驚いた。聞いたことはあったけど実際会ったことはなかった。


 海竜の男は真面目な顔をした。

「ちょうど海を渡っているときに、岩に(くく)りつけられ沈んでいく君を見かけたというわけだ。自殺かい? それとも、何かの事件に巻き込まれた?」


「あ、自殺ではないです……」

 メリーウェザーは慌てて答えた。


 海竜の男は軽く(うなず)いた。

「そうだろうね。あんなふうに縄でがんじがらめだなんて。指に怪我があったのも何らかの抵抗の(あと)ではないかと思っていた。それなら助けられてよかったよ」


「ありがとうございます」


「ヒトの国に帰してやりたいが、自殺ではないとすると、帰ると都合が悪いことでもありそうだな」

 海竜の男は思案気に(つぶや)いた。


 メリーウェザーは大きく(うなず)く。

「あ、そうですね。あんまり堂々とは帰れません」


「……」

 海竜の男は続きを促すようにじっとメリーウェザーを見た。


 メリーウェザーは言う気はなかったが、何か言葉を発しなければならない気がして

「あ、婚約者が婚約を破棄?したかったみたいで、口封じに消されるところだったみたいデス」

と小声で言った。


 その途端、海竜の男が驚いた顔をしたので、メリーウェザーは、

「あ、やっぱ引いてます? 婚約者だった人ってちょっと偉い人なんで、そういうこと平気でできちゃうみたいなんですよね」

と慌てて言葉を付けたした。


 海竜の男はポカンとしている。

「婚約者が口封じに殺す? 全く理解ができないが……」


「ですよね~。あなたみたいな常識的な人が婚約者だったらよかったな~」

 メリーウェザーは自虐的に泣き笑いしてみせた。


 海竜の男は気の毒そうな顔をした。

「ずいぶんとひどい目にあったようだね。さぞつらかっただろう。しばらく私たちの国にいるか? 面倒はみてやる。帰る気になったら帰ればいい」


「え、いいんですか? ありがとうございます!」

 メリーウェザーは思わず声をあげた。

 この国にいさせてもらえるなんてとっても助かる! ちょっと今の状況でもとの国には帰りたくない!


「私はメリーウェザーと言います」

 メリーウェザーは名乗った。


「私はリカルドだ。海竜の一族の(おさ)をしている」

 海竜の男も名乗った。


 メリーウェザーは喉の奥で「リカルド殿下」と(つぶや)いた。


 リカルドは優しく言った。

「君は肺の水もまだ完全には出し切れていない。窒息状態が続いていたし、体は相当(いた)んでいる。その上、心までつらいとなると、不憫(ふびん)でならない。ゆっくり休みなさい。遠慮はいらないよ」


「優しいんですね。ありがとうございます」

 メリーウェザーはリカルドの言葉に心からほっとした。

 人間不信気味だった心が少し解きほぐされるような気がした。


 リカルドの方は成り行きで拾ったとはいえ、メリーウェザーが気の毒でならなかった。

「傷を癒してやれればいいんだが」


 そしてリカルドは、メリーウェザーがリカルドの邸で静養を続けられるよう、色々な手筈を整えてくれたのだった。



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