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かみとひと、わざくらべ

 女神の帰還。


 それを指し示すヒト。


 さながら神話である。


 この美しい光景はモチーフとなり、後世には絵画になって美術館に飾られる事になるだろう。


「後輩、随分と派手なご帰還ね」

「先輩、ただいま帰りました。お待たせしましたか?」


 お互い微笑みあっている。


「いいえ。待ってないわ。それにしてもとんでもない隠し球を持ってたのね」


 繭の事。女神の力の事。色々であろう。


「女神がくれたんですよ」

「やっぱり後輩も女神と繋がりがあったのね?」


 自分も女神と繋がりがある事を示唆する。


「そうですね。私のファン、第二号です。いや、正確にはゼロ号なのかな?」

「なによ、それ。女神をファンに抱えてたの?」


 流石のサリー・プライドでもそれは驚く。

 しかしもちろん表情は変わらない。サリーの表情を変えるのはジョージ・Pだけなのだ。


「ええ」

「そして、今や後輩が女神になった、と?」

「……女神の加護を持ってる先輩に勝つにはこうなるしかないかなって」

「発想が飛びすぎね。勝負に勝ちたいから、そうだ女神になろうって。なれるもんじゃないわよ?」

「いや、その辺りは色々と事情がありまして」


 ——本当に色々あったんです。

 と少々ゲンナリとしたセシリアが継いで言葉をこぼす。


「まあ、いいわ。そんな事情はサリー・プライドが蹴散らすもの」


 サリーはそんなセシリアの事情になど興味がないとばかりにフンッと鼻を鳴らす。


「そう来るだろうと女神も言ってました。ちなみに先輩の事象創造は私にはもう効きませんよ」

「そうでしょうね? でもサリー・プライドがスキルだけでここまでの価値を創造してきたと思って?」

「いいえ。女神は私が神になっても互角くらいだろうって言ってました」

「女神もわかってるじゃないの。それを素直に受け入れる物分かりがいい後輩が好きよ。さあ、これで条件は五分」

「はい」

「さぁ、仕合ましょう」


 微笑みが交差した直後。


 カミとヒトの拳が中央で激突した。


 ヒカリがはじける。それはまるで超新星爆発を目の前で見ているかのようなヒカリ。


 慈愛のヒカリ。

 象徴のヒカリ。


 観客はいまその二つがぶつかりから生まれるヒカリを目撃している。慈愛も象徴もどちらも神には必要な要素である。はじけたヒカリと同期して二人の肉体も中央から吹き飛ぶ。五メートルほどの距離をとって二人は軽やかに着地した。


「楽しいですね。先輩」

「ええ、そうね後輩。私たちは光り輝いているわね。でもこんなものじゃないでしょう?」

「はい! これで私の成長を見てください!」


 そう言ってセシリアが左拳からモリー・バレットを撃つ。拳を包むファン・ファンネルからメスの獅子が放たれ宙を駆ける。


 神になる前のセシリアが放つのは獅子の顔だけであったが今は違う。獅子そのものが放たれる。獅子の表情はとても穏やかでまるで相手にじゃれつこうとしている猫のように見えるが、それはとんでもない勘違いで、実態は神のエネルギーの塊であり、一般の人間が受ければチリも残らない高圧縮エネルギーである。


 それをセシリアは連発する。ジャブ一発ごとに数を増す雌獅子の群れが次々とサリーに襲いかかる。


 それを見てさすがのサリー・プライドも少し眉を寄せるが、すぐに神から授かった事象創造で自分の身体の価値を神と同等の価値へと作り上げ、向かいくる雌獅子の群れを一体ずつかき消していく。

 だが全てをかき消すことはできず、ここに来て初めてダメージを負うコトになった。


 かすり傷ではあるが、サリー・プライドが自らをサリー・プライドと定め、自らをサリー・プライドと自称するようになってから傷を負うのは初めての事であった。


「確かに成長ね、後輩。サリー・プライドに傷をつける事ができるようになるなんて」

「ふふ。先輩、傷だけじゃありません。私は敗北を与えられえる位に成長しているんですよ」

「それは流石に生意気よッ! ほら、足元がおろそかになっているわ!」


 サリーが指差した先。


 セシリアの足元が泥沼のように変化した。セシリアはそれに足をとられて体勢を崩す。


 女神と化したセシリア本人に対しては事象創造は無効だが、それを取り巻く世界自体には有効である。そこを上手くサリー・プライドは利用したのであった。


「そこ!」


 崩れた体勢によって顔がサリーの打撃ポイント丁度の位置まで下がった事を見てとったサリーは、一気に距離を詰めると、神聖を創造した拳を下からアッパー気味にしてセシリアに殴りかかる。


 超高速の拳がセシリアに襲い掛かる。


「かっ!」


 無防備になった正面部分のファン・ファンネルの層は薄く、神聖を帯びた拳はそれを容易く破り砕いて、拳は眼前に迫る。それをなんとか左腕でガードして直撃を避ける。

 左腕のファン・ファンネルは攻撃用に厚く展開されているため砕かれる事はなかったが、しかしその威力は強く、ガードした左腕ごと後ろに体を薙ぎ倒す勢いで振り抜かれる。

 受けた瞬間にそれを感じたセシリアは上体をねじり、拳をうまく逸らす事で後ろ倒しにされる事はなんとか避けたが、それでも地面スレスレまで体勢を崩された状態である。


 そしてのけ反った腹部に容赦なくサリーの横蹴りがキマる。すでに膝近くまで泥沼に埋まっている状態であり、腹部への衝撃エネルギーは慣性に吸収されず、ダイレクトに腹部へと吸い込まれる。


 反った上体が苦痛でくの字に折れた。


 そこをチャンスと見定めたサリーが追撃を打ち込むために横蹴りに使った左足で地面を踏みしめる。


 しかし踏みしめた先にはどっぷりとした沼。


 勢いよく降ろされた足は地面にふかぁく沈み込む。


 そこに投げかけられる声。


「先輩、足元がおろそかになってますよ」


 ハッとしてセシリアに視線を向けると、腹部の無傷をアピールしながら悪戯っぽく微笑む女神セシリアがいる。よく見れば腹部にはファン・ファンネル。横蹴りはそれでしっかりガードしており、それを利用してサリーの油断を誘ったのであった。

 人をハメて喜ぶなど今までのセシリアには考えられない。女神の性格が影響を及ぼしているのであろう。


「サリー・プライドの真似をするのは後輩の性なのかしらねッ!?」


 沈み込んだ片足を勢いよく引き抜くと地面となっている部分でドンっと足を踏み鳴らした。


「いえいえ、先輩の偉大な道を踏んで越えていくのが後輩ですよ。豊穣の地!」


 女神になって生まれた新たなスキル群から一つ選び使用した。


 一瞬で。


 サリー・プライドの展開した泥沼が美しく緑の生い茂る地面へと変化した。大地母神たる女神の得意とする能力である。

 先ほどまで膝近くまで沈んでいた足もいつの間にか地面の上に戻っているのであった。


 これでお互いに地面の上に立っている状態である。



お読みいただきありがとうございます。

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