ひかりとやみのあいどる
ゆっくりと歩く道の先に光が見える。
ライブに向かう道と同じようで全く違う。
これはバトルへの道。
その道をまっすぐ進んでいくとその先に待っているのは知っているようで知らない人間。元々同じアイドルグループに所属していた人間。自分の人格を否定してきた人間。自分を信じられなくなった原因。
そんな人間と今から対等に戦うのかと思うととてもおかしな気持ちになる。
でも。
もうセシリアはあの日のセシリアじゃない。
寒空の中何も出来ずに扉の外に投げ出されたセシリアじゃない。
ジョージ・Pが。
ママが。
サクラが。
三銃士が。
モリー・マッスルが。
何万人ものファンが。
いる。
今、セシリアは光の中にいる。
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暗い道が続く。
ここを進めば光の下へ出られるだろうかと進んでいる。
スポットライトの下から追い出されて以来。
ずっとずっと暗闇の中にいる。
光の下へ戻ろうともがけばもがくほど深い闇へ堕ちていく。
闇は次々と闇をよび、どんどんとその深度を増した。
組織と契約してからも何度かスポットライトの下に立った。
でも違う。
あれはきっとブラックライトでできたスポットライトだ。
でもそれも今日でおしまい。
ルージュを闇に落とした女に復讐した後に、あの気に入らないキラキラした女優をやる。
それだけでまたあのスポットライトの下に戻れる。
憎むべきセシリア・ローズを。
責任をとらないくそ社長を。
やる気のない左と右を。
無駄に喋るだけの組織の男を。
全員見返してやる。
今、ルージュは闇の中にいる。
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両選手の入場の最中。
準決勝第一試合の興奮冷めやらぬ実況席では、マイカ・エムシーと解説おじさんの両名がテンション高く、お茶の間に向けて二人の解説をしている。
あのサリー・プライドほどではないが、第二試合も注目のカードである。
「さあ! 準決勝二回戦! 元同門対決! はじまりますねえ!」
同門対決。
この言葉に心おどらない人間は多分性格のいい人間だ。
同じグループで仲が良い二人を戦わせるなんて。
同じグループで助け合ってきたアイドル同士を戦わせるなんて。
ひどい。
違う。
仲なんていいわけないだろう。
同じグループで足の引っ張り合いをしてきた二人を戦わせるなんて。
同じグループで潰し合いをしてきたアイドル同士を戦わせるなんて。
素晴らしい。
正解だ。
これは救済だ。
陰でやりあってきた。今回でいえばルージュが一方的にやってきた関係だが。それに決着をつけさせるのだ。
「すでにトワイライトというグループは存在していませんが、この二人は元々そのグループに所属していました。当時は圧倒的にルージュ・エメリー選手が人気でしたが、現在では泣かず飛ばず。逆に人気のなかったセシリア・ローズ選手は移籍後に飛ぶ鳥落とす勢いでここまで駆け上がっております」
対照的な二人。
光り輝いていたルージュは闇に。
陰に沈んでいたセシリアは光に。
ネガとポジが入れ替わった二人。
「アイドルとしての人気では圧倒的にセシリア選手有利という事ですかねえ?」
「そうですね。しかし今回はバトルです。先ほどの一戦を思い出したくない皆さまも多いでしょうから詳細は伏せますが、ルージュ選手は強いです。元々強かったのか、アイドルバトルに出るために強くなったのか不明ですが、あの力を上回るのは容易ではないでしょう」
クィーン・マスクは応急処置を受けた後、病院へと運び込まれた。腕を失った事実を受け止められず、精神錯乱状態に追い込まれ、鎮静剤で眠っているというカンペが差し込まれたが、解説おじさんはあえてそれを読む事はなかった。
「そうですねえ。あれは本当にトラウマ級でした。画面の先の皆様のショックを最小限に抑えられたのは不幸中の幸いと言えますう。あわせて、クィーン・マスク選手の一刻も早い回復をスタッフ一同願っております」
痛ましい表情でしめる。
「ええ、そうですね。さて試合の話に戻ります。セシリア・ローズ選手ですが、一回戦が不戦勝となっているため、バトルの実力が未知数となっております」
これもルージュ戦の余波である。泣き喚いたナイ・カポネも今は落ち着いて控室でスースーと寝息を立てているようだ。ギャングの一人娘として甘やかされて育った結果、年齢から少し幼い精神性となっているようだった。
その結果。
セシリアは無傷で一回戦を終え、万全の状態でルージュ戦に臨んでいる。
これが幸か不幸かは試合が終わるまではわからないだろう。
「私の知っている限りですとバトルの能力があったという記憶はありませんので、現時点ではセシリア選手が不利だと考えざるを得ませんねえ」
「おおむね、私もその判断ですが、ルージュ選手も元はバトルなど無縁な選手でしたからね。セシリア選手にも何かの力があると考えております!」
さすが解説おじさん。
ご明察である。
「解説と実況の判断はこうなっておりますが! バトルはミズモノ! どう転ぶかはわかりません!」
「そうですね。さあ、そうこうしている間に選手両名の入場が終わりました。向かい合って今バトルがスタートします!」
画面はアリーナ中央で因縁の二人が睨み合っている画に切り替わった。
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