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わたしはじまんのあいどるになれていますか?

 モリー・マッスルへのお詫びの品にある程度の目処をつけたジョージ・Pは手帳からセシリアのステータス画面へと視線を戻した。


—————————————————————

名前:セシリア・ローズ

職業:アイドル

ウェポン:ファンサ(+35917)

スキル:布教、なれ果てからの喝采、ファンファンネル

SING:★ ★ ★ ☆ ☆

DANCE:★ ★ ★ ☆ ☆

BEAUTY:★ ★ ★ ★ ☆

BATTLE:★ ★ ★

自己肯定:HALF &  HALF

—————————————————————


「それにしても、他も結構大きく変わってますね」


 一つ一つ指差し確認するように、画面上の項目を指で触っていく。


「そうなんです。BATTLEって項目が増えたし、自己肯定が変化しました。星が増えてるのはそれによってですかね?」

「そうですね。過去も自己肯定の変化と星の変化が同期しているのは確認済みですし。あとは……ファン数の増加は想定内って感じですかね?」

「個人的には会った事もないファンが増えるっていうのは想定外ですが……」


 いまだに布教の効果に納得がいってないセシリア。

 頑固ちゃんである。


「それ普通のことですよ。それがアイドルです。ライブをやりライブは配信される。それを見てファンが増える。セシリアさんは特別にそれが数値で見えるだけです。ここの数値はファンサの能力で増えたファンしかカウントされないと仮定すると実際のファンはこの数を大幅に超えていると俺は想定してますよ。オーディン自慢のアイドルのファンがこんなに少ないわけがないでしょう」


 自慢のアイドル。

 その言葉にセシリアの表情が曇った。


「……私は……自慢のアイドルになれていますか?」


 組んだ手に視線が落ちる。


「もちろんでしょう? 今までのセシリアさんの道を見て自慢できない所を探す方が難しいですよ」


 言葉には真実味がある。

 所属一年に満たないアイドルが成してきたこの道を見て自慢できない道理がない。


「みなさんがいっぱい誉めてくれるんです。可愛い、かっこいい、ダンスすごい、筋肉キレてるよ、歌うまいって色々誉めてくれるんです。それでもまだ私は否定されていた自分が、否定していた自分が、誉められるに値する人間なのかどうか半信半疑なんです」


 そう言ったきりうつむくセシリア。


 そんな姿を見てジョージはふうとため息をついたかと思うと急にガバッと距離を詰める。


「セシリアさん!」

「ふぁい!」


 そしてその距離感でセシリアの手を取った。

 その行動にセシリアは悲鳴じみた返事で答える。


「俺は貴女を信じてます! セシリアさんも俺を信じてくれていますね!?」


 唐突な質問。


「も、もちろんです! ジョージ・Pを信じて行動してきたから今の私があるんですよ! 信じてるに決まってるじゃないですか!」

「俺は当初半信半疑でした!」

「なんと!?」


 そのカミングアウトいま要ります? 顔なセシリア。


 だが驚きの言葉だけで、それ以降口は挟まない。


 ジョージ・Pであれば、その言葉には何か理由があり、この言葉には何か続きがあるだろうと。


 信用しているのである。


「俺のアイドルウェポンは一年で貴女をアイドルバトル優勝に導けると囁きました。でも俺はその時自分の才能を信じられませんでした。散々この才能には振り回されてきましたから。何かの間違いだと思ったんです。つまり俺は俺自身も貴女も両方信じられていなかったんです」


 すみません。と頭を下げる。


「ま、まあそれは当然だと思います。私も一年でアイドルバトルに行けるなんて初めは信じてませんでした。でもジョージ・Pの事は信じてたから指示通り行動したんですよ」


 それほどにジョージ・Pに対してセシリアは恩義を感じていた。


「そう! 貴女は俺を信じてくれた!」

「は、はい」


 胸の前で合わされた両手を包むようにジョージ・Pの大きくて暖かい手がかぶさっている。

 その距離感でのジョージ・Pの勢いに照れるよりもたじろいでしまうセシリア。


「俺を信じて行動し、必ず結果を残してくれた。だからこそ今は俺は自分のアイドルウェポンの囁きを信じられている。一年で貴女がアイドルバトルで優勝すると信じられている」

「あ、ありがとうございます?」

「すみません、ちょっと感情が昂ってしまって支離滅裂になってます……」


 一旦、囚われていた手を解き、テーブルの上の水さしからコップへ注ぎ、ジョージ・Pに差し出す。


「落ち着いて、水飲みます?」

「いただきます」


 受け取った水を一口ふくみ、精神安定剤を嚥下するかのように喉を鳴らす。


 ふうと息を吐き、言葉を続ける。


「で、何を言いたいかっていうとですね。俺はセシリアさんを信じてるし、セシリアさんも俺を信じてくれているって事ですよ」

「そうですね。私は私を拾ってここまで導いてくれたジョージ・Pを無条件に信用してます。これは何があっても揺るがないですね」


 ビジネス的であるが。

 相思相愛の状態である。

 ビジネス的である。


「じゃあ、セシリアさんがセシリアさんのアイドル性を疑う理由なくないですか?」

「なぜに?」


 わかっていない。


「俺はセシリアさんが今回のアイドルバトルで優勝できる素晴らしいアイドルだと信じている」

「はい」


 首肯。


「セシリアさんはそんな俺を無条件に信用している」

「はい。……あ」


 首肯。


 からの気づき。


 ジョージ・Pの言いたい事に気づいたセシリアを見て。

 ね? という表情で微笑むジョージ・P。


 二人はしばらく無言で見つめ合う。


 ジョージ・Pの論破顔。


 セシリアはなんとかそれを否定しようと論理の穴を探すが、完全に手詰まりになっている事に気づいていないほどセシリアは愚かではない。

 つまりこの思案はあくまで自分を納得させるための作業にしかならない。


 結果。


「そんなの……ずるいです」


 子供じみた捨て台詞をはく、セシリアの表情には、はにかみと少しの自信が浮かんでいた。

お読みいただきありがとうございます。

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