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かんかくでいきてるからでーたはしらん

評価いただけてとてもうれしいです。

 案内されて中に入ったセシリアは更衣室で持参してきたトレーニングウェアに着替えさせてもらった。


 見慣れたジャージ姿である。


 身体のラインがはっきりとわかる。


 以前にもましてボディラインがくっきりとしているようだ。


 今はその姿で顧客面談用であろうブースに通され、クルーズロードのインテリアショップにおいてありそうな座りごごちの良い椅子に所在なさげに座っている。それを苦笑いで見ているモリーはこれまたおしゃれなガラステーブルを挟んだ向かいに座っている。


 ジム内は椅子やテーブルだけではなく全てが洗練されたインテリアで統一されており、クルーズロードのキラキラ成分を浴びている時同様にセシリアの心は高揚し、ついついジム内をキョロキョロと見回してしまうのだった。


「何か珍しいものでもあったかい?」

「いえ! キョロキョロ見回しちゃってごめんなさい。外から見ても綺麗でしたけど、中から見るとさらに綺麗でおしゃれだなあと思ってついつい見ちゃいました」


 彷徨う視線をモリーに戻す。


「お、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。ただ、お世辞を言っても判断に手心はくわえないよ?」


 そうは言いつつもまんざらではない様子のモリーに対してセシリアは続ける。


「いや、お世辞じゃないですよ。クルーズロードにあるホテルのロビーと言っても違和感ないです」


 お世辞ではなく実際この面談用のブースは広々としており、置いてある調度品も全て一流、三つ星ホテルのロビーと比べても遜色のない雰囲気を醸成している。


「そうかいそうかい。そう言ってくれると嬉しいね。ここはさ、クルーズロード近辺に住んでるセレブ相手のジムとして開いてるからね。洗練されたインテリアにこだわったんだよ。おれもさ、自分のこの見た目とは違ってこういうおしゃれな感じが好きでね。よく似合わないって揶揄われたりするんだけど……」

「そんな事ないですよ! モリーさんの凛々しい見た目とこのすっきりしたインテリアに統一感があってとっても似合ってます! からかう人は見る目がないんだと思います」


 身を乗り出してモリーとその城を褒めちぎる。


「もう! おやめ! 照れるじゃないか! 全く……嬢ちゃんは見た目によらず随分と人懐っこいんだね」


 真剣なセシリアの眼差しに耐えかねて降参するようにモリーは両手を上げる。


「それ! モリーさんと一緒で私もよく言われるんですよ! どうにもぱっと見近づきにくいみたいで……そのせいか、ちょっと前まで悪役令嬢アイドルみたいなわけのわからない事やらされてたんです」

「悪役令嬢アイドルってなんだい」


 笑い声混じりのモリー。

 声からセシリアに対して心が開いているがわかる。


「わけわからないですよねえ。おかげでグループをクビになっちゃいましたけど」


 大袈裟にため息をついて首を横に振り下を向いたセシリア。


「詳しい事はわからないけど、なんだか大変そうだね」


 それを真剣に心配するモリー。

 しかし心配ご無用である。


「はい。なかなかに大変でした。でも今は新しいプロダクションに拾ってもらえて、アイドルバトルにも出場できる目処もたってますから結果オーライです」


 そう言いながら悪戯っぽく顔を上げてにんまりと笑う。

 その顔からセシリアの冗談だと判断してモリーは安心した。


「なるほどね、今が良いなら何よりだよ。おれも昔は大きな失敗をしたけど、今はこうやってジム経営で成功してるからね」

「ですね」


 お互いにそう言って笑い合った。


「よっし。人となりは大体わかったし、いっちょ本題に入ろうか」


 柏手一つ打って雰囲気を切り替える。


「ぜひお願いします!」


 セシリアもそれにあわせてテーブルに手をついて深く頭を下げる。


「まず嬢ちゃんの持ってるスキルを教えてくれるかい? ああ、全部じゃなくて良いよ。答えられる奴、戦闘に使えそうなやつだけで良い」


 チェックシートが挟んである手元のバインダーに目を落としながらモリーが言う。


「戦闘系のスキル。と言っていいかわかりませんが、身体強化系のスキルがひとつあります」


 言わずとしれた『なれ果てからの喝采』である。


「ひとつかい。それだけだとやっぱり厳しいね。倍率はわかるかい?」


 口を尖らせながらペンを回す。


「む。……はかった事がないので、わからないです」

「強化箇所は?」


 なんとかアイドルバトルで勝利していく方法を探るために、その手がかりを探ろうとするモリー。


「それはわかります! 全部強化されます!」

「ぜんぶ?」

「はい!」


 セシリアはやっと自分の答える事のできる内容がきたとばかりにはっきりと答えるセシリアの声。

 反面、モリーの声は冴えない。というかおかしな事言ってんなこいつ感がある。


「ぜんぶって……何を持って全部なんだい? 身体には色々あるんだよ? 腕力とか跳躍力とかスタミナとか……それぜんぶって言ってるのかい?」

「はい……たぶん、ですけど? これもどこが強化されてるか調べた事なくって……」


 ツッコまれた途端に精彩を欠く。

 アイドル部分を磨く事に余念がなかった分、戦闘をおざなりにしてきたツケが一気に回ってきている。


「……はぁ。これはなかなか大変そうだ。女神もとんでもない娘を紹介してくるもんだよ。神託下ろすならもう少し詳細まで欲しかったよ。セシリアがいかに可愛いかの情報はいらないんだよ」

「が! 女神はそんな変な事言ってたんですか?」

「ああ、神託を無視してたらずっとだよ。女神があんなだと思わなかった」


 神託を思い出してゲンナリした顔をしている。

 その言葉にふとセシリアは女神の言葉を思い出していた。


「そういえば、モリーさんは女神と面識はないんですか?」

「……? そりゃないよ。むしろ女神と面識ある人間なんているのかい?」


 伝手があるとか言ってた女神の言葉はなんだったんだろう。

 セシリアは首をかしげた。


 言葉の真意であるが、正直女神からすれば自分の信徒は全て伝手があると思っている状態であり、この街の人間の九十五割は伝手がある状態という認識になるのである。


 つまりは100%であり。


 つまりは大雑把な女神のせいである。


「面識のある人間……は、いない……でしょうねえ」


 自分は面識があるとは言えずに言葉を濁したセシリア。


「ま、いいさ。のっかっちまったからにはおれにやる事はやるよ! こっちきな!」


 モリーの男前な言葉に従う事が今の最善である。

お読みいただきありがとうございます。

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