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彼女が死んだ屋根裏で

作者: 総督琉

 私は今でも、あの日のことが思い出せないでいる。


 はるの日、三年生となった。

 あたらしい一年生が入ってきて、俺たちはどんな後輩が来るのかとワクワクしていた。


 ーーなあ、お前もそうだっただろ。


 たくさんの生徒に囲まれて、始業式からお前はたくさんのラブレターを貰っていたが、全部断っていたよな。

 にっこり笑うお前の笑顔に、誰もが目を奪われた。


 ーー殺されるまでは。


 さすがに怒りが隠せなかったよ。


 れーれー はくはく れー


「たいせつな人だったんだよ、お前は。誰よりも輝いているお前が、俺は好きだった。だからーー」




 ●○●○●○●○●○●



 制服を着た青年は、屋根裏に作られた小さな墓にお参りをしていた。


 二礼二拍手一礼

 備えられていた花を新しいものへと変え、水を変え、二十センチほどの墓石を丁寧に洗っていた。

 その墓へ来る者は彼一人。彼だけが、彼女の死を弔うことができる唯一の存在。


 青年は使われなくなった旧校舎の屋根裏を後にし、屋上へ向かった。


 事件が起きてから一年が経った。

 未だに彼女を殺した人物の特定には至っていない。それどころか、彼女の死体すらも見つかっていない。

 警察は全力で捜査に当たっているが、凶器でさえ見つかっていない。


「安らかに眠れ」


 青年は事件の日のことを鮮明に覚えている。


 青年は思い出していた。

 彼女を使われなくなった旧校舎へ呼び出し、告白をした。返答は「ごめんなさい。あなたとは一緒にいれません」だった。

 青年は思った。どうして一緒にいれないのかと。


 だから青年は握った。

 だから青年は振るった。

 そして青年は終わらせた。


 青年は屋根裏に空洞を見つけ、そこに彼女の墓を作った。


「安心して。君は、俺だけのものだから」


 欠かさずお墓参りをする。

 欠かさずお前に手紙を書く。

 欠かさずお前に会いに行くよ。


「だから、これで一緒にいれるな」

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