彼女が死んだ屋根裏で
私は今でも、あの日のことが思い出せないでいる。
はるの日、三年生となった。
あたらしい一年生が入ってきて、俺たちはどんな後輩が来るのかとワクワクしていた。
ーーなあ、お前もそうだっただろ。
たくさんの生徒に囲まれて、始業式からお前はたくさんのラブレターを貰っていたが、全部断っていたよな。
にっこり笑うお前の笑顔に、誰もが目を奪われた。
ーー殺されるまでは。
さすがに怒りが隠せなかったよ。
れーれー はくはく れー
「たいせつな人だったんだよ、お前は。誰よりも輝いているお前が、俺は好きだった。だからーー」
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制服を着た青年は、屋根裏に作られた小さな墓にお参りをしていた。
二礼二拍手一礼
備えられていた花を新しいものへと変え、水を変え、二十センチほどの墓石を丁寧に洗っていた。
その墓へ来る者は彼一人。彼だけが、彼女の死を弔うことができる唯一の存在。
青年は使われなくなった旧校舎の屋根裏を後にし、屋上へ向かった。
事件が起きてから一年が経った。
未だに彼女を殺した人物の特定には至っていない。それどころか、彼女の死体すらも見つかっていない。
警察は全力で捜査に当たっているが、凶器でさえ見つかっていない。
「安らかに眠れ」
青年は事件の日のことを鮮明に覚えている。
青年は思い出していた。
彼女を使われなくなった旧校舎へ呼び出し、告白をした。返答は「ごめんなさい。あなたとは一緒にいれません」だった。
青年は思った。どうして一緒にいれないのかと。
だから青年は握った。
だから青年は振るった。
そして青年は終わらせた。
青年は屋根裏に空洞を見つけ、そこに彼女の墓を作った。
「安心して。君は、俺だけのものだから」
欠かさずお墓参りをする。
欠かさずお前に手紙を書く。
欠かさずお前に会いに行くよ。
「だから、これで一緒にいれるな」