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王子様なんかじゃない!!  作者: 木野ダック
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1.プロローグ

読みづらい点が多いかと思いますが、ご指導ご鞭撻の元、お読みいただければ嬉しいです!

「花竹さん!付き合ってください……!」

登校して一番、下駄箱から上履きを取り出そうとしたところで告白された。

顔真っ赤で、ぎゅっと握りしめている拳を見ればそれだけで、どれだけ勇気を振り絞ったのかがよく分かる。

分かるけど……、ごめんなさい。私はそれよりも、この白昼堂々行われた告白による好奇の視線とか、その後の事とかが気になっちゃって。とても貴方の告白を真摯に受け止める状態ではないのです。

本当にごめんなさい、心よりお詫び申し上げます、名前も存じぬ貴方様。

ていうか、それ、本当は私宛じゃ無いよね?

なんて声は心に置いて。

「ごめんなさい!」

思いっきり頭を下げて一礼し、そのまま上履きも履かずに逃げ去った。

一刻も早くこの場から立ち去りたい。ぞろぞろ集まっていたギャラリーを掻き分けて、上履き片手に一目散で教室に逃げ入った。

はぁはぁ……。最近、ちょっと多くない?

息を切らしながら、上履き履いてとぼとぼ自席に向かう。やっと一息。そんな時、すかさず横から声が飛ぶ。

「おはよー、ひめり!今日も朝からモテモテだねぇ」

「あ、私も見ちゃった〜。山田先輩、地味にかっこいい感じなのに、何で断っちゃったの〜?」

「それ!私も思った!サッカー部だし、先輩だし、良くない?」

やっぱり、見られてたか。

座る私を取り囲むように、正面左右と固める3人の女子達。まるで逃がさないぞと言うかのように。けれど、彼女達に悪気はない。高校入学もまだ数ヶ月、名目友達、実質知り合い程度の彼女達は話題に飢えている。だから、こんな格好のネタが転がり込めばそりゃ食い付くし、盛り上げる。ただ、それだけ。それだけで、私がこの会話に忌避感を覚えているなんて考えもしないのだ。


高校へ入学して約二ヶ月。私は既に8回も告白をされている。単純計算で週一の告白。決して自慢ではない。

その証拠に、私は特段美人な訳でも優れたスタイルや才能がある訳でもない。よく、自覚なしで実はって言うのがあるけれど、私の場合は正真正銘、自他共に認める平凡、普通、偏差値50。

それではそんな一介の女子高生が、どうしてこんなにもモテてしまったのか。 

それは、登校初日にまで遡る。


入学式を終えた翌日、いよいよ今日から高校生活が本格的に始まるって日に、私は緊張しすぎてうっかり鞄を丸ごと忘れてしまった。徒歩通学のお陰で、教室に着くまで一切気が付かなくて、唯一スカートのポッケに入ってたスマホで大学生の姉に連絡した。

校門の外まで持って来てって。

この校門の外って言うところが肝心で、何回も念を押しに押しまくった筈なんだけど、親切な姉はそれを遠慮ととったようで、気を利かせてわざわざ教室まで持ってきた。本来ならここは、素直に感謝の気持ちを抱くべき。けれど私は、そんな気持ちなど僅かにも感じることができなかったのだ。

何故ならそれは、姉がモデルだから。詳しくいえば、特に女子高生〜女子大生にファン層が厚いファッション誌の専属モデルだから。

つまり、女子高生って、もろターゲット層にぶち当たってる訳で、変装も無しに教室まで来ちゃったら騒ぎになるに決まってるじゃん。ずぼらで自由奔放な姉が変装なんて面倒な事する筈ないの分かってるから、何度も言ったんじゃん。

「校門の前で絶対まっててね!」って。

それからというもの、学校中、大騒ぎに大混乱。その日は、先輩から同級生、とにかく知らない人達にもみくちゃにされ続け、命からがら何とか逃げ帰ったのは覚えてる。

そして、翌日。ここから私の悪夢は始まった。


下校しようと下駄箱で靴に履き替えてた、そんな時。私は、人生初の告白をされたのだった。

「ひめりちゃん、付き合わない?」

人生初、男子からの名前呼び。名前すら知らない、外見チャラ男。チャラ男先輩。

でもなんかちょっとかっこいい雰囲気あるかも?ほら、髪の毛だって染めてて、大人っぽいし。身長もまぁまぁ高めだし。何かちょっとドキドキしてきたかも?

なんて、うぶな乙女心開いちゃって、真剣に告白受け止めて返事した。

「えっと……まだよく知らないので。お友達から、なんてどうでしょうか?」

赤面モジモジ、照れ屋全開で、人見知りなのに割と勇気出して言ったもんだ。

そんな言葉にチャラ男先輩も、しっかり返してくれた。

「勿論!むしろその方が良いかも。これからよろしくね!」

清々しいほどの爽やかさ。ちょっとこの人いいんじゃない?

なんてほんの少し惹かれそうになったこの瞬間が、恐らくピークだった。

「宜しくお願いします……!」

私の期待値ゲージ及び嬉しさゲージ、MAXに到達。これからようやく私もリアルな青春に足を踏み入れるんだ!

胸に溢れんばかりの期待を抱き、未来に眩い光が差したところでチャラ男先輩の爆弾投下が始まった。

「じゃあさ、早速今日、ひめりちゃん家行ってもいい?」

え?家?早くない?

そんな気持ちで第一波。

いやいや、でもさ、高校生だし。家の往来くらい大した事じゃないんじゃない?ほら、勉強会とか言って家呼ぶのとかよく見るし。漫画の貸し借りで呼んだりさ。(アニメで)

「はい。大丈夫です!」

「やった〜〜……あ、ちなみにさ今日お姉さんってお家いる?」

ん?何故、姉?

物凄く嫌な感じの黒いものが胸に吹き込んで第二波。

「えーっと、いないと思うけど」

「あーー……そうなんだ。そっかーー……うーん……あ、やべ!そういえば俺、今日バイトだったの忘れてたわ。ごめん、遊ぶの今度で!」

仕上げの第三波だった。

申し訳なさそうな顔で手を合わせるチャラ男先輩。私は淡々と返事した。

「全然大丈夫ですよ」

多分笑ってすらなかったと思う。

私の胸はどんどんと黒い影に包まれていって、平静を装うのが精一杯だった。

「ごめんね〜。ちなみに、お姉さんっていつならいるの?折角ひめりちゃんとお友達になったんだし、俺、会ってみたいな。なんて」

笑顔のチャラ男。もう先輩とすらつけたくないこの男。ふざけてるのか?

もう私の胸は黒い感情が吹き出す寸前で。イライラモヤモヤするこの全てを目に宿し、チャラ男を睨みつけた。

『馬鹿にすんな!このチリ毛三流顔面野郎!そんな嘘くさい芝居で言葉で騙されるとでも思ってんのか!』

って言いたかった。言いたいけど、実際に言える勇気も度胸も持ち合わせてはいなかった。だからせめてもの矜持で口を開く。

「……姉、面食いなので」 

そして、チャラ男の顔を見る事もなく、私は全速力でその場を逃げ去った。

全ての黒いものを学校へと置き去るように、運動会かってくらい全速力で疾走した。

私なんか見てなかったんだ。お姉ちゃんとの繋がりが欲しかっただけなんだ。初めてされる告白だったのに。馬鹿みたいに浮かれちゃって、ドキドキなんかしちゃってさ。

もう、最悪最悪最悪最悪ーー!

こうして家で癒しを得て、心を浄化し、翌日からの学校。昨日のチャラ男を皮切りに、モデルの姉との繋がり欲しさに私に言い寄る輩が増えていった、と言う訳だ。

とまぁ、これが告白されまくりのモテモテ女子高生の裏側である。


とはいえ、流石に学習した私だ。増えた告白に対しては、きっぱり「ごめんなさい」と断るようにしていた。上級生であれ、ちょっとイケメンでも何でも、とにかくきっぱりすっぱり断るようにしたのである。

正直、切り捨てる覚悟さえ決めてさえいれば、周囲の目がとても痛いけど、他にも色々痛いけど、チャラ男の時ほどのショックも手間もあるわけではなかった。まぁ、いずれ減るだろうし、慣れれば大したことないかなってそんな風にさえ思ってた。

ところがそうではなかった。甘かった。

切り捨てると決めてる告白なんかより、もっと辛い苦行が待っていた。

それは、ガールズトーク。クラスメイトのちょっと仲良い子からあんまり話した事がない子まで、とにかく女子がワラワラ集まって、色恋話に花を咲かせるアレだった。

告白による周囲の目が毒のように徐々にHPを削るものだとしたら、このガールズトークは直接攻撃、必殺技で私のHPを無遠慮にガツガツと削っていくのだ。

『今日の人いい感じじゃない?』『何で断っちゃったの?』『勿体無い』『恋に恋してるんじゃなくてさ』『試しに付き合ってみれば』

『てかさ、もしかしてひめりって、王子様とか運命の出会いとか憧れちゃってる感じ?』

「へへ……そんなわけないじゃん〜」

自分が汚れていく。

罪悪感で胸が握りつぶされそうだった。

ただの一言、そうだよって言えばいいだけなのに、弱い私はそれが出来ない。保身故に大切なものを誤魔化すその度に、私はどんどん瀕死に近づいて、一体何のための保身なんだろって考える。ボロボロの状態では見たくないものが見えそうで、それでも信じていたいものの為、私は残り少ないHPを携えて、ダッシュで家へ帰るのだ。

向かうは自室、片手にはスマホ、お気に入りのビーズクッションに埋もれつつ、私は愛しの人に会いに行くーー


「また来たのか。しかし残念だな?生憎、貴様に割く時間は持ち合わせていない」

来たーー!金髪碧眼の超絶イケメンドS王子!!エクエス様!!今日も今日とて流石の突き放し具合!あっ、でも、『残念だな?』ってちょっと飴ですか?傷心の私を細やかに癒してくださってるんですか?

スマホアプリ型乙女ゲーム『ラブラブ恋する王子様〜あなたと始まる運命の恋〜』(通称・ラブ恋)その中に登場する、エクエス様。私史上最高の推しであり。最愛の御方だ。

所作、物言い、ヴィジュアル。どれについても私の胸を高鳴らせ、その一つ一つがいちいち私の胸を射止めてくるものだから、私の心はもうすっかりどっぷりエクエス様に心酔しきっている。

このゲーム、他にも攻略対象が6名程いるのだが、エクエス様に一筋な私はただ彼のルートのみをやり続け、既に8周以上もエクエス様との時間を積み重ねている。

とにかく、私はこうやって、愛しのエクエス様に癒されてHPを回復する事で、何とか学校生活をやり遂げる、そんな日々を送っていた。

そんな不安定な均衡で過ごしてた、ある日のこと。

私は彼女に出会った。


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