1. あいつが、くる
「嘘だろおおおおおおおおおお⁈」
広々とした一軒家に男子高校生の若々しい絶叫が響きわたる。
「ふふ、嘘じゃないわ。」
対して男子高校生の目の前で微笑む婦人には全く動じている様子がない。
「むり、絶対無理、てか、え、ちょ、ま、は?嘘だよな?流石にそういうタチの悪い冗談は良くないと思う。」
男子高校生の目が白黒白黒。脳内処理が追いつかないのだろう、口はうっすらと微笑み眉根は吊り上がっている。頑張れ大脳。手はウロウロと虚空を掻き、筋肉が震える。
「だから嘘じゃないわよ〜、こないだ篠川さんが仕事で久々にこっちきてたからお茶したのよー、そしたら怜くんにはこっちの高校に行かせようと思ってて、ここら辺で住めるとこ探してるって言うから私の家に来てもらうことにしたのよ。丁度お父さんも単身赴任でいないし、部屋も空きがあるじゃない。」
男子高校生の母親だろうか、加齢の様子は見受けられるものの天使のように可愛らしい婦人は花でも飛びそうな様子でふんわりと笑っている。
「そういう問題じゃない!」
「ふふ、怜くんきっと凄くかっこよくなってるわよー」
「話を聞けーーーー!」
その日高級住宅街とまでは行かないが、立地の良い閑静ない住宅街に建つ広々としたある一軒家。その中はあるニュースによっててんやわんやの大騒ぎとなっていた。いや、主にその家の住人、欄杜理央がその脳に大混乱を引き起こしていた。
それもその筈だろう、なんせ未だ引きずる因縁を持つ幼馴染が、英語がペラッペラの国際人となって帰ってくる。しかも自分の家に住むと今さっき聞かされたのだから。
先程絶叫を響かせた声の主、欄杜理央には小さな頃特別仲の良かった幼なじみがいた。
篠川 怜、幼馴染の名である。
怜の家とは家どうしが狭い住宅路を挟んで向かい合っており、更に同じ保育園に通っていたということもあって家族ぐるみで仲良くしていた。お互い一人っ子で歳も同じだったことから常に二人一緒にいて、理央何をするにも怜についていった。
怜はとても綺麗な子供だった。頸の部分を少し刈り上げた爽やかなショートカット、艶やかな黒髪に透けるように白い肌。強気な漆黒の瞳ニカっと笑うと少しだけ覗く八重歯。
ただ、その分周りからはとても浮く子供だった。
更に、何より、性格に難があった。物凄く。怜は、超弩級の俺様だったのだ。自分が一番、自分が絶対、愚民共は自分の言うことを素直に聞いておけばいいし、自分に指図するやつは大人であろうと許さない。そしてなまじ運動神経がいいだけにタチが悪かった、喧嘩に負けることはまず無いし、すぐ人にちょっかいをかけた。
怜は常にそんなふうだった故当然孤立、幾ら喧嘩が強いと言っても同級生殆どを敵に回せばいじめに発展するのも時間の問題…という流れだったのだ、理央が現れるまでは。
怜はお嬢様お坊ちゃま幼稚園に通っていたのだが、そこへ年中さんに上がるとき転入してきたのが理央だった。
理央は転入して、
速攻虐めの対象となった。
本当に。
俊速で。
小さい頃の理央は、天使のように可愛いらしい子供だった。ぱっちりと開く栗色の瞳は柔らかく濃い睫毛に覆われて、ほんのりと色づく桃色の頬にはくるくると跳ねるふわっふわの髪の毛が掛かっていた。また言葉の発達が遅く、あー、とか、うー、とか赤ちゃん言葉も多々混じる話し方をするため、同級生からとんでもなくナメられる羽目となった。
そして、そのいじめのせいで、理央が暴君怜の従僕となる運命が決してしまったのである…
「嘘だろおおおおおおおおおお⁈」
広々とした一軒家に男子高校生の若々しい絶叫が響きわたる。
「ふふ、嘘じゃないわ。」
対して男子高校生の目の前で微笑む婦人には全く動じている様子がない。
「むり、絶対無理、てか、え、ちょ、ま、は?嘘だよな?流石にそういうタチの悪い冗談は良くないと思う。」
男子高校生の目が白黒白黒。脳内処理が追いつかないのだろう、口はうっすらと微笑み眉根は吊り上がっている。頑張れ大脳。手はウロウロと虚空を掻き、筋肉が震える。
「だから嘘じゃないわよ〜、こないだ篠川さんが仕事で久々にこっちきてたからお茶したのよー、そしたら怜くんにはこっちの高校に行かせようと思ってて、ここら辺で住めるとこ探してるって言うから私の家に来てもらうことにしたのよ。丁度お父さんも単身赴任でいないし、部屋も空きがあるじゃない。」
男子高校生の母親だろうか、加齢の様子は見受けられるものの天使のように可愛らしい婦人は花でも飛びそうな様子でふんわりと笑っている。
「そういう問題じゃない!」
「ふふ、怜くんきっと凄くかっこよくなってるわよー」
「話を聞けーーーー!」
その日高級住宅街とまでは行かないが、立地の良い閑静ない住宅街に建つ広々としたある一軒家。その中はあるニュースによっててんやわんやの大騒ぎとなっていた。いや、主にその家の住人、欄杜理央がその脳に大混乱を引き起こしていた。
それもその筈だろう、なんせ未だ引きずる因縁を持つ幼馴染が、英語がペラッペラの国際人となって帰ってくる。しかも自分の家に住むと今さっき聞かされたのだから。
先程絶叫を響かせた声の主、欄杜理央には小さな頃特別仲の良かった幼なじみがいた。
篠川 怜、幼馴染の名である。
怜の家とは家どうしが狭い住宅路を挟んで向かい合っており、更に同じ保育園に通っていたということもあって家族ぐるみで仲良くしていた。お互い一人っ子で歳も同じだったことから常に二人一緒にいて、理央何をするにも怜についていった。
怜はとても綺麗な子供だった。頸の部分を少し刈り上げた爽やかなショートカット、艶やかな黒髪に透けるように白い肌。強気な漆黒の瞳ニカっと笑うと少しだけ覗く八重歯。
ただ、その分周りからはとても浮く子供だった。
更に、何より、性格に難があった。物凄く。怜は、超弩級の俺様だったのだ。自分が一番、自分が絶対、愚民共は自分の言うことを素直に聞いておけばいいし、自分に指図するやつは大人であろうと許さない。そしてなまじ運動神経がいいだけにタチが悪かった、喧嘩に負けることはまず無いし、すぐ人にちょっかいをかけた。
怜は常にそんなふうだった故当然孤立、幾ら喧嘩が強いと言っても同級生殆どを敵に回せばいじめに発展するのも時間の問題…という流れだったのだ、理央が現れるまでは。
怜はお嬢様お坊ちゃま幼稚園に通っていたのだが、そこへ年中さんに上がるとき転入してきたのが理央だった。
理央は転入して、
速攻虐めの対象となった。
本当に。
俊速で。
小さい頃の理央は、天使のように可愛いらしい子供だった。ぱっちりと開く栗色の瞳は柔らかく濃い睫毛に覆われて、ほんのりと色づく桃色の頬にはくるくると跳ねるふわっふわの髪の毛が掛かっていた。また言葉の発達が遅く、あー、とか、うー、とか赤ちゃん言葉も多々混じる話し方をするため、同級生からとんでもなくナメられる羽目となった。
そして、そのいじめのせいで、理央が暴君怜の従僕となる運命が決してしまったのである…