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義を尽くす

「はぁ、全く.......。神仕えに瘴気を押し付けるなんて良い度胸だな。あの堕神」

私は慧が去った境内で、ゆったりと月を眺めていた。白玉のような月光。どんな時でも私達を優しく照らしてくれる。それから一度目を逸らすと、自分でも驚く程眉間に皺が寄って行くのが分かる。

さっきの慧の豹変ぶりの半分は瘴気に当てられたものだ。力を付けている。との報告は全く持って本当。妹と並ぶ程の実力者が当てられた。以前は引き受けたが故の負傷であったが、今回は話しただけでこの有様。本当に手強い相手になった。

帰ってきた慧の姿を思い起こす。常に清らかさに意識を向けた気配が、澱んでいた。燃やした呪符のように、黒く。問いただして見ると、今まで背けてきた妹への劣等感が、瘴気に当てられて無視出来ない程増大しているようだった。まぁ纏っていたものは会話に含めた言霊で祓い落としたが。

「でもね、お前が妹と並ぶ程強いのは、言葉で話すより実践で理解した方が良い。それは私だけの判断じゃない。そうでしょう? 三狐神(さぐじ)様」

「あぁ。昔から気にしてたからな。慧は」

振り向くと銀の君。光を浴びて昼間とは違った輝きを放っていた。吊り上がった両目は憂いを帯びたような仄暗い光を放つ。それに対し、私は物静かに笑った。

「神に仕えるもので最も大事なものは、道徳であり倫理だ。人を思いやり、敬意を払う。あの子はそれが本当に良く出来ている。だから私達の力を受け入れる基盤が出来ているし、遮られる事も無い」

妹に匹敵する霊気。それは自らの力だけでなく、私達の力が巡り易い事にある。循環した力を何かに遮られることも無く放出できる。それがあの子の強さの由来だ。

人には人の長所がある。妹は自家生産可能な能力。慧は私達の力を上手く扱う能力。生み出し方が違えど、敵を殲滅する事にかけてなんの差はない。

「明日の儀、私も付き合うよ。あの子がまた瘴気が当てられないように」

私は僅かに口角を上げる。明日、より強い加護を兄に与えよう。

見捨てられないんですよ。この御二方。

自分のことを大切に思ってくれるから、絶対邪険に出来ないんですよ。

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