吐露
境内に戻って、まず穢れた呪符を焚きあげる。篝火の中に落とすと、橙の焔が一瞬黒く変色した。今の僕の気持ちと同じだ。穢らわしくて見てられない。でもだからこそ感情だけに押し留めなくてはならない。これ以上、淀みや穢れを持ち込みたくはない。出来うる限り清潔に。がモットーである。
その後、境内に入って御神体である鏡の前に正座する。旅館の女将の如く深く頭を垂れると、飛梅様の気配を感じた。ゆっくりと面を上げると何時もと同じ穏やかな顔。
「お帰り、慧。どうしたんだった?」
「堕神がとうとう力を付け始めました。早い対処が必要かと」
目を合わせたくない。こんな状態で会って良い訳が無い。だからまた頭を下げる。感情を悟られないように。悪霊風情に感情を掻き乱され、冷静な判断が出来ていない状態で、神様に会うなんて.......自分の流儀に反する。三狐神様の件といい、どうにも上手くいかない。
「そうか.......。慧、悩み事はないかい?」
やはり.......気が付かれていた。神様とは人の願い事を聞くため、思いには非常に敏感である。だから言葉に出さなかったとしても、そう言った心の動きには聡い。抑えて.......いたんだけどなぁ。
僕は気が付くと、ぽつり、ぽつりと弱音を吐露していた。抑えきれなかったのかも知れない。
「飛梅様..............。僕は..............まだ半人前のようです.......。力も弱い。何時も妹や飛梅様、三狐神様に守られて、本当に情けない」
最早愚痴である。言ったって、何も解決しない。それでも飛梅様は膝を折り、目線を合わせてくれる。目は何処までも優しい。過去に祟り神として世を呪っていたとは思えない程に。それから諭すように問う。
「慧、嫉妬しているのかい?」
弱みを見せない人が弱みを見せた時って、もう既に限界超えてる事が多いです。
自分を騙し騙し取り持っているので、その抑えが効かなくなった時にドッカンします。※今の慧です。
飛梅様、三狐神様いなかったら闇堕ちしてただろうな.............。




