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実際はお守りの方が効果があるそうです。
(神様の力の一部を切り取っているため)
でも、この子の思いと、飛梅様の念ってお守りに匹敵するんじゃないかなぁと。
目を擦る私に対し、彼は目を大きく見開いた。
「ところで、御朱印集めってなさってますか?」
「いえ。集めてはいないのです」
御朱印を貰うと縁が紡がれる気分になる。それは大変喜ばしい事だ。しかし、一度結んだが故に、もう馴染みの神社へは訪れないような気がしてしまう。せっかく結んで下さった縁を蔑ろにしたくない。何度でも、幾度でも貴方に会って挨拶したい。だから御朱印集めはしていない。
私が否定すると、少し待っていて下さいと彼は席を外した。社務所から戻ってきた彼の手には赤い帳簿のような物。
「では此方を。御朱印帳です」
ハードカバーのような分厚い表裏。男性の掌サイズの表紙には『御朱印帳』と記載されている。
彼はそれを私の方に向けると、そっとその丈夫な表面を撫でた。慈しむように、花に触れるように。
「貴方は幾度となくこの周辺の社に来て下さった。だからその紡がれた縁が貴方をきっと守って下さる。並のお守りよりも、ずっと.......ね」
そう言って右目をぱちりと閉ざした。実は結構お茶目なのかも知れない。
彼から御朱印帳を受け取ると、胸に抱え込んだ。優しい。余りにも優しい空気。夢の中の澱んだ空気まで一掃してくれるような、そんな気配。
私はいそいそと財布を取り出した。この間のお礼もまだ済んでいないのだ。お金だけは絶対に払わないと。
「嬉しいです。では早速戴きます。お代は幾らでしょうか?」
彼は驚いたように目を見開いた。代金を支払われるとは思っていなかったらしい。
「この間のお礼もまだなんです。お金を払わせて下さい。他になにか恩返しが出来ますか?」
「ではまた頻繁に此処に足を運んで戴きたい。そうすればきっと喜ばれる」
彼は聖母のように笑ってお代を受け取った。
ようやく投稿出来ました。
これから先もサブタイトル3というのはそうそう無いと思います。
(同じ場所で長く書くことが出来ない人間.............)