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「こんにちは」
「あ、この間の。本当にお世話になりました」
現れたのは鬱蒼とした神社の前で会った、あの男性。女のように柔和な顔と、モデルのようにほっそりとした体付きは変わっていない。変わっていた事と言えば、纏っていた衣装。白衣と空色の袴。どうやら神職の方だったらしい。
今の間抜け顔見られてないかな.......。そう内心汗ばみながら一礼する私に対し、彼はすぅっと目を細めた。
「ええ。よくいらして下さるので、巷で噂になっているんですよ」
「..............」
恥ずかしい。じゃあ、此処の空気が好きで、肺いっぱいに溜め込むために大口開けて歩いていた事もバレているとか.....................。話を変えよう。
私は明後日の方向を見ながら、一つ質問を投げ掛けた。
「そんなに有名人なんですか..............?」
「ええ。とりわけ周辺の方々からは」
彼は切れ長な目を殊更細めて微笑んだ。その様はやはり、女性が微笑んでいるように見える。この間助けて下さった事も含め、優しさが顔から滲み出ている。
と言うか、周辺の方々って仰いましたよね? そんな恥ずかしい顔を周りの人達皆知ってるって事ですよね? その想いが顔に出て、思わず唇が真一文字に引き結ぶ。
彼は世間話でもするようにこう質問した。
「今日はお参りに?」
「それもあるんですけど、最近夢見が悪くて.......。一種の神頼みって奴ですね」
あれからずっと同じ夢。鬱蒼とした森、朽ちた社、そしてそこで彷徨い続ける。出口は、ない。全てはあの日から始まった。幽霊は怖くて信じたくないけれど、心霊現象にはお祓い、神頼み。というわけで今日も馴染みの神社にお参りをしに来たという訳だ。
幾度となくご許可を貰いに言ったら、流石にしつこいと思われました(;・∀・)
(「もう分かったから、大丈夫!」という感触.......)
今度は報告抜きで、感謝の気持ちを伝えたいです。