5.鑑定
朝起きてから副団長のウォーカーさんに案内され騎士団の食堂へ行き、騎士の皆さんと朝食を一緒に食べ、以前鏡を貸してくれた女性の騎士さん、ナタリー=ベイカーさんに着替えるのを手伝ってもらった。
「エマちゃんは本当に可愛いね。ああ〜、私にも妹がいたらこんな感じなのかな。ていうかエマちゃんを妹にしたい!」
「ふふっ、ありがとうございます、ベイカーさん」
「『ナタリー』でいいよ。いや…『ナタリーお姉ちゃん』って呼んで!」
「でも「お願いっ」」
何かデジャブを感じる…
「…分かりました、…ナタリーお姉ちゃん」
「可愛いっ」
そう言ってナタリーお姉ちゃんは楽しげに私の髪を可愛く編んでくれた。
「(コンコン)」
「はい」
「準備はもうできたか?」
「ああ団長ですか。ええ、できましたよ。可愛すぎて気絶しないでくださいよ」
「失礼する」
クロスさんが部屋に入ってきて目の前で立ち止まった。
「………」
クロスさんは何も言わずじっと見つめている。何か喋ってくださいよ…恥ずかしい///
「……い」
えっ
「可愛いな(ニコッ)」
うわー!目が、目がぁー!クロスさんの満面の笑みは朝からはきついよ〜
「うわー!可愛いねエマちゃん!その菫色のワンピース、本当に似合っているよ」
奥からウォーカーさんも入ってきた
「ありがとうございます!今から魔術師団本部に向かうんですよね」
「ああ、ここから馬で十数分程度のところにある。途中で市場を通るが今日は時間が無いからまたいつか一緒に行こうか」
「はいっ!(市場があるんだ!どんな感じかな)」
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今回は馬ではなく馬車で本部へと向かった。途中で大きな門を通って市場に着いた。市場はたくさんの人で溢れていて、人と馬車が衝突しないかひやひやしたが、クロスさんが『この馬車には魔法がかかっていて人とぶつかってもクッションのように跳ね返してくれる』と教えてくれた。おかげで市場を安心して観察できた。市場には豪快な豚の丸焼きや色とりどりの野菜、可愛いアクセサリーなども売っていた――
―ゴトンッ
「到着したようだな」
前と同じようにクロスさんが馬車から降ろしてくれた。魔術師団本部の建物を見上げると確かに騎士団本部とは全く異なり、一つの大きな図書館のようだった。私が『中はどんな風だろう』と考えていると
「おや、いらっしゃいましたね。確か『エマちゃん』でしたよね、ようこそ魔術師団本部へ。私は魔術師団長のエルフィー=ホールです」
と、葡萄色の髪に黒色の瞳の、これもまた超絶イケメンが挨拶してくれた。
「はじめまして師団長さん。エマといいます」
「はじめましてエマちゃん。これからエマちゃんは鑑定室というところに行って“鑑定石”というものに触れてもらいます。そのあと色々エマちゃんに聞きたいことがあるので一緒に私の執務室まで来てもらいます」
「分かりました」
「では行きましょうか、はいっ」
師団長さんはそう言うと手を差し出した。手を繋ぐってことでいいのかな?
「じゃあ…」
私が手を繋ごうとすると急に視線が高くなり気づいたら近くにクロスさんの顔が
「お前とは手を繋がせない。エマは私が責任を持って鑑定室まで連れて行く」
「へえ~あのオリバーが……分かりました。ではこちらに来てください」
師団長さんに案内されたのは重厚な金の扉の部屋だった。その部屋の真ん中に虹色に光っている石があった。
「じゃあ、オリバー、エマちゃんを離してあげてください。エマちゃんはこの石に触れてください」
「はいっ(とっても緊張するなー)」
私はクロスさんに降ろしてもらい石に近づきそっと触れてみた。するとその石は急に光だしたかと思うと最初は赤色の炎に、そして青色の水の雫に、緑色の羽に、茶色の木に、白色の球体に、最後は黒色の球体に、と順番に形を変えていった。
(なにこれっ!この形は何の属性なの!?)
私は初めて見るこの光景に驚きながら自分に何の属性があるのか、形を変えていく石を見ていたが黒の球体に変わった時点であることに気づいた。
(あれっ?いまので六つの形に変わったけど、もしかしてこれって……)
どうしようという顔で二人のいる方向へ振り返ったが、クロスさんは唖然とした顔で、師団長さんは興味深そうに
「全属性だ(ですね)」
「デスヨネ―」
はあーーーーー!?
その後すぐに師団長さん達に執務室へ連行された。
次回は師団長エルフィー視点です