34.魔術大会2
『見たことがある』というのは以前騎士団の人達の任務についていった時にたまたま騎士の人達が戦っていた魔獣が今目の前にいる魔獣なのだ。といってもその魔獣はAランクの魔獣で騎士団の人達は十人ぐらいで応戦していた。つまり、この魔獣は騎士団員十人分の強さなのだ。それを普通まだ七歳の女子に戦わせる?…………いや、いました。エルフィー=ホールという変人が。……まさか、これはエルフィー先生からの挑戦状ですか!?なら、この課題、全力で取り組ませていただきます。
私は魔獣目掛けて超高等魔術を繰り出そうと思ったが、やめた。大技は最後の最後にとっておいたほうが良いと思ったからだ。なので、中等魔術でこの魔獣を倒すことにした。中等魔術だけで倒せるか不安な人もいるだろう、安心したまえ
「中等魔術、聖なる炎!」
修行のおかげで以前の中等魔術の威力は高等魔術の威力に匹敵しているのだ。
案の定魔獣は私が放った白い炎で徐々に浄化されていき最終的にはどこにでもいるような牛になってしまった。そう、魔獣というのは動物たちが穢れてしまうことで誕生する生物なのだ。だから、光属性魔法をかけるとその穢れが浄化され元の姿に戻るのだ。と言っても、ここまで魔獣を完璧に再現するとは流石エルフィー先生。
元に戻った牛は倒してしまうのもかわいそうだったのだがこれは大会なので闇属性魔法で
「初等魔術、催眠魔法」
牛の体に触れ魔法を唱えると牛はウトウトし始め最後にはドサッと倒れた。ここまでにかかった時間は約三十秒。
おお!意外にも好成績なのでは!
そう思うと
「え、エマ=ホール、記録二十三秒。現在トップです」
「やった〜!」
前半は順調な滑り出し!これも修行を耐え抜いたおかげかな?
何分か経って隣で戦っていた生徒も無事魔獣を倒せて、
「この後はお昼休憩となります。各自昼食をとってください」
お昼休憩となった。
皆がどれ程のタイムか知らないけど一位だったみたい。一位と二位はシード権を持つことになり、なんと準々決勝まで戦わなくていいのだ。ちょっと優遇過ぎないかな?
因みに二位はルーク殿下だったらしい。三位はエリオット殿下でお兄ちゃんに負けて悔しがっているのかな、と思っていたが案外スッキリとした表情で『兄上とエマは異常なんだよね。そうだよ』と独り言を喋っていた。
大丈夫か!?
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―コンコンッ
「エ〜マちゃ〜ん、ランチ一緒にどうですか?」
今現在私がペネとお喋りしながら控室のソファーでくつろいでいたところ、ノックと同時にエルフィー先生が入ってきた。
「エルフィー先生、ノックは相手が返事をするためにあるんですよ。ルーク殿下と同じレベルですね」
「………もしかして、ルーク殿下がこちらにいらしていたんですか?」
なにその深刻そうな表情は…怖いですよ。
「まあ、はい。いらっしゃいましたよ」
「なにかされましたか?」
うっ。ここで頰にキスをされたって言ったら面倒くさいことになりそう…
「いえ、何もされていませんよ(ニコッ)」
「そうですか……バンナ嬢、少しお話したい事があるのですがよろしいですか?」
?とくにペネとエルフィー先生は接点が無いように思ってたけど、意外にもお互い面識はあるみたい。
「ふふっ、よろしいですわよ。(まあ、会長として幹部には公平に情報を与えないといけませんからね)」
「ありがとうございます」
んん?何かこの二人怪しくない?
「ねえ、ペネ。変なこと言ったらだめだからね」
「分かっていますわよ。エマ様(の殿方選び)の為ですから」
「そう?なら良いけど?」
まあ、ペネがそう言っているし大丈夫だよね!(←大丈夫じゃない)
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後半の試合は順調に進んでいき現在は準々決勝であのローデス嬢とアリアが戦っていた。この試合の次はルーク殿下ともう一つの準々決勝で勝った生徒が戦う予定だ。
私は控室を出て観戦席の方へ向かった。準決勝でアリアと戦うのは少し気が引けるが、アリアにはこの試合に勝って欲しい。アリアは最初は標準クラスだったけど最近発展クラスに移るほど魔術が得意になった。何回かアリアの自習に付き合ったりしていたので、その度にアリアから質問があってそれに答えていた。
そんなことを思い出していると試合開始の鐘が鳴った。
まず最初にアリアが仕掛けた。
「火属性魔法、炎の息吹」
ローデス嬢に向かって炎の砲弾を放った。この魔法は威力が凄く、完全に防御出来る魔法も少なかったはず。だが、ローデス嬢は自信があるのか余裕の表情で立っていた。
「ふふっ、そんな魔法で私に勝てるとでも。光属性魔法、光の守護」
おお!中等魔術の防御魔法で対抗してきた。ローデス嬢の高等魔術はどうなのかは知らないけど、中等魔術は扱えるみたい。
すかさずローデス嬢は反撃に出た。その後は一方が魔法を撃てば片方が防御に徹するという戦いが続き、中々決着がつかなかった。が、少しずつローデス嬢の放つ魔法が固定化されていく一方で、アリアは様々な魔法を放っていった。
「はあはあ……光の……ぐはっ」
段々とアリアの魔法がローデス嬢にあたっていき、試合はほぼアリアの勝利が確定していった。そして、最後にアリアは
「熱爆発!」
ローデス嬢の目の前に爆発を起こした。魔力が切れていたのかローデス嬢は防御魔法が使えずもろに食らってしまい、倒れてしまった。この試合では十秒以内に立ち上がらなければ負けとなってしまう。
「十、九、八、七…」
残り時間も少なくなっていき
「三、二、一。試合終了!勝者は中等第一、アリア=ガードナー!」
「やった〜!おめでとう〜、アリア!」
物凄い大声を出してしまったが、そのおかげでアリアはこっちに振り返り手を振ってくれた。私もそれに対して手を振った。そしてアリアは口を開けたかとおもうと
「エマ様〜!勝ちましたよ〜!エマ様のおかげです!」
「違うよ!アリア自身の努力の成果だよ!」
私はアリアがどれだけこの大会に向けて頑張っていたか知っている。だからこの勝利はアリアの努力の賜物なのだ。
「でも、ありがとうござ――」
――ドンッ
「えっ?」
アリアが吹っ飛んだ。何で!?試合は終わったはずなのに何でローデス嬢はアリアに攻撃しているの!?
「何で…あんたが強いのよ!私はこの世界の主人…公で…あんたは脇役!私は決勝でルークと愛の戦い…をする予定なのよ!なのにあんたも…あの女と同じように私の邪魔を…するのね!気絶するまで…私の聖なる攻撃を浴び…なさい!」
―ブチッ
その時私の何かが切れた。吹っ飛んだアリアに対して攻撃を続けるローデス嬢を目掛けて
「超高等魔術、混沌の闇!」
私は闇属性魔法の超高等魔術の攻撃魔法を放った。且つ周りには被害を出さないためローデス嬢のみに的を絞った。こんなに感情が高ぶっているのに冷静な自分自身に驚いている。
私をどれだけ侮辱してもいい。だけど!私の大切な友達に手を出す人は誰だろうと容赦しないから!
私は攻撃を緩めず逆に威力を上げた。
「はあ、まだエマちゃんに感情の制御を教えていませんでしたね。私はまだまだエマちゃんの先生ですね。闇属性魔法、常闇の箱」
「エルフィー先生!?」
声がする方に目を向けると、エルフィー先生は舞台に降り立って、私が放った魔法を同じ属性の魔法で閉じ込めてしまった。そして、一気に私の方に近づき頭をポコッと殴られた。観客は全員ピタッと静止していて、エルフィー先生が古代魔術の時間停止魔法を使ったのが分かった。
「エマちゃんが放つ魔法が闇属性で良かったですよ。もし光属性だったら反発して全てを吸収出来ませんでしたからね。まあ、エマちゃんが怒る理由は分かりますが、あんなのをぶつけたらあの子消えてしまっていたかもしれないんだよ」
「ごめんなさい、エルフィー先生。ついカッとなってしまって……」
「じゃあ、代わりにエマちゃんにお願いしても良いですか?」
「勿論です。何でもします!」
「約束ですからね。念の為に契約もしておきます。エマちゃんはこの事を誰にも言えないのと大会が終わっても約束を果たさなかったら……そうですね、僕にキスをする。どうですか?」
いや、あまりにも此方が不利では?それに、エルフィー先生の変態要素が詰まっているし。
「少し意地悪ではないですか?それに、その約束って教えてくれないんですか?」
「契約し終わったら教えますよ」
「じゃあ、無理です」
「そんなこと言って良いんですか?この時間停止魔法を解いてエマちゃんが放った魔法を放出しても良いんですよ」
「えっ!それだけは勘弁して下さい!」
「じゃあ、契約してくれますよね」
「…………わ、分かりました」
この時の自分を殴りたい。もう少し警戒していれば良かった……
その後エルフィー先生は何か変な言葉を喋ると、金色の鎖が出てきて私とエルフィー先生の手首に巻き付いた。
これ、大丈夫なんだよね?
「では、この大会が終わったら僕の頰にキスしてください」
「はい?」
なんですって?この人頰にキスとおっしゃいましたか?
「それは、約束を守らなかった場合のペナルティーでは?」
「ふふっ、まだまだですねエマちゃんは。僕がこんな事をしない人間だと思いましたか?」
騙された〜!もしかして、エルフィー先生もグレイさんと同じドSになってしまいましたか!?
「エルフィー先生はグレイさんと同じ人間なんですね」
「『グレイさん』?……ああ、グレイソンのことですか。でも、僕がこんな事をするのはエマちゃんの自業自得ですからね。簡単に他の男が愛称を呼ぶのを許可したり、ましてやキスされるなんて。(ボソッ)兎に角、これで一件落着ですね」
いや、全然落着してませんけどぉ〜!
エルフィー先生は時間停止を解くともう一度舞台に戻り、全員に何が起こったのか説明し始めた。その後、会場からローデス嬢に対してのブーイングがなり始め、ローデス嬢は失格となって先生方に拘束されながら会場を後にした。幸いアリアは自身の火属性の防御魔法で致命傷には至らなかったが、腕の骨が折れてしまったらしい。
「これにより準々決勝は終わりましたが、エマ=ホールの対戦相手がいなくなりました。が、今大会はまだ続けるとの学園長の判断がくだされたので、次の試合は――」
「待って下さい!」
司会者の声を遮るように男性の声があがった。
「私、ルーク=ウィリアムと」 「俺、ユージン=ブラッキーは」
「「次の試合に進むのを棄権します」」
――ザワッ
どうしました、お二人方!?




