30.学園祭 3
ふぅ〜、びっくりした〜。まさかローデス嬢も魔術を披露するとは…私と被っちゃったよ。たぶん、魔術コースのクラス決定の対決を根に持っていたのかな。だからといって魔術披露の予定は変えないけど。
「ではいきます!高等魔術、光の砲弾!うわっ!」
えっ!?待って、その魔術は攻撃魔法だったはず。それを人が密集しているところに放つなんて、大変なことになる!
私はすぐさまステージから出て魔術を消そうとしたが急にその魔術の気配が消えてしまった。私はもう分かってしまった。ああ、こんな事出来るのはあの人しかいないな、と。案の定観客には怪我は無く、魔術の反動で気を失ったローデス嬢は関係者によって運ばれた。そして司会者は
「あ、ありがとうございます、ホール卿。で、では決定戦を再開します。因みに先程魔術を放った令嬢は退場という措置を取らせていただきました。続いてはエントリーナンバー9、中等第一デルタクラス、エマ=ホール嬢」
わお!次に進めるの早くない?と思いながらもステージへと出た。目の前には講堂の席が埋まるほど大勢の人がいて先程までざわついていた空気が一気に静かになった。
「(エマ〜!ここだよ)」
声がする方に顔を向けると一番前の席にフィンお父様、オリバーさん、エルフィー先生、そして見知らぬ人が座っていた。何処かで見たことがあるような感じだったが、目の前(大会)に集中した。
「初めまして、中等第一デルタクラス、エマ=ホールです。お察しの通り私はまだ七歳で本来ならば初等科なのですがある事情により中等第一からこの学園に入学させてもらっています。改めて今回私が披露するのは魔術です」
そう言うと観客達は少しざわついたが攻撃魔法ではないことを話し、ある程度静かになってから
「では……超高等魔術、光の祝福」
私は光属性魔法の中で身体的・精神的に癒やす効力を持つ魔術のエリアバージョン(広範囲Ver.)を講堂全体に発動させた。私を中心に白い光の円が広がり、円の中から無数の白い羽が飛び散った。先程のローデス嬢の魔術で小さい、といっても私と同じくらいの年齢の子達がとても怯えていたのでトラウマにならないように癒やしてあげようと思ったのだ。魔術の展開が終わると子供達は泣きそうな顔から笑顔に変わっていた。
良かった、良かった。それに、目の前の席に座っている『天才変態魔術バカ』が目をキラキラして此方を見て、『何で黙っていたんですか』と興奮気味で訴えてきている。
内緒にしていたかいがあったなぁ〜。
実は今回の魔術はエルフィー先生には内緒で新しく作った魔術なのだ。ただ単に普通の魔術を出すのは面白くないと思ってね。
私が魔術を展開した十秒間、講堂内は静寂に包まれていたが、フィンお父様達が先に拍手をし始め、それに続いて他の人達も拍手をしていった。
「素晴らしかったぞ!エマ〜!」
「後でちゃんとその魔術教えて下さいね、エマちゃん!」
「流石私の娘だ!」
うん、前の人の声が大き過ぎて周りの人達ドン引きしてますよ……はあ~、こうも厄介な人が三人も揃うとは…
「では、ホール嬢の披露が終わったので続いて投票に移ります。皆様方は自分が投票したい令嬢が持っている器にに魔力を送って下さい。優勝した方は白金色に、二位の方は金色に、三位の方は水色に変わります。では投票、お願いします。因みに途中退場のローデス嬢にも投票可能です」
一斉に観客たちから様々な形の魔力が集まってきた。小鳥のものもあれば、蝶、さらにはハートの形を型どった魔力が私の器に入ってくる。魔力に重さは関係無いのだが、こんなにも入ってくると重たく感じてくる。
そして何秒か経ってから司会者が
「皆様、ここで投票を締め切りたいと思います。……では、今年の三大宝石優勝者は…」
と言うと私の器は白金色に輝いた。
「中等第一デルタクラス、エマ=ホール嬢です。続いて第二位は――」
おお、優勝しちゃった。……優勝したら賞品とかもらえるのかな?
「因みに優勝賞品は食堂での日替わりランチが一食無料になります」
しょうもね〜。…いやでも、ランチ一食無料は相当価値があるよ、うん、ある、はずだ…
「おめでとうございますエマ様!これで史上最年少の三大宝石の誕生ですわ」
「そりゃそうだよね。私まだ七歳だから」
「それにしてもエマ様が放った魔術は凄いですわね。体が軽くなったような気分になりましたわ」
「そう?良かった〜。一応何回か実験はしていたんだけど心配で…」
そう言い終わるとペネは屈んで私の顔に近づき
「(これは確実にホール先生はエマ様のことがより好きになったと思いますわ)」
「(うん?まあ、エルフィー先生は魔術が大好きだからね)」
「(もう!そうじゃなくて、ホール先生はエマ様、あなたのことが好きなのですわ)」
「(へえ?あっ!そういえば…)」
そういえばエルフィー先生と二人きりになった時に変なことを言われた気が…
「(そういえばって何なのですか?もしかしてホール先生からもうプロポーズを!?)」
「(違う違う!そうじゃなくて、えーっと、私の勘違いかもしれない)」
「(はあ~、まだ教えられないということですわね。でもまあ、これだけは言えます。ホール先生はエマ様のことが大好きです)」
またこれですか。今日オリバーさんにも同じことを言われたよ。はあ…帰ったら料理長のお子様ディナーをたらふく食べよう。
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「エマ(ちゃん)〜!」
「げっ!」
御三方が講堂の裏口から出て来た私に猛突進してきた。その後ろから三人と一緒に座っていた一人の男性が歩いてきた。そしてフィンお父様が私に抱きつき軽々と持ち上げてしまった。
「エマ、本当に今日はお疲れ様。一番前の席で見ていたがエマの天使オーラは飛び抜けて可愛く神々しかったぞ。(ああ、またこれでエマへの招待状が増えるのが目に見える)」
「ありがとうございます、フィンお父様」
そう言うとオリバーさんは持ち上げられている私に近づき
「久しぶりに会ったがエマは本当に成長したな。少し身長が伸びたか?」
「はい!……(魔術実験の時にあんなこと言われたから何か気まずいな)」
「エマ。……今度の休日に一緒にまた市場へ出かけないか?」
「ふ、二人でですか?」
「ああ」
どうしよう…考える時間が欲しい。市場へ出かけたい気持ちとオリバーさんと二人っきりという恥ずかしい気持ちが衝突しているから。……どうせなら、皆で行けばよくない?
そう考えていると私の考えを読み取ったのかフィンお父様が
「では、エマが一緒に行きたい人全員で市場へ遊びに行くのはどうだ?」
「そ、それです!フィンお父様!私も皆で行ったほうがその分倍に楽しめると思います!」
「そ、そうか。(公爵め、一体誰の味方なんだ?)分かった。では、誰と行きたいんだ?」
「え〜とそうですね。(うぅ、オリバーさんとかエルフィー先生が凄いキラキラした顔で見てる…)じゃあ、友人のバンナ伯爵令嬢とオリバーさん、エルフィー先生。あと、もし良かったらフィンお父様も一緒に行きませんか?」
友人のペネは勿論。フィンお父様は残りの二人の監視役として来てもらおうと思った。
「すまないが、今週の休日は仕事で王宮へ向かはないと行けないんだ。すまない」
「え〜、そうですか。仕事ならしょうがないですね。では私を含めた四人で行くことにします」
「ちょっと待って下さい!」
!こ、この声は、まさか!?
「エマ、私を忘れるなんて酷いですよ」
「ル、ルーク殿下!?」
「はい、ルーク殿下です(ニコッ)」
もうひとり厄介な人が増えそうだ…




