27.エマ VS ミア
大公様を審判として私VSローデス嬢の魔術対決が始まった。殿下達の他にも発展クラスの人達も集まってきて第一練習場には百人程度の人がいる。
まあ、新入生代表の挨拶を無事やり遂げた私にとってはなんてこと無いけどね(たぶん)。
「ではローデス嬢から、好きな魔法を使ってくれて構わないよ」
「はい、アルバート様 (ニコッ)」
ローデス嬢は大公様も好きなのかな?まだまだ分析が必要ですね…
===================================
ふふっ、この対決で私の有能さが皆に伝わるはず。エルフィー先生は私の愛らしくて素晴らしい魔術を見て絶対あの女から私に興味が移るはず。殿下達はまあ…後々攻略するとして、アルバート様は攻略対象者の中で一番攻略が難しかったはずだから、少し手こずるかも……まあどちらにせよこの対決は確実に私が勝つけど。ゲームの中ではヒロインがエルフィー先生に次いで魔術に才能があったはずだから。
「ふふっ、中等魔術、輝く光線」
私は光属性の中等魔術の中で一番得意とする光の光線を放った。百メートル離れている的を無事撃ち抜き、結果はど真ん中ではなかったものの、十点満点中八点を獲得できた。周りの発展クラスのモブ達は『あの的を撃ち抜くなんて凄い』などと言っている。
まあ、こんなことはヒロインの私にとったら造作もないことだけど。さあ、次はあんたの番よ、エマ=ホール。モブのくせに出しゃばって。私があんたからまずエルフィー先生を奪ってあげるわ。
「次、エマ」
あれ?今、あの女のこと『エマ』って呼ばなかった?…………気のせいよね。あのアルバート様だよ……そんなはずない。だって、ヒロインでさえ『ミア』と呼ばれるのに五年はかかったのに。……うん、ありえない。
私はそう思い込ませた。
女は位置につくと
「超高等魔術、閃光の矢」
「「「は?」」」
ちょっと待って…聞き間違いだよね。今、『超高等魔術』って聞こえたんだけど…それも見るからに光属性魔法。………なんであんたも光属性を持っているの!?
私が混乱に陥っていると、あの女が放った魔術は的を射抜くどころか、的自体を消滅させてしまっていた。
=================================
アルバート=ウィリアム視点
私はエマの魔術を見て、エルフィーが彼女を気に入る理由が分かった。圧倒的な魔術のセンス、そしてこの威力。第一練習場に置いている的は全て撃ち抜けるようにはなっているが、消滅させることは出来ない。何故なら、この私が直々に絶対防御の魔術をこの的にかけているから。王族の魔力量と質は貴族とは比べ物にならないほど飛び抜けている。まあ、例外はいたが………まさか、もうひとり現れるとは。
ますます君が気になるよ。
==================================
私はローデス嬢に関わらないために自分が出せる最大の魔術を放った。標的である的が消滅したのを確認して、笑顔で皆の方を振り返ると、
エルフィー先生はさも当然という風に『素晴らしいですエマちゃん』と言って拍手をしている。(うん、先生はいつも通りだね)
殿下達二人は嬉しそうな悲しそうな微妙な顔をしている。(その顔は何なんですか?)
そして、あのローデス嬢とはというと口をぱくぱくして何か言いたげだった。そして、
「……なんであんたも光属性を持っているのよ!」
まあ、そう来ますよね…王族しか持たない属性ですから……そう言ったらローデス嬢もですが……
「実は私、ぜん「何ですの、あなたは!?」えっ!ペネ!?」
私がローデス嬢に全属性のことを明かそうとしたら、淑女コースを選んでいるはずのペネがやって来た。
「ペネ、どうしてここに?今、授業中なのでは?」
「それはまあ安心して下さい。……それより私の配下からエマ様に失礼な態度をとっている令嬢がいると聞いたのですが……あなたですか、ミア=ローデス」
「それが何よ!私があの女に対して何しようが別にいいでしょ!」
「はぁ?あなた、エマ様に向かって『あの女』とは何ですか!?あなた確か男爵家ですわよね。エマ様は公爵家なのですよ。あまりにも失礼過ぎますわ。身の程を知りなさい」
ペネがそう言うと
「そうだそうだ!ヴァイオレットの姫君に対してその口調は何なんだ!」
「そうですわ。ホール様に向かって、無礼ですわ」
と、発展クラスの方々が野次を飛ばしている。
ああ、何かもう疲れてきたな〜。
「あの、結局私が勝ったのでローデス嬢はこれ以上私に話しかけないで下さいね」
私はそれだけ言うと闇属性魔法で姿をくらまして第一練習場から人がいなくなるのを待った。
私が急にいなくなったので周りの人達は動揺していたが、大公様がそれぞれの場所に行くよう命じたので直ぐに練習場にはエルフィー先生と大公様のみになった。
「エマちゃん、そこにいるんですよね」
「……やっぱりエルフィー先生にはバレますか…」
エルフィー先生も闇属性を持っているので私が何の魔術を使ったのか分かっていたようだ。
「いや、まさかエマがもう超高等魔術を使えるとはね。さすがというべきか」
「その通りです、アルバート様。エマちゃんは魔術の天才なんです」
「そのセリフ何回言うんですか、エルフィー先生…」
「何回でも言いますよ」
「ははっ…、ところで大公様、……ローデス嬢って本当に貴族なんですよね」
「……ああ。しっかりローデス男爵に確認はとったが、……男爵曰く十歳になってから急に人が変わったと言っていた。九歳までは普通の子だったらしいんだが、突然我儘になってメイド達や従者にきつく当たるようになったらしい。……まあとにかく彼女とは関わらないほうが良いと思うぞ」
「はい、そのつもりです。………大公様、今日はお忙しい中有難うございました」
「また助けが必要な時は駆けつけますよ。いつも側にいますから」
「アルバート様、その発言は誤解を招きますよ。エマちゃんはとっても純粋な女の子なので」
「ははっ、別にそのままの意味だが」
「(まさかオリバーや殿下達の他にもいるとは…)本当にエマちゃんは人気者ですね」
「えっ……あ、ありがとうございます?」
「ふふっ、なんでそこで疑問形なんですか?(いっそのこと誰にも見られないように何処かに閉じ込めておきたいですね)……ではアルバート様、これから授業を始めるので部外者は出ていって下さいね」
「相変わらずだな。大公の私に対してそんな態度を取れるのは兄上とお前だけだよ。では、また何処かで会おう、エマ」
大公様はそう言うとまたふらっと消えてしまった。
なかなか心の内が読めない人だな。
エルフィー先生と公爵邸でしていたような新しい魔術の実験をしていった。エルフィー先生が言うには、先生と同等の力を持っているのは私しかいないらしく、今まで一人で実験を行っていたので寂しかったそう。なので、他の人と一緒に魔術を研究出来るのはとても嬉しいことだと言っていた。
一通り実験をしてエルフィー先生に別れを告げると私は公爵邸に帰るため直ぐに教室へ戻った。私の教室は一番上の階なので着くまでに時間がかかるのだが、階段を登るたびに他学年から声をかけられいつもより二倍ほど時間がかかった。
―ガラガラッ
「「「エマ(ホール)様!」」」
教室の扉を開けると一斉に皆が駆け寄ってきた。
「ど、どうしたんですか!?」
「私達、エマ様があのロードス令嬢?に喧嘩を売られたと聞いて本当に心配になったのです」
「アリ、『ロードス』じゃなくて『ローデス』ね。ていうか、どうやってその情報を掴んだの?」
「エマ様にはお話していませんでしたが、私達はバンナ様が会長の『ヴァイオレットの姫君を見守る会』の幹部なのでエマ様のことなら何でも知っているのです」
えっ!?なにそれ!?そんなのが勝手に作られていたの!?需要ないでしょ、そんな会……
「ち、ちなみにその会は何人ぐらいの人が……?」
「えーっと、確か千人はいらっしゃると思いますよ。(ここだけの話ですが、会員には講師の方々もいらっしゃるのです)」
「(いや、そんな情報いらないよ)……はあ~、でも私のことを心配してくれてありがとうございます。この通りなんとも無いので安心して下さい」
「「ホール様がご無事で何よりです!」」
「私、隣の教室にホール様が戻ったこと伝えに行きます!」
私は皆に疲れたので家に帰ると言って、隣のクラスの人達が来る前に教室をあとにした。
そんなこんなでローデス嬢との魔術大会は終わり、また騒がしい日常に戻った。




