26.選択授業
初日の授業は午前中のみで午後は自由だったのでエルフィー先生と共に私の助手認定をしに行った。無事助手の届け出は出せたので私は直ぐに公爵邸へと戻った。単純に疲れたのである。明日もこのペースだと疲れるな〜と思いながら私は眠りについた。
翌日。いつも通り制服に着替え、ヒュー達と一緒に馬車に乗った。ヒューから中等第四のルーク殿下が今日、私とランチを一緒にとりたいと言っていたがどうしますかと聞かれて勿論断っておいた。
ルーク殿下と一緒にいると殿下のことが好きなローデス嬢にもっと恨まれることになるからね。私は面倒事には極力関わりたくないので。
そんなこんなで午前中の共通授業は無事終了。ランチもペネ達に協力してもらい殿下に見つからないよう空き教室で食事をとった。(テイクアウトで)そして残りは選択授業、魔術コースのみとなった。魔術コースは他のコースと掛け持ちが可能で人気なので、人数が他のコースの中で一番多い。よって習熟度別で授業をするのだそう。
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学園一広い第一練習場には大勢の生徒達がそれぞれ同じ学年同士で集まっていた。勿論私はアリアラ達とどのクラスになるか話していた。(もうボッチではないからね)すると、次々に先生たちが入ってきて、先程まで喋っていた生徒たちは一気に静かになった。
「これから、習熟度別のクラス発表を行う。自分の名前が呼ばれたら担当の講師のところに行くように」
「では発表する、高等第四、デルタクラス。ユージン=ブラッキー、――」
次々に発表されていった。
「中等第四、デルタクラス。ルーク=ウィリアム、発展クラス。――」
予想はしていたがやっぱりルーク殿下も当然出るよね。
「中等第二、デルタクラス。エリオット=ウィリアム、発展クラス。――」
おお!エリオット殿下も発展クラスか。ということは中等魔術までは完璧ってことなのかな。
高等第四の生徒から呼ばれていきどんどん周りにいた人数が少なくなってきた。
「中等第一、デルタクラス。アリア=ガードナー、標準クラス。アラナ=ガードナー、基礎クラス。――」
アリアラは別々のクラスだったみたいだ。二人して別れを惜しんでいる…
「エマ=ホール、発展ホールクラス。ディー=スミス、――」
うん?『発展ホールクラス』?何ですかそれ?普通は発展クラスじゃないんですか!?
周りを見渡すとある人物と目が合った。にこにこ笑顔のエルフィー先生だ。
また何かやりましたね!?
「先生?あの、……『発展ホールクラス』って何なんですか?」
「ふふっ、それはエマちゃん専用のクラスのことで、担当はこの私…エルフィー=ホールです(ニコッ)」
「ま、まさかエルフィー先生が勝手に作ったクラスじゃないですよね」
「勝手とは心外ですね。ちゃ~んとアルバート様に許可を取りましたよ」
「(いや、何で大公様は許可しちゃうの!?)その、…作った理由を聞いても?」
「それは勿論私とエマちゃんの二人っきりで魔術を教えるため「ナニイッテルンデスカ?」うそうそ、半分は冗談ですよ」
「(半分はその理由って怖いんですが…)じゃあ、本当の理由は?」
「半分は、エマちゃんの魔術の進行度が他の子と比べて飛び抜けて進んでいるわけ。そこで、エマちゃんにはもっと沢山のことを学んでほしいという思いから、エマちゃん専用『発展ホールクラス』ができたわけ。納得できましたか?」
「う〜ん、納得できたような、できないような…(まあでも、殿下達と同じクラスじゃないからいいか)…一応、一応ですけど納得はしました」
「ふふっ、ありがとうございます」
エルフィー先生と一通り話して(一応)納得した私が周辺を見ると先程までいた生徒たちが殆いなくなってしまっていた。先生と私は一緒に第一練習場に残っていたので
「エルフィー先生、私達も他の練習場に行かないんですか?」
「いえ、私達はこの第一練習場で練習します」
「えっ?でもここは一番広い練習場では?私達二人だけが使っても良いんですか?」
「ふふっ、問題ないですよ。二人、と言っても他の人達とは放つ魔術のレベルが桁違いに違うんです。広々としたところのほうが、何も気にせず魔術を出せるでしょう」
「なるほどなるほど」
私は謎が解けて安心していると
「あのぉ、エルフィー先生。私達もその『発展ホールクラス』に入れてくれませんか?」
油断していた…この魔術コースにはあのローデス嬢がいるということを。
私達の目の前には桃色の髪のローデス嬢と困り果てたような殿下達二人。面倒くさいことになりそうだなと思っているとエルフィー先生が
「それは無理ですね。あなた達とエマちゃんではレベルが違いすぎます。あと、私がいつあなたに名前呼びを許しましたか?不愉快です」
おおっと?エルフィー先生、いつもの甘々の声はどうしたんですか?怖すぎてこの練習場が凍りそうなんですが…
「ええ!だって、あの人は先生のこと『エルフィー先生』って呼んでいたじゃないですか!」
「それはエマちゃんが私の身内だからです」
あっ、完全にそのこと忘れてた〜。ていうかローデス嬢、エルフィー先生のこの冷たい声に気づかないの!?
「うっ、ま、まあそれは良いとして、私達とあの人のレベルが違うなんてどうやって分かるんですか!私は王族しか持たない光属性持ちなんですよ。せ、先生だって何で私が持っているか気になるでしょう?」
「いえ、全然、これっぽっちも気になりませんね」
即答……
「ねえ、そこの、何だっけ……えーっと、そう!エマ、あなた私よりも属性は珍しくないはずなのに何でエルフィー先生に気に入られているのよ!?」
「(うわ〜、こっちに来たか…)い、いや〜、それは私にも…」
「ねえ、ローデス嬢」
「!何ですか、ルーク殿下 (ニコッ)」
「君、なにエマ嬢のこと『エマ』って呼び捨てにしているんですか?仮にも君は男爵家ですよね。公爵家であるエマ嬢を呼び捨て出来るほど君はそんなに偉い人なんですか?私でさえ呼び捨てはまだ出来ていないのに…」
「そうですよ、ローデス嬢。王太子である兄上を差し置いてなにエマを呼び捨てにしているんですか。……あっ!僕も呼び捨てにしてた!…ご、ごめんなさい兄上…」
「いや、エリオットは良いよ。けど、ローデス嬢、君はだめだ」
「……ですか、何なんですか!?せっかく学園が始まったのに、ちっとも楽しめないじゃない!はあ、何もかも全部あなたのせいだから!」
おおう、急に来ましたね…もしかするとローデス嬢はこの学園に来て殿下達と恋仲になりたかったのかな。……凄い夢、私なら絶対にそんなこと望まないけど…
そんな風に、他人事のように考えていたが、このままじっと黙っていたらまた何か言われるので
「そんなこと言うのなら、私と魔術対決しませんか?」
「魔術対決?」
「はい。……そうですね、あそこに的があるので、どちらがより標的を確実に打てるか勝負しませんか?もしローデス嬢が勝ったらあなた達は『発展ホールクラス』に入れます。もし、あなたが負けたら、一生私に話しかけないで下さい」
「ふん、良いわよ。どっちにしろ私にとっては好都合だけど。あなたになんか話しかけたくもないし」
「では、審判は…エルフィー先生で良いですか?」
「『はい』って言いたいところだけど、エルフィー先生はなぜか知らないけどあなたを気にっているみたいだから信用できないわ。…別にエルフィー先生が嫌いなわけではないですからね」
「いや、誰もそんなこと聞いてはいませんが、……そうですね、エマちゃん。こういう場合はアルバート様に頼んでみるのはいかがですか?」
「大公様ですか?でも、忙しいのでは?」
「大丈夫ですよ、エマ」
「うわっ!」
そう心配していたが、急に私とローデス嬢の間に大公様が現れた。
「わぁ〜、アルバート様だ!なんでここに?」
「?君がローデス嬢かな?」
「はいっ!会うのは二回目ですね!うわ〜、生で見るのはやっぱり違いますね」
「(エマ、この子この前言った通り本当に怖いだろ)」
「(はい、怖いです)」
「ちょっとちょっと、なに二人でこそこそ話しているんですか?」
「「いえ、何も」」
「…まあ、良いですけど。アルバート様なら認めます」
ローデス嬢はようやく納得したようで、早速魔術対決が始まった。
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「(兄上…この場合、エマを応援したほうが良いと思うのですが、もしこの試合にあの女が勝ったら僕たちはエマと同じクラスになれるんですよね?)」
「(ええ、……エマには勝ってほしいのに、不本意ながらローデス嬢にも勝ってほしい。私達は本当に醜いです)」
「(そういえば兄上、エマのことさっきまで『エマ嬢』だったのに『エマ』って呼んでいますね)」
「(はい、あなた達に遅れはとっていられないので…)」
「(さすが兄上………あの、一つ疑問に思ったんですが、アルバート叔父上、じゃなかった、学園長はなぜこの練習場に現れたんでしょうか?)」
「(私も同じことを思っていました。多分ですけど、アルバート叔父上はエマのことを…)」
「(まさか!?……でも、僕たちにも見せない表情をエマに見せているっていうことは、……本当に)」
「(うん、またライバルが増えてしまったようだね)」




