23.入学式
待ちに待った王立学園入学式。最初はホール公爵家の人達、その次は騎士団の人達……という風に少しずつ慣らせていき、ようやく緊張せず、いや緊張はするけれども、大人数に臆せず話すことが出来るようになった。ホール公爵家のメイドさん達に『本当に頑張りましたね』と言われながら制服に着替えされられた。学園の女子の制服は深い紺色のワンピースに学年それぞれのリボンが胸元についている。私は中等部の第一学年なので真っ白のリボン。学園曰く『これから沢山のことを経験して自分の色を見つけてほしいから』らしい。靴は茶色のブーツでとても歩きやすそう。これは春と冬用で、夏と秋はまた違うらしい。
「おおエマ、本当に似合っているよ!…大丈夫か?凄く緊張しているが…」
「は、はい。ちょーっとだけなので…」
「おやおや、エマちゃん、大丈夫ですか〜?」
「え、エルフィー先生…からかいに来たんですか」
「ふふっ、違いますよ。私も一緒に学園行くので」
「えっ!先生もですか!?何で…」
「まあ、それは後で分かりますから」
恐怖しか無い…急に学園に行きたくなくなった…
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フィンお父様達と一緒に馬車に乗り学園に到着した。私は諸々の準備があり早めに来たので、まだ殆ど他の生徒は見受けられなかった。その代わりというか、制服をバッチリと着こなしている殿下達を見つけてしまった。気付かれないようにソロ〜っと移動しようと思ったが、動く前に『エマ(嬢)!』と大きな声で呼ばれてしまい逃亡することは不可能になってしまった。
「いや〜、まさか私が在校生代表でエマ嬢が新入生代表だなんて…これはもう『運命』ですよね」
「私には誰か(あなた)が仕組んだように思うんですが…」
「う〜ん、それはどうでしょうね。エマ嬢は優秀な上にとても優しい人格の持ち主ですから。あなた以外に代表を務めれる人はいないと学園側は判断されたのでしょう」
「はあ、じゃあご期待に添えられるよう頑張ります」
「頑張って下さい、…出来れば飛び級をしてもらって私と同じ教室で一緒に学びたいものですね」
「ちょっと待って兄上!エマは僕と学ぶんだから!エマ、飛び級するなら七つ上じゃなくて、五つ上の学年にしてね」
「いやいや、まだ私飛び級する予定もないですし―」
「「絶対飛び級してね」」
面倒くさいなこの王子達は!そんな簡単に飛び級なんて出来るわけがないでしょう!
「殿下方、そしてホール嬢、生徒代表控室にご案内します」
この学園の先生と思われる人に案内されて私達は控室へと向かった。
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「なあ、聞いたか?今回の新入生代表の挨拶はあのホール令嬢がするらしい」
「えっ!あの『ヴァイオレットの姫君』が!?」
「ああ。いや〜、後もう少し遅く生まれていたら同じ学年になっていたかもしれないのに…今年の中等部の第一学年が羨ましいよ」
「そうだな。…聞いたところによると、ホール嬢が授業見学に行った中等部の、今で言う第二学年の男子全員が彼女の虜になったようだ」
「僕の予想ではホール嬢はこの学園の『三大宝石』に選ばれると思うよ」
「ああ、確定だな」
何よあいつら!そんなにあの女が可愛いっていうの!?絶対に私の方が見た目も能力もあの女を上回っているのに。…まあ、どうせ攻略対象者達は私の魅力に気づいてあんな女からすぐに離れるに違いないけど。だって私は『ヒロイン』だから。私の逆ハー生活は確定ね。ふふっ、それにこの『学園編』は一番攻略対象者達と会うから人気のシリーズなんだよね。
「エマ、絶対にあなたを引きずり下ろしてあげるわ」
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ようやく私の出番が来て講堂のステージに立つと新入生の他にも在校生、保護者、先生方など、大勢が私を見ていることに気づき身震いしてしまったが、ふとフィンお父様の方を見ると『大丈夫だ』という風にうなずいたのが分かった。
大丈夫だよね。あれだけ沢山頑張ったんだから!
結果、………無事成功!一言も間違えずに言えて、最後の方は成功を確信して笑顔で話すことも出来た。代表の挨拶が終わった後沢山の人が拍手をしてくれて、特にフィンお父様が泣きながら拍手してくれたのは本当に嬉しかった。それにエルフィー先生も珍しく普通に微笑んでいてちょっと驚いた。(いつもは何かを企んでいるような笑顔を見せるから…)するとエルフィー先生は学園関係者のような人に呼ばれて講堂から出ていってしまった。
「お疲れ、エマ嬢。完璧でしたよ。…次は私の番ですね。では」
「はい、ちゃんとしっかり聞いておきますね」
「ありがとう」
ルーク殿下は颯爽とステージに上がると在校生代表の挨拶を始めた。主にこの学園の行事についてや新入生に向けた激励の言葉をかけていた。
さすが王太子、人の心を掴むカリスマ性がすごいな
見たところ講堂全員が真剣にルーク殿下の話に耳を傾けていた。
私と同じ学年の人がどれくらいいるのか、新入生席をざーっと見ていると桃色の髪の女の子を発見した。他にその髪色の生徒がいないことから彼女がローデス男爵の長女、『ミア=ローデス』であることが分かった。
ふむふむ、あの子が…というかめちゃくちゃ興奮しているようですけど。すごい頰を上気させながらルーク殿下の方を見ている…もしかして、ローデス嬢はルーク殿下のことが好きなのかな?
おお!これで謎が解けたかも!つまり、ローデス嬢は私がルーク殿下と仲が良いと誤解しているから私を憎んでいるのか!ふふ、この推理力、褒めてほしいものだな。
私が名推理をしているといつの間にかルーク殿下の挨拶は終わっていて拍手喝采が起こっていた。私もつられて、あたかも聞いていたように拍手をしていたが、戻ってきたルーク殿下に物凄い綺麗な笑顔で『どうでした?(聞いていませんでしたよね?)』と言われた時は『は、はい!す、素晴らしかったです!』と冷や汗をかきながら言うしかなかった…
「では、今年の講師の方々をご紹介させて頂きます
まず、中等部第一学年デルタクラスの担任講師はアンディ=カウマン講師です。そして―」
次々に担当の先生方が発表されていった。私が『魔術コース担当の先生は誰かな〜』とワクワクしながら待っていると
「次に選択授業の講師の方々の発表です。魔術コースは特別魔術講師としてなんと王国魔術師団長の―」
チョットマッテ!?
「エルフィー=ホール講師です」
「一年間よろしくおねがいします(エマちゃん)」
え、エルフィー先生が講師!?何で!?
先生、師団長ですよね、忙しいに決まってますよね?
私の学園生活が平穏でなくなることが確定してしまった。
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―公爵邸
「エルフィー先生、私、何も聞いてないんですけど!」
「いや〜、エマちゃんの驚いた顔を見れて隠していたかいがありましたよ」
「許してくれエマ。ヒューゴがいるとしてもエマ一人を学園に入れるのは心配でな。身内なら信用できると思おって。(まあ、息子がエマに好意を持っていることは知っているが)」
「そうなんですか…確かに知っている人がいるのは安心できるので嬉しいです」
「分かってくれて嬉しいよ」
ふぅ、何とかエマを説得できた。エルフィーがエマのことをかなり好きだからな。
一人の父親として息子をサポートしてあげたいというのが表向きの理由で、本当は息子と付き合ってくれることでこの公爵家にずっといてほしいからというのが本音なのだが。
私もエマにかなり依存してしまっているようだ。
…しょうがないな、初めての『娘』なのだから。




