16.ホール公爵 フィンリー=ホールside
ホール公爵としての仕事が終わった後セバスが部屋に入ってきて、二通の手紙を渡してきた。一つはあの陛下からでもう一つは宰相のグレイソンからだった。陛下の方の手紙には、『エマという少女を約二ヶ月後、ホール公爵家の養子にしてほしい』とのみ書かれていた。(またこれか、どうせグレイソンの方に詳しいことが書かれているんだろうな)案の定グレイソンの方には
『“白の森”でエマという白金の髪の少女が発見されました。その子は鑑定の結果、全属性であることが分かり、魔術師団長のエルフィーいわく魔力量はグラド王国一らしいです。そこで公爵にお願いがあるのですが、エマを公爵の養子にしてほしいのです。理由は、ホール公爵家はグラド王国の中で一番魔術に精通しているからです。もしその子が魔力暴走を起こしてしまっても公爵と師団長であるエルフィーがいれば安心ということで。あの『魔術バカ』で有名なエルフィーも初めて魔術以外に興味を持ったほどの素質の持ち主です。公爵もおそらくその子を気に入るかと…良い返事を待っています』
へえ~、あのエルフィーが…あいつは気に入るものがあればとことんそれに時間を費やす、その代わり、気にいるものができるのはそう滅多にないことなのだが…『エマ』か、面白そうだな。
そう思った私はすぐに王宮へ『その子が二ヶ月以内に高等魔術を習得できたらという条件でエマを養子にする』と手紙に書いて送った。久しぶりにあいつと一緒に食事でもして『エマ』について聞いてみようか。
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三日後―
「エルフィー、お前に聞きたいことがあるんだが、『エマ』という子はどんな子だ?」
「ああ、そういえばエマちゃんがこの公爵家の養子になるって話ですよね。ええ、エマちゃんはとっても可愛くて、その上、魔術に関して私以上の才能がありますよ」
「本当か!?お前以上なのか!?」 「はい」
「今日エマちゃんと魔術の特訓をしたのですが、十分程度で初等魔術を習得してその後一緒に混合魔術を発現させたほど…それも無詠唱で」
「お前でも無詠唱には半年ほどかかっただろ。それをエマは一日で…」
「どう思います、父上?」
「………素晴らしい!正直迷っていたのだが、それほど天才だったとは…エルフィー、もう少しエマについて教えてくれないか?」
「もちろんですよ」
エルフィーからエマの容姿、性格、好きな物や食べ物、そしてエマの『消された記憶』についてなど沢山のことを聞き出した。聞いていくうちにエマがそこら辺の令嬢とは違い心優しく可愛らしい子であることが分かったと同時に、エルフィーがどれだけエマを気に入っているのかが分かった。(これはぜひエマを私の養子にしたいな。そして念願の『娘』!早くエマに会って『お父様』と呼ばれたい…エルフィーは結局一度も呼んでくれなかったからな…)
一度も会ったことはないが、エマのことがとても気に入り、騎士団長のオリバーに『エマに必要なもの、エマが欲しいものは全てホール公爵家が支払う』と手紙を出した。(堅物として有名な私も娘がいたらこんな感じに親バカになってしまったのだろうか。いや、五三歳と七歳では『娘』ではなく『孫娘』か?)
エマに会うのを心待ちにしているとオリバーから手紙が届き、『記憶を戻す古代魔術をエルフィーが解読できたようなので早速エマの記憶を戻します。その後、エマも交えてホール公爵とこれからのことについてお話したいのですがよろしいですか?』と書かれていたのですぐに了承の手紙を出した。
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「フィンリー様、今日ようやくエマお嬢様が来られますね」
「ああ、早く『お父様』、いや『フィンお父様』と呼ばれたい」
執事のセバスもエルフィーとの夕食の際、一緒にエマのことを聞いていたので私もセバスもエマの虜になってしまった。少しの間セバスとエマのことを話していると、私の家の馬車が到着した。馬車から降りてきたエマは空から来た天使のようで、エルフィーから聞いていた以上の愛らしさだった。そしてその天使は私達のところに来て挨拶をしてくれた。容姿だけでなく、声も可愛かった。セバスがその愛くるしさに心奪われ私よりも先に自分の愛称を呼ばせようとしたが、しっかりと阻止して私の愛称『フィン』と一緒に『フィンお父様』と呼ばせた。(これで長年の夢が!)一緒に家の中に入りすぐに夕食へと招待した。
「エマ、聞いている通りあと二ヶ月で正式にエマはホール公爵家の養子になるんだが、その前に貴族のマナーや立ち振舞などを学んでほしいのだ。そこで、次の週からこのホール公爵家で過ごしてほしい。ここで何人かの講師を呼ぶ予定だから…何不自由無い生活を約束する…どうだ?」
「公爵家の養子になるためには絶対に必要なことなんですよね。…ちゃんとその覚悟は出来ているので、ぜひ来週からよろしくお願いします」
よしっ!これで毎日エマと一緒に家族のように過ごせる。はあ~、エマが来たらまず一緒に買物に行ってそれで……
「…リー様、フィンリー様!」
はっ!あまりにも楽しみで話を聞いていなかった…
「フィンリー様、エマお嬢様に学園のことはお話されないのですか?」
「ああ、そうだった」
「エマ、エマがある程度貴族の生活に慣れたらの話なのだが、王立学園に通ってみないか?」
「王立学園ですか?」 「ああ」
「セバスとも話して、エマをもし公爵家でずっと過ごさせたら、エマの大事な成長の機会を奪うかもしれないと……王立学園には沢山の貴族や、少ないが平民もいる。そこで様々な人と出会うことでエマの視界がよりひらけると思うのだ、どうだ?」
「(この世界の学園!それはもう行くしかないや!)ぜひ行きたいです!」
「そうかそうか。エマは今七歳だから年齢的には五歳から十歳が入る初等科になるが、エマの実力でいくと十一歳から十四歳までの中等部に入るだろう。中等部にはルーク殿下やエリオット殿下もいるぞ」
「……へえ~、ソウナンデスカ、タノシミダナ〜」
大丈夫か!?とても棒読みだったが……まあエマにもしものことがあれば、ホール公爵家の全権力をもって解決するがな。
エマといつか本当の親子のように話せることを願って…




