14.王太子とお茶会のはずが…
まさかの王太子からの招待でオリバーさんはその招待状を破ろうとしているし、バルデさんはそんなオリバーさんをどうにかして止めようとしている。周りの人達は『王族からの招待状を断るべきでないですよ』とみなオリバーさんを説得しようとしている。何分かオリバーさんが暴れた後、結局私は王太子の招待を受けることになった。オリバーさんは何か勝ち誇ったような顔で『エマ、さっき購入した群青色のリボンの髪留めを明日王宮に行く時につけていってくれないか』と言ってきた。その時の私は何も考えず『はい、いいですよ』と言ってしまった。この時の私を殴ってやりたい。後々あんなことになるとは思わなかった。
翌日の朝、本部に届いた青藤色の生地に銀色の刺繍のドレスを着て、ナタリーお姉ちゃんにこれでもかというぐらい髪の毛を可愛くしてもらった。そして最後にオリバーさんが自ら買ってくれた群青色のリボンの髪留めをつけた。その時、ナタリーお姉ちゃんから『独占欲の塊』という単語が聞こえたのでどういうことかと尋ねたが教えてくれなかった。今回はオリバーさん、ではなくエルフィー先生が一緒に付いてきてくれることになった。オリバーさんは昨日私と市場に行ったので仕事が溜まっているらしい。ごめんなさい。オリバーさんは最後まで『あんなやつと一緒に行かせてなるものか。私が一緒に付いていく』と言っていたが、バルデさんと他の騎士さん達に強制的に執務室へ連れて行かれてしまった。
「おや、今日のドレスはまた一段と素敵ですね。似合っていますよ。……ところで、その髪飾りは一体」
「えっと、昨日オリバーさんと一緒に市場へ行った時に買ってもらったんです。綺麗ですよね、群青色のリボンの上にこの黄金色の宝石が散らばっているのが――」
「これは妬きますね。エマちゃんは私の生徒で大切な人なのに、この髪飾りをつけさせてくるとは。なかなかやりますね、オリバーは。この気持をあの王太子にも味わせてあげたいですね」
「もしかしてこの髪留めだめでしたか?」
「いえいえ、ただ今度私と魔術の訓練をする時は葡萄色か黒色のアクセサリーをつけてきてほしいのです。ああ、今度の訓練の日に私が直接買ってきてエマちゃんに渡しますね」
「あっ、ありがとうございます、エルフィー先生。あの、実は先生にお土産があって、『ふわふわマシュマロ』っていうお菓子なんですけど…先生は甘いものは苦手ですか?」
「お土産ですか!いえ、私は甘いものは大好きですよ。いや〜、エマちゃんが私にお土産なんて、本当にうれしいです」
よかった〜。こんなに喜んでもらえて嬉しいな。
十数分程度、市場でのことや魔術のことについて話してからようやく王宮に到着した。
=============================
「ようこそ王宮へ。お久しぶりです、エマ、いや、エマ嬢」
「お久しぶりです、殿下」
「『殿下』じゃなくて『ルーク』と呼んでください」
「丁重にお断りさせていただきます」
「ふふっ、残念ですね殿下。私はもうエマちゃんに『エルフィー先生』と呼んでもらっているので。何なら私が『ルーク様』と呼んであげてもいいですよ」
「いや、大丈夫ですよ、エルフィー。あなたに呼ばれても何も嬉しくないですから」
二人共仲が悪いのかな。オリバーさん、エルフィー先生、殿下は三人ともそれぞれ互いに嫌っている。何が原因なのかな。
殿下とエルフィー先生に挟まれて王宮の長い長い廊下を歩いていった。以前と同様、大勢の人に見られ続けた。(精神的にもこの二人と一緒にいるのは疲れるな)もうそろそろで体力の限界というところで目的地に着いた。そこは前に殿下と話した庭園で、真ん中にある大きな木のそばへ行った。するとそこには一人の男の子が立っていた。よくよく見るとその子の髪は白金で、王族であることが分かった。
「殿下、あの方は?」
「ああ、私の弟で、第二王子のエリオットです」
はあ~、また王族ですか、それも王子。なんでこんなに面倒くさそうな人達とよく出会ってしまうのかな。私は何も気にせず過ごしたいのに。
「殿下、それで私を呼んだ理由は?」
「それが…エリオットは二属性持ちなんですが、そのうちの一つが闇属性なんです。私達王族は皆、光属性を持っているのですがエリオットだけが闇属性で…それを本人はとても気にしていて、あまり人と関わりたくないそうなんです。自分が父上の実の息子ではないと言われたくないと…そんなことを言う人間はいないのに。そこでエマ嬢にはエリオットの友人になってほしいのです」
「ゆっ、友人ですか!?」
「はい。この国の中で闇属性を持っているのはエマ嬢と、そしてエルフィーの二人だけなんです。エマ嬢も知っている通りエルフィーは少し変わっているので、エリオットの友人、というわけにはいかないんです。そこで、六歳差ではありますがエマ嬢を。どうかエリオットの心許せる友となっていただけませんか?」
「……『分かりました』と言いたいんですが、まずそのエリオット殿下と話してから決めてもいいですか?」
「もちろん、エリオット!君に紹介したい人がいるんだ」
ルーク殿下が呼ぶとエリオット殿下は少し不安げに私達に近づいた。
「エリオット、こちらはホール公爵家の養子になるエマ嬢だよ。エマ嬢はエリオットと同じ闇属性を持っているんだ」
ルーク殿下がそう言うとエリオット殿下は一瞬驚いたような顔になりすぐにもとの不安げな顔になってしまった。そして
「はじめまして…エマ嬢、僕は第二王子のエリオット=ウィリアム…です…」
一応挨拶はしてくれるんだ。よかった。
「よし、お互いに自己紹介も終わったから二人で少し話したら?エマ嬢、私達は少し用事があるのでここを離れますがすぐ近くに護衛がいるので安心してください。十数分ぐらい経ったら戻ってきます、では」
えっ、行っちゃった。これじゃあ強制的にエリオット殿下と話さないといけないじゃないですか。どうしよう。
「えっ、エマ嬢は王族なのに闇属性を持っている僕を非難しないの?」
まさかのエリオット殿下から話しかけてきた。これは返事をしなきゃだよね。
「そんなことしませんよ。というか私はこの国のことをよく知らないので…エリオット殿下はなぜ自分のことをその…王族ではないと思っているのですか?」
「…それは…属性の鑑定の時に一緒にいた魔術師団の人が、僕が闇属性であることに対して『こんなことありえない。王族の方は全員光属性なのに』と言うのが聞こえて…自分は王族ではないと思い始めたんだ。…だから兄上達も僕のことを王族とは思っていないと」
「う〜ん、その魔術師団の人の髪色は葡萄色でしたか?」
「ううん、葡萄色じゃなくて胡桃色だった」
「(じゃあエルフィー先生じゃないか)たぶんその人は何も考えていないお馬鹿さんだったんですよ。だって、エリオット殿下の瞳は陛下の瞳の色と同じ紺碧色ですし、王族特有の白金の髪。これはもう確実にエリオット殿下は陛下の息子さんですよ」
「でも、僕は闇属性持ちだよ…兄上は光属性なのに…」
「『光があれば闇あり』『闇があれば光あり』この二つの言葉の意味は分かりますか?」
「…わかんない」
「この二つの言葉は『光と闇は表裏一体』、つまり『光と闇はどちらかが欠けてしまうともう一方の方も存在できなくなってしまう』という意味です。これを殿下達に例えてみると『二人ともかけがえのない存在』…私が思うに、エリオット殿下の闇属性とルーク殿下の光属性はどちらも必要なものなんだと思います」
「僕が…必要な存在?」
「はい。殿下達が二人揃うことで両方が輝けるのです。『光が強くなれば闇も強くなる、闇が強くなれば光も強くなる』というふうに。だから、エリオット殿下はルーク殿下にとってかけがえのない存在なのです」
「兄上のかけがえのない存在……そんなこと思ったこともなかった」
「ルーク殿下だけでなく陛下も、その他大勢の人もエリオット殿下のことを大切に思っていますよ」
するとエリオット殿下は急に目に涙を浮かべて、大声で泣き出した。でも私は心配しなかった。それは確かに嬉し涙だと分かったから。
==========================
その後何分かエリオット殿下と話して随分仲良くなった。そして妙にタイミングよくルーク殿下達が帰ってきた。(この裏切り者め!…でもこんなにエリオット殿下が優しかったなんて、知れてよかったかも)
「仲良くなったみたいだね、エリオット」
「はい!兄上!エマは本っ当に優しくて可愛いんだ!」
「(へえ~、エリオットもエマ嬢の良さを知ってしまったか。…だけど、弟だからってエマ嬢は渡さないからね)」
「(望むところです)」
「何をコソコソと話しているんですか?」
「なんでも無いよ、エマ嬢 (ニコッ)」
無駄な笑顔…これはなにかあるな…
「ところでエマ嬢…その髪飾りは何ですか?」
「ああ、これはオリバーさんがくれたものなんです」
「……エマ嬢、私からも贈り物をしてもよろしいですか?」
「贈り物ですか?」
「はい」 「じゃあ、僕もエマに贈り物をするよ」
「えっ、あ、ありがとうございます」
「いえいえ(ニコッ)」
だ・か・ら、その笑顔が怖いんですよ…
ルーク殿下達も交えて四人で話して、夕方という頃にようやく解放された。そしてルーク殿下に招待された日から二日後、騎士団本部に、ルーク殿下からは若葉色の生地に白金の刺繍が施されたドレス、エリオット殿下からは紺碧色の宝石のネックレスが届いた。
エリオット殿下はいいとして、ルーク殿下…どこで私のスリーサイズを知ったんですか!?ピッタリなんですけどぉー!この変態王子めーーー!




