11.魔術の特訓 withエルフィー先生
陛下との謁見の二日後からエルフィー先生との魔術の特訓が始まった。『目指せ高等魔術!』ということで結構厳し目に教えるらしい。今日は白のパンツに菫色のシャツという風に動きやすい格好で魔術師団本部へと向かった。オリバーさんは団長なので仕事が忙しいらしく他の騎士さんと一緒に行った。本しかないと思っていた場所だったが意外にも騎士団本部のような訓練場もあって、特にエルフィー先生がよく使うらしい。本日の目標は魔力操作と出来たら初等魔術の習得。(二つも出来るかな)
「こんにちは、エマちゃん。今日はオリバーがいないから二人きりですね。ようやくエマちゃんの魔術を見られるよ。これから約二ヶ月、よろしくね!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
「じゃあまず初めは魔力操作からだね。これは、相手から魔力を送られることでどういうものが魔力なのか知ってほしい。今日は私しかいないから私がエマちゃんに魔力を送るよ。ほら手を握って」
エルフィー先生は私と目線が合うようにしゃがんでくれた。そして先生の大きな手で私の手を握った。
「(意外と小さいですね)…では、魔力を送ります」
握っていた手から温かいふわふわしたものがどんどん流れてきて、最後には体全体を巡っていった。(なんかお風呂に入っているような気分)そして流れていた魔力は少しずつエルフィー先生のもとに戻っていき十秒ぐらい経つと先生の魔力は感じなくなった。
「どうでしたか?少しくすぐったかったですか、それとも気持ち悪かったですか?」
「えっ、いえ、そんなことは……逆にとても気持ちよかったです。お風呂に入っているような…」
「本当ですか!?それはとても嬉しいですね。私とエマちゃんの魔力の相性はとてもいいということですね」
「魔力に相性なんてあるんですか?」
「ええ。相性がいい場合はとても心地よいのですが、相性が悪い場合は、ひどい時には吐き気をもよおすほど異物感を感じるようです。また相性がいい人は複数人いる場合もあります」
「へえ~、相性がいいと何かいいことがあるんですか?」
「はい、連携して戦う時などに相性がいいとお互いの魔術が反発せずに綺麗に混ざって相手に高ダメージを与えることが出来るんです。エマちゃんは全属性で私は四属性……色んな混合魔術ができそうで楽しみです!では、次はエマちゃんから私に魔力を送ってみてください」
私は先程感じた魔力を自分の体の中から探し始めた。意識を集中してみると(あっ!これかな?)意外とすぐに見つけることが出来た。自分の体のおへそから少し上ぐらいにあった。(これをエルフィー先生に送ったらいいんだよね)
私は温かいふわふわな自分の魔力を自分の手に集めて先生に送った。すると
「はぁ……これはやみつきになってしまいますね。こんなにも心地よい。エマちゃんの魔力が私の体を包み込んでいる、これはもうエマちゃんが私に抱きついて――あれっ?」
このまま聞くと気持ち悪くなりそうだったので途中で送るのをやめた。先生はヤバい人だ。この人とは深く関わってはいけないような気がする。そんなことが顔に出でいたのか
「エマちゃん、今絶対『この人とは関わりたくない』って思ったでしょ。だめですよ、『先生』に対してそんなこと思うのは。でもまあ、やっぱりエマちゃんの魔力は本当に温かくて落ち着きますね」
「そうですか…それはよかったです…」
「じゃあ魔力操作も出来たということで次は初等魔術です。初等魔術はとっっても簡単なのでエマちゃんならすぐに出来ますよ」
嘘だ。今日エルフィー先生が来るまでの間、魔術師団本部にあった魔術に関する本を読んでいたがそこには『初等魔術は習得するには最低でも二年は魔術を学ばなければならない』と書いていた。
「エルフィー先生、ちなみに先生は何年ぐらいで習得されたんですか?」
「ふふっ、面白いこと聞きますね。年単位ではありませんでしたよ。たぶん、三十分ぐらいでしょうか?あまりにも簡単すぎて自分でもちゃんと習得出来たのか不安だったぐらいです。つまり、エマちゃんは私よりも魔術に関して才能がありそうですから、ものの十分で習得出来ますよ(ニコッ)」
「『出来ますよ(ニコッ)』じゃあないですよ!それは先生だから出来たんですよ。私なんか絶対五年ぐらいかかりま――」
急にエルフィー先生は私のほっぺを両側から挟んだ。
「やる前からそんなこと思ってはいけません。自分を信じないでどうやって出来るんですか。まずは成功している自分を想像してやってみてください」
「しゅみましぇん(柄にもないこと言っちゃった)やっちぇみましゅ」
「よろしい」
ようやくエルフィー先生は手を離してくれた。それから初等魔術の方法を教えてもらった。一応本を読んで知っていたからすんなり内容が頭に入ってきた。最初は水属性魔法から、最後は光属性魔法という風に順番にやっていくことになった。じゃあやってみよう!
「ではエマちゃん、最初は先程話した水属性魔法の中で自分がやりたいことをしてみてください」
「はいっ!(うーん、簡単なものでいうと攻撃型の水刃かな?)じゃあ、こんな感じかな」
私は何回か試してみてようやく青色の鋭い刃、水刃を作りだせた。そして訓練場にあった練習用のダミー人形に向かってそれを投げた。(えっ、出来ちゃった!やったー、本当に十分ぐらいで出来た!)そう思ったが投げた刃は人形を真っ二つにしてそのまま本部の壁にも向かってしまった。(やばい、やばい!早く消さないと!)そう強く思うと刃はあとちょっとで壁とぶつかるというところで『パシャッ』という音とともに水になって消えてしまった。(こっこれは成功でいいのかな?)
「えっエルフィー先生、これはせい「素晴らしいっ!」…へっ?」
「あの威力でその上無詠唱!やっぱりさっきわざと呪文を教えなくてよかったです。さすが私のエマちゃん!ここまで才能があるとは!これはもう魔術の神、いや天使です」
最後は意味が分からなかったが、とにかく成功したらしい。やったー………無詠唱ってだめだったの!?
「エルフィー先生、無詠唱ってしてはだめなんですか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。ただ出来る人がちょっと少ないというこだけですね。あっ、ちなみに私も出来ますよ。お揃いですね!」
先生は一言多いんだよね。でも先生は優しいから許す。
「じゃあどんどんやっていきましょう!」
先生の褒め言葉の嵐を受けながら次々に属性魔法を出していった。




