建国祭(午前)
師匠の収納ボタンに色々と詰め込んだりとこの数日とても忙しかった。でも、今日は建国祭。朝から外に借りたテーブルを出して準備をする。
テーブルの上にガラスの冷凍庫を乗せてメニューも出しておいた。でも、メニューだけでは分からないので、冷凍庫の中に見本のアイスを盛り付けて飾っておいた。ガラスの冷凍庫だから外から見えるようになっているんだよね。
クッキーカップもテーブルに置いて、アイスディッシャーはお水に付けて準備しておく。今回はアイスクリーム1種類だけなので、大分楽に作業できるようになっているはず。
チョコスプレーも沢山準備したので、自分で好きに掛けて貰うようにした。置く物は少ないので、準備は結構簡単に終わった。
お店の中は師匠にお任せの予定だ。だけど、お菓子とか種とか色々と在庫を増やしておいた。建国祭の日は他の街からも沢山人が来て、お土産に色々買って行ってくれる人も多いらしい。
「師匠のお店って実は有名だったりします?」
「そりゃ、王都の錬金術師の店だからねぇ」
「そ、そうだったのですね! えっ、私が引き継いでいいんですか!?」
「もちろんさね。とっくにカノンに追い抜かれていると思うさね」
「いやいや、絶対そんな事ないですからね!?」
「ははっ。カノンは自分が凄いことをしている自覚が薄いからねぇ。でも、人前で省略はするんじゃないよ?」
「はい、気を付けます!」
「まあ、ヴァイスがいるから大丈夫だと思うがね」
『そうだな。我がいるから大丈夫であろう』
準備が出来たので、お店の開店です。今日はずっと外で売り子さんの予定です。久しぶりのお祭りで、お店を出すのも初めてだからすごく楽しみなのです。
建国祭も始まり、人の通りがにぎやかになってきた。
「こんなに人通りが多いの初めてだね」
『そうだな。いつもの倍以上いそうだな』
「本当だね~」
そうヴァイスと話していると、エルナが来てくれた。
「カノン、おはよう。アイス下さいなっ!」
「エルナ、いらっしゃい」
「ふふっ、今日はこれ2回は食べるんだ!」
「そうなんだ。冷たいからお腹壊さないようにね?」
「大丈夫! ちゃんともう1回は午後にする!」
2回も食べに来てくれるつもりらしい。それだけ楽しみに待っていたと思うと、とても嬉しい。
「カノンっ! このチョコ自分で掛けて良いの?」
「うん。食感も味もちょっと変わるから、美味しいよ~」
「ちょっと試してみる」
エルナがチョコスプレーを試していると、他にもお客さんが来てくれた。エルナが美味しそうに食べているのが気になったみたいだ。
「このチョコがアクセントになって、アイスのままでもチョコを掛けてもどっちも凄く美味しいねっ!」
「ふふっ、気に入ってくれて良かったよ~」
他のお客さん達も、アイスの溶ける感じが初めてだから凄く驚いている。美味しく食べて貰えているみたいで良かった。カップも食べられると伝えるとみんなとても驚いてくれるんだよね。
その後は、食べている人を見た他のお客さんが次々に来てくれた。新しい物だから気になるんだろうね。
『カノン、大丈夫か?』
「うん。メニューを1個に絞っておいて良かったよ」
『そうだな。がんばれよ』
「うん!」
チョコスプレーを大量に掛ける人もたまにいるけれど、美味しく食べられる量を掛ける人が意外と多い。
ふと気が付くと、路地からこちらを見ている小さい子が2人いる。うさぎ耳と犬耳の可愛らしい子達だ。良く見てみると、服装があんまり綺麗ではない気がする。ヴァイスにこっそりとお願いしてみる。
「ヴァイス。あの子達がさっきから見ているんだけど、どうしたんだろ?」
『ああ。多分孤児院の子らだろう』
「孤児院?」
『冒険者も多いし、魔物に襲われることもあるからな』
確かにそうだ。ここは魔物が多い世界だもの、親が亡くなることだってあるよね。ヴァイスにクリーン魔法を掛けてからこちらに連れてきて貰うように頼む。
その間に私は次々にアイスを作って渡していく。お店の中も大分繁盛しているみたいで、師匠も忙しそうだ。
『カノン』
「あっ、ありがとう」
「あ、あの、見ていてごめんなさい」
「えっ、謝らなくて良いのよ。あのね、今忙しくてお手伝いしてくれたら嬉しいなって思って声掛けさせて貰ったの」
「えっ、お手伝い?」
「うん。あっ、ちゃんとお礼にこのアイスとご飯とお手伝いのお金を出すよ、どう?」
2人は驚いていたけれど、このアイスも食べられると知ってやる気になってくれているみたいだ。2人は顔を見合わせて1つ頷くと。
「えっと、や、やります!」
「ぼくもやりますっ!」
「あのっ、でも私達孤児院の……でも良いんですか?」
「うん、もちろん! だってお手伝いしてくれるんでしょう?」
「はい」
「ふふっ。私が頼んだんだから良いんだよ~」
「はい、がんばりますっ!」
「ぼくもがんばるっ!」
「うん、お願いね」
2人ともお手伝いしてくれる事になった。10歳の女の子がレオナという名前で、赤い髪と赤い目に白いうさぎ耳がとっても可愛いっ!
8歳の男の子はラルスという名前で、黒髪に緑の目にグレーの犬耳が可愛い子だ。後から知ったのは犬ではなくウルフだったという事。
「レオナはお金の計算は出来る?」
「はい。一応習ってます」
「そうなんだ。じゃあ、お金を受け取って貰える? おつりが分からなかったら教えてあげるから、その都度聞いてね?」
「はい!」
「ラルスは私が作ったのをお客さんに渡すのお願いして良い?」
「うん!」
2人ともとても良い子で早くアイスを食べさせてあげたいな。一生懸命頑張ってくれている姿が可愛くて、微笑ましい。ジュースも出して飲みながらやって貰おう。
「2人とも今日は暑いから、飲みながらやってね。飲まないと倒れちゃうから、無理しないようにね」
「「はいっ」」
「おや、姉ちゃんのお手伝い偉いな」
そう言って頭を撫でて貰って嬉しそうなラルス。レオナも一生懸命計算しておつりを渡している。何も言わずに頭を撫でているのはくま耳獣人のハンスさんだ。今日はもう1人冒険者と一緒だ。相変わらず無口だけど、目が優しい。
「ん」
「1個で良いですか?」
「ん!」
「こっちのチョコはお好みでどうぞです」
ハンスさんはおつりがないように渡してくれたので、レオナはちょっとホッとしている。ラルスはハンスさん達の大きな手で優しく頭を撫でられて嬉しそうだった。ラルスは冒険者になりたいのかもしれないね。凄くキラキラした目で見つめている。
そろそろお昼だからか、少しお客さんが落ち着いてきた。今の間に2人に美味しい物を食べさせてあげよう。じゃないと、午後から働けないもんね。お店の中に声を掛ける。
「師匠。お昼ごはんを外にいる子達にも一緒に食べさせてあげて貰って良いですか?」
「ああ。さっきからよく働いていたから沢山食べるといいさね」
「テーブルに色々乗せておくので、好きなの食べて貰ってくださいね」
アイテムボックスからお料理を色々取り出してテーブルに置いておく。外に出たら、レオナとラルスに声を掛ける。
「2人ともお疲れ様。お腹空いたでしょう、お昼ごはん食べておいでね」
「カノンさん。でも、本当に良いんですか?」
「もちろん! だって2人のお陰でとっても助かってるんだよ。午後もお願いしたいんだけど、どうかな?」
「はいっ、がんばりますっ!」
「ぼくもがんばるっ!」
「じゃあ、ご飯食べないとお仕事出来ないから沢山食べておいでね。あっ、慌てなくて良いからゆっくり食べておいでね~」
「「はいっ」」
2人は仲良く手を繋いでお店の中に入って行った。後は師匠が一緒にご飯を食べてくれるはずだ。師匠はお店に休憩中の札を掛けるのを忘れなかった。
「ヴァイスも食べてきていいよ」
『いや、我は大丈夫だぞ』
「じゃあ、おやつでも食べて待っててね」
『うむ』
ヴァイスは私の護衛で一緒に居てくれるんだそうだ。落ち着いた所で、アイテムボックスからベーコンサンドを取り出してヴァイスと一緒に外で食べる。
「意外と午前中忙しかったね」
『そうだな。やっぱり誰かが食べていると気になるんだろうな』
「そうだよね」
回復アイスティーを飲んで元気を出したら、午後もがんばろう!
いつも読んで頂きありがとうございます。
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明日は建国祭の午後です。
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