7/7
おはよう
幻のような出来事から、1年が経った。
自宅から電車で2時間乗り継いで、都心から離れた山近くの霊園にやってきた。
いつの間にか着慣れたスーツ姿のまま「鈴原 凪」と刻まれた墓石の前にしゃがみ手をあわせた。
僕の胸にある水晶玉の色は今日も少しくすんだままだけれど、朝日を反射し時折真っ白に輝いた。
『おはよう』
ふと耳になじんだ明るい声が聞こえた気がして目を開ける。
そこには誰の姿もなかったけれど、お供え物のひまわりの葉がゆっくり左右に揺れていた。
「おはよう」
鮮やかに揺れる黄色い花に、僕も明るく言葉を返した。